訪問看護ステーションの法定研修キット(医療的ケアの範囲を含む12テーマ)はこちらです。確認テスト・受講記録様式・委員会議題案まで、すぐにご利用いただけます。
訪問看護では、「看護師が行える行為」と「介護職員が行える行為」の境界線が曖昧になりやすい場面があります。医師の指示・看護師の指導・介護職員の実施範囲を研修で確認しておくことは、利用者の安全と職員の法的リスク回避のために重要です。この記事では、訪問看護における医療的ケアの範囲を整理します。
医行為と医療的ケアの違い
医療行為(医行為)とは「医師が行い、または医師の指示のもとで看護師等が行う行為」であり、無資格者が行うことは医師法・保健師助産師看護師法に違反します。
一方、「医療的ケア」は制度的に使われる言葉ではなく、「医療機器や処置が必要だが、専門資格が必要な行為ではない、または特定の条件を満たせば介護職員でも行える行為」を指すことが多い言葉です。2012年の法改正(社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2)により、介護福祉士や一定の条件を満たした介護職員は、喀痰吸引・経管栄養の一部を実施できるようになりました。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2(2012年改正)
看護師が行える行為の範囲
保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第5条では、看護師は「傷病者もしくはじょく婦に対する療養上の世話または診療の補助」を業とすることができると定めています。「診療の補助」が医師の指示のもとで看護師が行える行為の根拠です。
訪問看護で頻繁に行われる行為の例を以下に示します。
| 行為 | 根拠 | 医師の指示 |
|---|---|---|
| 点滴・静脈注射 | 診療の補助 | 必要 |
| 褥瘡の処置・ドレッシング交換 | 診療の補助 | 必要 |
| 経管栄養(胃ろう・経鼻) | 診療の補助 | 必要 |
| 喀痰吸引 | 診療の補助 | 必要 |
| インスリン注射 | 診療の補助 | 必要 |
| カテーテルの交換・管理 | 診療の補助 | 必要 |
出典:保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第5条
介護職員が行える医療的ケアの範囲(2012年改正後)
2012年の社会福祉士及び介護福祉士法改正後、介護職員が一定の条件のもとで行える医療的ケアが拡大されました。
介護福祉士・認定特定行為業務従事者として登録された介護職員が行える行為は以下のとおりです。
- 口腔内の喀痰吸引(口腔内のみ)
- 鼻腔内の喀痰吸引(鼻腔内のみ)
- 気管カニューレ内部の喀痰吸引(気管カニューレ内部のみ)
- 胃ろうまたは腸ろうによる経管栄養
- 経鼻経管栄養
ただし、実施にあたっては登録研修機関での研修修了・登録・医師の指示・看護師による適切な管理(指導・連携)が必要です。これらの条件を満たさない介護職員が実施することは引き続き違法です。
出典:社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2(2012年改正)
「医療行為ではない」とされる行為
厚生労働省は2005年のQ&A(医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について)で、一定の行為を「医療行為ではなく介護職員でも実施できる」と整理しています。
代表的な行為には以下があります。
- 体温計での体温測定
- 自動血圧計での血圧測定
- パルスオキシメーターのプローブ装着(酸素飽和度の測定)
- 軽微な切り傷・擦り傷・やけどへのガーゼ交換(専門家に確認済みで安定している場合)
- 市販の湿布の貼り付け(医師・看護師等の指示または本人・家族の意思による)
- 点眼薬の点眼(本人・家族の指示による)
- 市販の便秘薬の坐薬の挿入(医師や看護師等の指示のもとで。処方薬の坐薬は医療行為として扱う)
これらは「医療行為ではない」とされているため介護職員でも行えますが、研修では「これが判断の難しい行為の一覧」として確認し、疑問が出たときに医師・看護師に確認できる体制を作ることが重要です。
出典:厚生労働省通知「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」(医政発第0726005号・平成17年7月26日)
訪問看護師の役割:医療的ケアの指導と連携
訪問看護師が担う重要な役割のひとつが「介護職員への指導・連携」です。在宅では、看護師・介護職員・家族が協力してケアにあたる場面が多いため、「誰が何を行えるか」の理解と連携が不可欠です。
- 介護職員が行う喀痰吸引・経管栄養の「実地研修」の指導者になること(看護師が研修機関と連携して指導する)
- 医師の指示書・訪問看護計画書に基づいた指示の共有
- 「この行為はあなたが行っていいか」を利用者・家族・介護職員が迷ったとき、確認窓口になること
研修で扱う内容
医療的ケアの範囲に関する研修では、以下を確認します。
- 医行為と「医療行為ではない行為」の区別
- 介護職員が実施できる行為の条件(登録・医師の指示・看護師の管理)
- 「わからないときは誰に確認するか」の手順
- 事例:この行為は誰が行えるか(Q&A形式の演習)
まとめ
訪問看護における医療的ケアの範囲は、2012年の法改正で介護職員が実施できる行為が広がりました。重要なのは「看護師・介護職員・家族それぞれが何を行えるか」を正確に把握し、医師の指示・連携体制のもとで適切に実施することです。研修では「判断が難しい場面」を具体的な事例で確認し、「わからないときに聞ける」体制を整えることが目標です。
訪問看護ステーションの法定研修キット(医療的ケアの範囲を含む12テーマ)はこちらです。確認テスト・受講記録様式・委員会議題案まで、すぐにご利用いただけます。
訪問看護ステーションの法定研修の全体像は、こちらの記事をご覧ください。
訪問看護の法定研修、何が義務で年何回か。

コメント