児童発達支援(以下、児発)の事業所には、感染症・非常災害発生時における業務継続計画(BCP)の策定と、研修・訓練の定期的な実施が義務づけられています。根拠は指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準(以下、指定通所支援基準)第38条の2です。
BCPとは、非常事態が発生した際に事業を継続または早期に再開するための計画です。大規模な自然災害や感染症の大流行だけでなく、局所的な浸水・停電・職員の急な欠員なども対象となります。
放課後等デイサービスと同じ基準が適用されますが、児発では「子どもを安全な場所まで自力で帰らせることができない」という特性があります。学齢児と異なり、未就学児を一人で帰宅させることはできません。このことが、児発のBCP策定において保護者への引き渡し手順を特に重要な位置づけにしています。
BCP研修の義務は2つ
指定通所支援基準第38条の2が定める義務を整理します。
| 義務の内容 | 頻度・形式 |
|---|---|
| BCPの策定 | 策定済みであること |
| BCPの定期的な研修・訓練の実施 | 定期的に(年1回以上が目安) |
(出典:指定通所支援基準 第38条の2)
BCPはただ策定して保管しておくだけでは義務を満たしたとはいえません。職員が内容を理解し(研修)、実際に動ける(訓練)状態にしておくことまでが義務の範囲です。
児発のBCPで最初に整理すること:引き渡しの手順
未就学児は、自力で施設から自宅に帰ることができません。非常事態が発生した場合に子どもをどう安全に保護者に引き渡すかが、児発のBCPの核心となります。
引き渡し手順の策定に必要な要素は次のとおりです。
緊急連絡先の確保:保護者の携帯電話が通じない場合に備えて、連絡先を複数確保しておきます。職場の電話・配偶者・祖父母・近隣の親族など、優先順位をつけて事前に確認しておきます。
代理引き取り人の登録:保護者本人が来られない場合に、子どもを引き取れる人物を事前に登録しておきます。誰が代理人になれるか(続柄・本人確認の方法)を契約時に確認しておきます。
引き渡しカード:子どもごとに、緊急連絡先・代理引き取り人・注意事項(アレルギー・医療的ケアの有無など)をまとめたカードを作成し、すぐに取り出せる場所に保管しておきます。
保護者が来るまでの待機場所:施設内にとどまれない状況(火災・浸水など)に備え、保護者が来るまで子どもが安全に待機できる集合場所を決めておきます。近隣の公民館・小学校・公園など、施設外の場所も候補として検討します。
感染症流行時のBCP:通常とは異なる引き渡しの問題
感染症の大規模流行時は、通常の非常災害時とは異なる問題が発生します。
職員の欠員:感染症流行時には職員自身が感染・療養・家族の看病で休む可能性があります。最小限の職員でどのサービスを継続するか・職員が◯名以下になった場合は閉所するかの基準を事前に決めておきます。
子どもが施設で感染した場合:子どもが施設内で体調不良になった場合の、隔離スペースの確保・保護者への連絡手順・早退させる際の安全な引き渡し方法を整理しておきます。
閉所時の保護者への通知:感染症の状況によって急遽閉所・休業する可能性があります。保護者への通知をどのように行うか(連絡アプリ・電話・メール)、通知のタイミングを事前に合意しておきます。
自然災害時のBCP:送迎中の対応
送迎中に地震・大雨・洪水等が発生した場合の対応も、BCPに含める必要があります。
送迎中に使用する車両のルート別に、避難場所・保護者への連絡方法を事前に整理しておきます。特に川の近く・低地を通るルートは洪水のリスクを確認しておきます。
「ハザードマップ」を参照して、施設の所在地・送迎ルートのリスクを確認しておくことが、現実的なBCP策定の出発点となります(国土交通省「重ねるハザードマップ」等で確認できます)。
BCP研修の内容
BCP研修では、策定したBCPの内容を職員全員が理解していることを目標とします。新規採用の職員には個別に説明・確認を実施します。
研修で確認する主な内容は次のとおりです。
- BCPが策定されていること・どこにあるかを職員全員が知っていること
- 非常事態の種類別に、最初にすべきことが分かっていること
- 引き渡しカードの場所と使い方
- 緊急連絡の担当者と連絡先(行政・保護者・関係機関)
- 閉所の判断基準と職員への連絡方法
BCP訓練の実施方法
訓練は研修の内容を実際の動きに落とし込む目的で行います。机上訓練(テーブルトップエクササイズ)として、シナリオを設定してどう動くかを言葉で確認する形式でも義務を満たします。
訓練のシナリオ例:「午後2時、支援中に大規模地震が発生した。施設の一部が損傷し、電気・ガスが止まった。子どもが10名、職員が3名いる状態」という設定で、次のことを確認します。
- まず何をするか(安全確認・屋外への避難・子どもの点呼)
- 保護者への連絡はいつ・誰が・どのように行うか
- 引き取りに来た保護者への対応手順
- 保護者が来られない子どもの待機場所と引き継ぎ方法
訓練後の振り返りを記録しておくことで、次回の計画改善につなげます。
BCPを定期的に見直す
職員の入れ替わり・施設の移転・利用者の変化・ハザードマップの更新があった場合は、BCPの内容を見直します。少なくとも年1回の研修・訓練のタイミングで内容を確認し、古くなっている情報がないかをチェックします。
研修・訓練の記録として残すもの
- 研修の実施日・内容・参加した職員の確認サイン
- 訓練の実施日・シナリオ内容・参加者・振り返りの結果
- BCPの策定日・最終更新日の記録
法定研修・訓練のキットを使う
放課後等デイサービス・児童発達支援の法定研修に対応した研修・訓練キットを公開しています。BCP研修テーマの教材・確認テスト・訓練記録様式をブラウザで使えます。
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出典:指定通所支援基準(指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準)第38条の2・国土交通省「重ねるハザードマップ」。


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