飲食店の売上は、客単価×席数×回転数×営業日数で決まる。公庫の記入例の数字で、計算の手順をたどる。

飲食店の売上は、客単価×席数×回転数×営業日数で決まる。公庫の記入例の数字で、計算の手順をたどる。 飲食店の開業

飲食店の売上の計画は、「客単価×席数×回転数×営業日数」の掛け算で組み立てます。日本政策金融公庫の「創業の手引+(飲食業編)」が示している算式で、創業計画書の記入例(洋風居酒屋)もこの式で、昼と夜、平日と週末を分けて売上を出しています。記入例の数字をそのまま使うと、創業当初の月商は248万円、1日の客数は平均で約37人、平均客単価は約2,570円、1席あたりの月商は約10万円です。

この記事では、公庫の手引と記入例の数字を使って計算の手順をたどり、回転数が0.1変わると月商がいくら変わるか、席が1つ増えるといくら変わるかまで計算します。数字はすべて公庫の公表資料から取り、計算は当方が行いました。

売上の算式は、客単価×席数×回転数×営業日数の4つの掛け算

公庫の「創業の手引+ 新たに飲食業を始めるみなさまへ」(平成30年4月)は、売上予測の算式を「客単価×席数×回転数」とし、次の例を載せています。客単価が昼800円・夜3,500円、30席、回転数が昼2回転・夜0.6回転、25日稼働です。

公庫の手引の例(売上予測の算式)
時間帯 計算 1日の売上
昼 800円×30席×2回転 48,000円
夜 3,500円×30席×0.6回転 63,000円
1日の合計 111,000円
1か月(25日稼働) 111,000円×25日 2,775,000円(手引の表記は約277万円)

この例で分かるのは、昼は客単価が低くても回転数が高いので1日48,000円、夜は回転数が0.6でも客単価が高いので63,000円と、昼と夜で売上の作り方が違うことです。昼と夜を分けて計算するのは、このためです。

出典:日本政策金融公庫「創業の手引+ 新たに飲食業を始めるみなさまへ」2ページ(平成30年4月)。手引は「277万円」と表記しており、掛け算の結果は2,775,000円です。

回転数は「1席が1日に何回使われるか」の平均で、満席になった回数ではない

回転数は、満席が何回まわったかではなく、1日のうちに1つの席が平均で何回使われたかです。25席の店で昼の回転数が0.8なら、昼の客数は25席×0.8回転=20人です。満席(25人)にならない日も、空席のまま終わる席も含めた平均なので、回転数は1を下回ることのほうが普通です。

公庫の記入例(洋風居酒屋)は、夜の回転数を月曜から木曜は0.6回転、金曜と土曜は0.9回転としています。25席なら、平日の夜は15人、週末の夜は22.5人です。立地によって昼と夜、平日と週末の客数は大きく違うため、記入例のように分けて置くと、計画の根拠を説明しやすくなります。

公庫の記入例は、昼・平日の夜・週末の夜の3つに分けて248万円を出している

創業計画書の記入例(洋風居酒屋・2025年4月版)の「事業の見通し」欄には、売上高の計算根拠が次のように書かれています。日曜定休で、月の営業日数は26日です。

公庫の記入例(洋風居酒屋)の売上の計算根拠
区分 計算 月の売上 記入例の表記
昼(月〜土) 900円×25席×0.8回転×26日 468,000円 46万円
夜(月〜木) 4,500円×25席×0.6回転×18日 1,215,000円 121万円
夜(金・土) 4,500円×25席×0.9回転×8日 810,000円 81万円
合計 2,493,000円 248万円

記入例の表記は万円単位で切り捨てているため、合計は248万円です。この売上から、月の客数と平均客単価、1席あたりの月商を計算すると次のようになります。

記入例の売上から計算した客数と単価(当方の計算)
項目 計算 結果
昼の客数 25席×0.8回転×26日 520人/月
夜の客数(月〜木) 25席×0.6回転×18日 270人/月
夜の客数(金・土) 25席×0.9回転×8日 180人/月
月の客数の合計 970人/月(1日あたり約37人)
平均客単価 2,493,000円÷970人 約2,570円
1席あたりの月商 2,493,000円÷25席 約99,720円
1日あたりの売上 2,493,000円÷26日 約95,900円

平均客単価が約2,570円になるのは、客単価900円の昼が客数の半分以上(970人中520人)を占めるためです。売上の金額では夜が約81%(2,025,000円÷2,493,000円)を占めています。客数で見るか売上で見るかで、店の姿は違って見えます。

出典:日本政策金融公庫「創業計画書 記入例(洋風居酒屋)」(2025年4月版)「9 事業の見通し(月平均)」欄。客数・平均客単価・1席あたりの月商は、記入例の数字から当方が計算したものです。

夜の回転数が0.1変わると、記入例の店では月商が約29万円変わる

算式が掛け算なので、どの数字がどれだけ売上を動かすかも計算できます。記入例の店(25席・26日営業)で、1つの数字だけを動かした場合の月商の変化は次のとおりです。

記入例の店で、1つの数字を動かしたときの月商の変化(当方の計算)
動かす数字 計算 月商の変化
夜の回転数が0.1増える(減る) 4,500円×25席×0.1回転×26日 約29.3万円
昼の回転数が0.1増える(減る) 900円×25席×0.1回転×26日 約5.9万円
席が1つ増える(昼0.8回転・夜0.7回転のまま) (900円×0.8+4,500円×0.7)×26日 約10.1万円
営業日が1日増える(減る) 2,493,000円÷26日 約9.6万円
夜の客単価が100円上がる(下がる) 100円×25席×約0.69回転×26日 約4.5万円

夜の回転数0.1は、25席の店なら1日あたり2.5人の客数の差です。それだけで月商が約29万円動きます。この店の計画では、夜の客数の見込みが売上を最も大きく左右することが分かります。逆に、昼の回転数は0.1動いても約6万円で、売上への影響は夜の5分の1です。自分の店の計画でも、同じ計算をしておくと「どの数字を一番慎重に見積もるべきか」がはっきりします。

夜の回転数の月平均は、(0.6回転×18日+0.9回転×8日)÷26日=約0.69回転です。平日と週末を分けずに1つの回転数で計算するなら、0.7回転と置くと記入例とほぼ同じ売上になります。

昼を伸ばすか、夜を伸ばすか。同じ「0.2回転」でも、月商の差は5倍

売上を増やす打ち手を考えるときも、この算式が使えます。記入例の店で、昼の回転数を0.8から1.0に上げた場合と、夜の平日(月〜木)の回転数を0.6から週末と同じ0.9に上げた場合を比べます。

記入例の店で、昼と夜のどちらを伸ばすか(当方の計算)
打ち手 計算 月商の増加
昼の回転数を0.8→1.0に上げる(1日5人増) 900円×25席×0.2回転×26日 117,000円
夜の平日(月〜木)を0.6→0.9回転に上げる(1日7.5人増) 4,500円×25席×0.3回転×18日 607,500円
昼の客単価を900円→1,000円に上げる 100円×25席×0.8回転×26日 52,000円
定休日を増やして営業日を26日→22日にする 2,493,000円×22日÷26日 約383,500円の減少(月商約210.9万円に)

昼のランチを満席1回転まで伸ばしても月商は約12万円しか増えませんが、平日の夜を週末並みにすると約61万円増えます。客単価の差が5倍あるからです。この店の計画では、努力の向け先は平日の夜の集客だと数字が示しています。逆に、週休2日にして営業日を4日減らすと、月商は約38万円減ります。固定費(家賃・正社員の給与)は変わらないので、営業日を減らす判断は、この減少額と人件費の節約を比べて決めることになります。

どの打ち手が効くかは、店の客単価の構造で変わります。ランチ中心の食堂なら昼の回転数が売上を決めますし、夜だけの店なら客単価と平日の客数です。自分の店の数字で同じ表を作ると、「何を一番がんばるべきか」が決まります。

手引の例と記入例を並べると、店の形の違いが数字に出る

公庫の手引の例(30席・昼800円2回転・夜3,500円0.6回転・25日)と、記入例(25席・昼900円0.8回転・夜4,500円約0.7回転・26日)を、同じ指標で並べると次のようになります。

手引の例と記入例の比較(当方の計算)
指標 手引の例(30席) 記入例(25席)
月商 2,775,000円 2,493,000円
1日の客数 78人(昼60人・夜18人) 約37人(昼20人・夜約17人)
月の客数 1,950人 970人
平均客単価 約1,423円 約2,570円
1席あたりの月商 92,500円 約99,720円
売上に占める夜の割合 約57% 約81%

手引の例は昼2回転のランチが客数の8割近くを占める「昼の店」、記入例は売上の8割が夜の「夜の店」です。1席あたりの月商は9〜10万円でほぼ同じですが、客数は2倍違います。客数が2倍なら、仕込みの量、ホールの人手、食器の数、回転を速くする席の配置など、店の作りも変わります。売上の計画は、金額だけでなく「1日に何人をさばく店か」まで出しておくと、人件費や厨房の設備の計画と結びつきます。

軌道に乗った後は創業当初の1.3倍、逆算すると創業当初は約77%

記入例は、「1年後又は軌道に乗った後」の売上を「創業当初の1.3倍(勤務時の経験から)」として322万円と置いています。原価率は当初と同じ35%、人件費は従業員1人増で18万円増、その他の諸経費は10万円増です。

この1.3倍を逆から見ると、創業当初の売上は軌道に乗った後の約77%(1÷1.3)です。計画を立てるときは、まず「軌道に乗った後にどれだけ売れる店か」を客単価×席数×回転数で置き、開業直後はその77%前後から始まると考えると、記入例と同じ組み立てになります。

77%という数字は記入例の1つの置き方で、立地や業態、宣伝の仕方で大きく変わります。開業前からSNSで知られている店と、看板だけで始める店では、立ち上がりの速さは違います。自分の店で何%から始まり、何か月で計画に届くかは、根拠と一緒に置く必要があります。

回転数と客単価の根拠は、勤務していた店の実績が一番強い

算式の4つの数字のうち、席数は物件の図面と座席の配置で決まり、営業日数は定休日で決まります。見積もりが難しいのは、客単価と回転数です。公庫の記入例は、原価率と1.3倍の根拠を「勤務時の経験から」と書いています。回転数と客単価も、同じ出どころで説明するのが最も強い根拠です。

公庫の手引は、事業経験について「勤務時代に任されていたこと(担当業務、役職等)や実績をきちんと答えられるか」を確認項目に挙げ、「普段から、勤務時代に取り組んだことを記録(記憶)し、自らのセールスポイントを客観的に説明できるようにしておきましょう」としています。勤務先の店の席数と1日の客数、平日と週末の差、ランチとディナーの客単価を覚えておけば、自分の店の回転数と客単価を「前の店では25席で平日の夜は15人前後だった」のように、実績から置けます。

勤務経験のない業態で開業する場合は、出店予定地の周辺の店を、時間帯と曜日を変えて見て回り、席数と入り具合を数えるのが現実的な方法です。手引は立地について「出店予定地は新規客(顧客ターゲット層)を獲得しやすい場所にあるか」「出店予定地近くの住民の特性やライフスタイルを把握しているか」を問いかけています。いずれの場合も、根拠を「式と数字」の形で書けることが大切で、「このくらい入るはず」という金額だけの売上計画は、読み手が確かめようがありません。

テイクアウトやデリバリーの売上は、席数×回転数の式に乗らないので、別に月の金額で置きます。店内の売上と分けておくと、原価率や包材の費用の違いも整理しやすくなります。

売上は低めに置く。開業者の約4割は、開業前の予想月商に届いていない

公庫の手引は、事業の見通しについて「売上高は低め、経費は多めといった具合に試算し、それでも経営が成り立つような収支計画であれば万全」としています。「予想売上高は過大になっていないか」「予想経費は過小になっていないか」も、確認の項目に挙げられています。

低めに置く理由は、数字で裏づけられています。日本政策金融公庫総合研究所の「2025年度新規開業実態調査」(公庫の融資先・全業種・回答2,165社)では、調査時点の月商を開業前に予想していた月商で割った「予想月商達成率」が100%以上の開業者は58.7%でした。つまり約4割は、開業前の予想に届いていません。50%未満だった開業者も10.5%います。

予想月商達成率(2025年度新規開業実態調査・全業種)
達成率 割合
50%未満 10.5%
50〜75%未満 16.6%
75〜100%未満 14.2%
100〜125%未満 24.5%
125%以上 34.2%

出典:日本政策金融公庫総合研究所「2025年度新規開業実態調査」12ページ 図-20(調査時点2025年8月・n=2,024)。飲食店だけの数字ではなく、全業種の結果です。

この分布は全業種のもので、飲食店だけを取り出した数字ではありません。それでも、予想どおりにいかない開業者が4割いるという事実は、売上の計画を「低めに置く」ことの意味を示しています。

自分の店の売上を組み立てる手順

記入例の組み立てを、自分の店に当てはめる手順は次のとおりです。

  • 席数と、月の営業日数を決める(週1日定休なら26日前後、週2日なら22日前後)
  • 昼と夜に分けて、客単価を置く(メニューの価格帯から、1人が平均していくら使うか)
  • 昼と夜に分けて、回転数を置く(1席が1日に何回使われるかの平均。平日と週末で差が大きければ分ける)
  • テイクアウトやデリバリーがあれば、別に月の売上を置く
  • 掛け算して「軌道に乗った後」の月商を出す
  • 開業直後はその何%から始まり、何か月で計画に届くかを置く(記入例は1÷1.3=約77%)
  • 回転数を0.1、席数を1、営業日を1日動かして、どの数字が売上を一番動かすかを確かめる

このサイトで公開している「飲食店の開業 収支シミュレーター」は、この手順をそのまま入力欄にしたものです。客単価・席数・回転数・営業日数を入れると、計画の月商と1日の客数、平均客単価、1席あたりの月商が出て、公庫の創業計画書「事業の見通し」の形と計算の根拠の文章も表示します。初期値は記入例の「軌道に乗った後」の水準に合わせた例で、基本の機能は無料で使えます。

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出典

作成:fufumumu_design(ふふ)。確認日:2026年10月7日。記事中の客数・単価・感度の計算は、公表資料の数字をもとに当方が行ったものです。公庫の資料は、同公庫が作成したもので、この記事とツールは同公庫とは関係がありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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