消防設備士甲2の試験では、筆記(45問・2時間15分)と実技(鑑別5問・製図2問)が同日に行われます。試験当日の日程・会場・申込み手順は別記事で詳しく解説しています。この記事では「実技試験を当日どう解くか」に絞り、鑑別・製図それぞれの時間配分と典型的なミスの回避法を解説します。
甲2試験の時間構成と実技の位置づけ
甲2試験の全体の時間構成を確認します。
| 試験区分 | 問題数 | 試験時間 | 合格基準 |
|---|---|---|---|
| 筆記試験(全科目) | 45問 | 2時間15分 | 各科目40%以上かつ全体60%以上 |
| 実技試験(鑑別+製図) | 7問(鑑別5+製図2) | 1時間(筆記と合計3時間15分) | 実技全体で60%以上 |
甲2では筆記と実技が同じ試験時間内に行われます(消防試験研究センターの実施方法による)。試験時間は合計3時間15分で、受験者が自分のペースで筆記と実技を配分して解きます。先に筆記を全部解いてから実技に取りかかる人が多いですが、実技(特に製図)に時間が足りなくなるケースがあるため注意が必要です。
実技試験の時間配分の目安
3時間15分の試験時間のうち、実技に使う時間の目安は次のとおりです。
| 試験区分 | 推奨時間配分 | 備考 |
|---|---|---|
| 筆記45問 | 90〜100分 | 1問あたり約2分。迷ったら印をつけて後回し |
| 鑑別5問 | 20〜25分 | 1問5分以内を目安に。写真は見た瞬間に分かるまで練習しておく |
| 製図2問 | 40〜50分 | 1問20〜25分。計算と図の両方で時間がかかる |
| 見直し | 10〜15分 | 製図の計算ミスを重点的に確認 |
製図に時間がかかりすぎて最後の見直しができなかった、という失敗は甲種の実技試験でよく聞きます。製図は「答えが書けなくても部分点が取れる」ため、途中まで書いてある状態でも得点になります。時間切れで白紙になることを防ぐため、製図には必ず40分以上を確保してください。
鑑別試験の当日対策
鑑別試験は「写真や図から機器の名称・用途を答える」問題形式です。5問出題されます。
よく出る機器と答え方
- 一斉開放弁:「開放型泡ヘッドへの泡水溶液の流れを制御する弁。火災時に電磁弁または手動操作で開放される」
- 泡ヘッド(散水型):「泡水溶液を発泡させて散布する機器。設置間隔・防護面積・放射量は消防法施行規則で規定される」
- 泡原液タンク:「泡消火薬剤を貯蔵するタンク。薬剤の種類(たんぱく泡・水成膜泡等)と容量が規定される」
- 泡混合装置(プロポーショナー):「泡薬剤と水を一定の割合で混合して泡水溶液を作る機器。ラインプロポーショナー・プレッシャーサイドプロポーショナーなどの種類がある」
- 圧力スイッチ:「配管内の圧力低下を検出してポンプを自動起動させる機器。圧力設定値以下になると接点が閉じる」
鑑別試験で部分点を取るコツ
鑑別試験は記述式で部分点があります。「名称だけは書けるが用途が分からない」場合でも、名称を正確に書くことで部分点が得られます。逆に名称を間違えると用途の説明も正解にならないことが多いため、機器の正式名称を正確に覚えることを最優先にしてください。
製図試験の当日対策
製図試験は甲2特有の試験で、乙2や他の消防設備士乙種では出題されません。2問出題され、主に「系統図の完成」と「計算問題」の形式です。
製図問題の出題パターン
- 系統図完成型:不完全な系統図が与えられ、欠けている機器・配管・配線を書き加える。正しい接続関係を覚えていないと解けない
- ヘッド個数計算型:防護面積と放射密度・放射率から必要なヘッド個数を計算する。計算式を覚えて正確に計算する
- 薬剤量計算型:泡水溶液の必要量・泡原液の必要量・水源水量を計算する
製図の時間配分と解く順序
製図2問の解き方の手順は次のとおりです。
- 問題文を最後まで読む(3〜4分):先に問題全体を把握して「計算問題か・系統図か」を確認する。部分的に読み始めると後で情報が足りなくなることがある
- 計算問題から先に解く(10〜12分):計算式に値を代入して答えを出す。検算時間を含めて1問10〜12分を目安にする
- 系統図を書く(10〜15分):計算で求めた値(ヘッド個数・配管径等)を使いながら系統図を書く。鉛筆で下書きしてからペン書きすると修正しやすい
- 書いた系統図を見直す(3〜5分):接続漏れ・記号の間違い・単位のつけ忘れを確認する
製図試験で起きる典型ミスと回避法
| 典型的なミス | 回避法 |
|---|---|
| 計算式に単位変換ミス(L/minをm³/sに変換し忘れ) | 計算前に単位をそろえる。L/minはまず1000で割って60で割る手順を習慣化 |
| 系統図で機器の接続順を間違える | 「水源→ポンプ→配管→一斉開放弁→泡ヘッド」の順を唱えてから書く |
| 製図用紙の書き直しで時間をとられる | 鉛筆で位置を決めてから清書する。消しゴムより先に下書きの確認 |
| ヘッド個数の計算で防護面積を誤読 | 問題文の数値を計算前に問題用紙にメモし直してから式に代入する |
| 泡薬剤量・水源水量の計算順を間違える | まず泡水溶液量を計算→薬剤量=水溶液量×希釈濃度→水源水量=水溶液量×(1−希釈濃度)の順で解く |
| 時間不足で製図が白紙になる | 途中まででも書く。部分点があるため、全くの白紙よりも書きかけの方が得点になる |
製図試験の典型問題:薬剤量計算の手順
甲2の製図試験で頻出の「泡薬剤量・水源水量の計算」の具体的な手順を解説します。
前提条件(問題文で与えられる)例:
- 防護面積:200m²
- 放射密度:6.5 L/min・m²(泡消火薬剤の放射率)
- 放射時間:10分
- 薬剤の希釈濃度:3%(たんぱく泡・水成膜泡の標準)
計算手順:
- 必要な泡水溶液量を計算:防護面積 × 放射密度 × 放射時間 = 200 × 6.5 × 10 = 13,000 L
- 必要な泡薬剤量を計算:泡水溶液量 × 希釈濃度 = 13,000 × 0.03 = 390 L
- 必要な水源水量を計算:泡水溶液量 × (1 − 希釈濃度) = 13,000 × 0.97 = 12,610 L
上記の計算式の流れ(水溶液量→薬剤量→水源水量の順)を繰り返し練習して身に付けておくことが重要です。試験本番では計算途中の数値も答案用紙に記載することで部分点が得られます。
製図試験の典型問題:ヘッド個数の計算手順
もうひとつの頻出計算問題「泡ヘッドの必要個数計算」の手順も整理します。
前提条件(問題文で与えられる)例:
- 防護面積:150m²
- 泡ヘッド1個の有効散水面積:9m²(標準型の場合)
計算手順:
- 必要ヘッド個数 = 防護面積 ÷ ヘッド1個の有効散水面積 = 150 ÷ 9 ≒ 16.7
- 端数は切り上げる → 17個
「端数が出たら切り上げ(切り捨て不可)」という点は必ず覚えてください。試験で「16個」と書くと不正解になります。消防設備は安全側に設計するため常に切り上げが原則です。
実技試験の採点基準を意識した答案の書き方
実技試験(鑑別・製図)の採点は部分点制です。採点基準は公開されていませんが、記述問題では次の点を意識すると得点しやすいです。
- 正式名称を使う:「開放弁」ではなく「一斉開放弁」、「ポンプ」ではなく「加圧送水装置(電動ポンプ方式)」など正式名称で書く
- 根拠条文を添える(製図):「消防法施行規則第18条に基づき〜」などの条文を書けると加点要素になりやすい
- 単位・記号を正確に書く:m³・L/min・MPaなど単位のつけ忘れは減点対象になることがある
- 数値を丁寧に書く:製図の計算で求めた数値は単位付きで大きく丁寧に書く。採点者が読めない字は採点されない
試験前日・当日の準備チェックリスト
実技試験の当日に慌てないよう、試験前日と当日の準備をまとめます。
試験前日(準備)
- 受験票・写真票・証明書類(本人確認書類)の確認
- 試験会場までのルートと所要時間を確認(消防試験研究センターの会場一覧で確認)
- 筆記用具(鉛筆・シャープペン・消しゴム・定規)を準備。製図試験は定規が使えることが多い
- 時計(スマホ不可の場合が多い)を準備。試験時間の自己管理に使う
- 製図で使う計算式(水溶液量・薬剤量・水源水量・ヘッド個数)を最終確認
- 夜10時以降は新しい勉強をしない。睡眠不足は計算ミスを増やす
試験当日(時間管理)
- 試験開始15分前には着席して問題冊子を受け取る(遅刻は入室不可になる場合がある)
- 試験開始後まず全体のページ数を確認し、製図問題の種類(系統図か計算か)を把握する
- 筆記に90〜100分・鑑別に20〜25分・製図に40〜50分・見直しに10分を目安に配分する
- 時間不足になりそうになったら、途中でも何か書く(白紙は0点・途中まででも部分点がある)
筆記試験で時間が余ったときの活用法
筆記45問を90〜100分で解き終えた場合、残りの時間を実技に充てることができます。「見直しと実技どちらを優先するか」の判断基準は次のとおりです。
- 筆記に自信がある(80%以上取れている手応えがある)場合:残り時間を製図の確認・計算の検算に使う
- 筆記に不安がある(60〜70%台の手応え)場合:怪しい問題を見直してから実技を解く。筆記で足切りになると実技の出来に関わらず不合格になる
- 実技(特に製図)が不安な場合:筆記見直しは最小限にして製図に時間を回す
試験時間は合計3時間15分で短くはありませんが、製図2問に慣れていない状態だと40〜50分でも足りないことがあります。試験前の練習で「製図2問を40分以内に解く」訓練をしておくと当日の時間管理が楽になります。
科目免除を受けた場合の時間配分の変化
法令(共通)や基礎的知識の科目免除を受けて受験する場合、試験時間が短縮されます。免除後の問題数と時間は消防試験研究センターで確認してください。科目免除を受けた場合でも、実技(鑑別・製図)の時間は変わらないため、実技の時間配分は上記と同じ目安で計画してください。
試験後の得点の確認方法
消防設備士試験は合格発表日に合否のみが通知されます(点数の通知はありません)。不合格だった場合は「通知書」に科目別の正答率(A:60%以上・B:40〜60%・C:40%未満)が記載されます。C判定の科目を重点的に強化して次回受験に備えてください。
- 合格発表:消防試験研究センターのウェブサイトで確認(受験番号で検索)
- 合格後の免状交付申請:都道府県の消防試験研究センター支部または知事へ申請(申請期限あり)
- 免状交付:申請から2〜3週間程度
出典:消防試験研究センター「消防設備士試験概要」、消防法施行規則(e-Gov法令検索)


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