成年後見制度、2026年改正で「途中終了」が可能になった

認知症の手続きと備え

2026年、成年後見制度(せいねんこうけんせいど)に大きな変化がありました。これまで「一度始めたら本人が亡くなるまで続く」とされてきた制度に、一定の条件のもとで利用を終了できる仕組みが加わりました。認知症の親を抱える家族にとって、制度の使い勝手が変わる可能性があるため、今回の改正の概要を整理します。

成年後見制度は「やめられない」制度だった

成年後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力が低下した人の財産管理や法律行為を、後見人(こうけんにん)が代わりに行う制度です。家庭裁判所が関与し、本人の財産を守ることを目的としています。

これまでの制度では、いったん後見が開始されると、本人が回復しない限り、死亡するまで続けなければなりませんでした。認知症の場合、症状が回復することはほとんどないため、「事実上、終身の制度」として機能してきました。

この「やめられない」という点が、制度の利用をためらわせる大きな要因の一つでした。後見人(特に弁護士・司法書士などの専門職)に支払う報酬は月1万〜6万円程度とされており、10年・20年と続けば総額で数百万円になることもあります。

2026年改正で「必要な期間だけ使う」が選択肢に

2026年の法改正(民法等の一部改正)により、一定の要件を満たす場合に後見を終了できる仕組みが設けられました。具体的には、後見が必要だった事情(例:不動産の売却や相続手続きなど)が解消されたと認められる場合、家庭裁判所への申立てによって後見を終了できる可能性が生まれています。

ただし、終了できる条件は限定的です。本人の判断能力が回復したわけでない場合や、財産管理の必要性がまだ残っている場合は、引き続き後見が継続されます。「やめたいからやめられる」という制度ではなく、あくまで家庭裁判所が終了の可否を判断します。

この改正の背景には、制度の利用者数が伸び悩んでいるという実態があります。法務省・最高裁判所が公表している統計でも、後見制度の新規申立て件数は一定水準にとどまっており、「使いづらい」と感じる人が多いことが課題とされてきました。

親族後見人が選ばれるのは6人に1人という現実

後見人に誰が選ばれるかも、家族が気にする点です。最高裁判所の統計によると、後見人に親族が選ばれる割合は約6人に1人程度にとどまっており、多くのケースで弁護士・司法書士・社会福祉士などの専門職が選ばれています。

親族が後見人になれないわけではありませんが、横領などの不正が過去に問題となったことから、家庭裁判所は専門職を選ぶ傾向があります。専門職が選ばれた場合、その報酬は本人の財産から支払われるため、財産規模によっては長期的に大きな負担になります。

今回の「終了可能」という改正は、こうした費用負担の問題とも関連しています。たとえば「親の不動産売却が終わったら後見は不要」という状況が生まれた場合、以前は終了できなかったところ、今後は終了申立てという選択肢が生まれる可能性があります。

家族信託や任意後見との使い分けを改めて考える

成年後見制度の改正を踏まえると、認知症の前後でどの制度を使うかの選択肢が整理しやすくなります。

  • 家族信託(かぞくしんたく):本人の判断能力があるうちに、財産管理を家族に託す契約。柔軟な設計が可能で、後見より費用を抑えられるケースがある。認知症発症後は新たに設定できない。
  • 任意後見(にんいこうけん):本人が元気なうちに、将来の後見人を自分で指定しておく制度。認知症発症後に家庭裁判所が発動させる。
  • 法定後見(ほうていこうけん):認知症発症後に家庭裁判所に申立て、後見人を選んでもらう制度。今回の改正で一定条件での終了が可能に。

どの制度が適切かは本人の状態や財産の内容によって異なります。制度の詳細は法務省の公式情報で確認することをおすすめします。
参考:法務省「成年後見制度について」

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「とりあえず後見を申立てる」前に確認したいこと

成年後見制度は、本人の財産を守るために重要な制度です。一方で、使い始めると長期にわたる費用と手続きが伴うため、「何のために申立てるのか」を明確にしてから動くことが大切です。

2026年の改正で終了の道が開かれたとはいえ、終了できる条件は限られており、申立てから終了まで手間もかかります。まずは家族の状況を整理し、市区町村の窓口や家庭裁判所の相談窓口を活用してみることが、現実的な第一歩になります。

参考:裁判所「後見・保佐・補助の開始の審判」

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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