認知症が中等度になると、以前は「軽度だからまだ大丈夫」と先送りにしていた手続きが、急に「もう間に合わない」という局面になることがある。任意後見・家族信託はすでに設定できない可能性が高く、動ける手段は法定後見申立てに絞られる。中等度と診断された段階で今すぐ動くべきことと、急を要する財産管理の対処法を整理する。
5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)
中等度認知症での判断能力の状態
認知症の重症度はMMSE(ミニメンタルステート検査)・HDS-R(長谷川式スケール)等で評価される。一般的に中等度(moderate)は「日常的な判断に介助が必要だが、感情や自己認識が一部残っている」段階とされる。
法律上は「意思能力があるか否か」が問題になる。医師が「意思能力がある」と判断している段階であれば、公正証書の作成(遺言・任意後見契約等)が可能な場合もある。ただし中等度の場合は公証人が意思確認を慎重に行うため、実際に手続きが通るかどうかは個別の判断による。
主治医(神経内科・精神科)に「現時点での意思能力はあるか」を直接確認することが最初のステップだ。
中等度で今すぐ確認すること(2週間以内)
中等度と診断された場合、以下の確認を2週間以内に行う。
- 主治医に「意思能力の確認」を依頼する:任意後見・家族信託の可否を専門家に判断してもらうための前提として、主治医の見解を文書(意見書)で得ておく
- 銀行口座の状況を確認する:代理人カードがない場合、今すぐ申請できるかを取引銀行に問い合わせる。口座が凍結されていなければ、まず代理人カードの申請を試みる
- 介護保険の申請状況を確認する:要介護認定が出ていなければ今すぐ申請する
- 司法書士または弁護士に相談する:任意後見・家族信託の可否判断と、法定後見申立ての準備を同時に相談する
「意思能力あり」と医師が判断した場合の選択肢
医師が意思能力ありと判断した場合は、まだ次の手続きを試みることができる。
- 公正証書遺言の作成:公証人が来院・訪問して作成できる場合もある
- 任意後見契約の締結:公正証書での締結が必要。公証人が判断能力を確認できれば可能
- 家族信託の設計・締結:判断能力が残っていれば可能。ただし中等度では設計完了まで時間がかかるため急ぐ必要がある
中等度の段階では、手続きの完了まで待ってはいられない。司法書士に依頼する場合も、「急ぎの案件」として最優先で対応してもらうよう伝える。
「意思能力なし」と医師が判断した場合の対処
医師が意思能力なしと判断した場合は、任意後見・家族信託・遺言書の新規作成は法律上困難になる。動ける手段は法定後見申立てのみだ。
急ぎで行うこと:
- 司法書士または弁護士に「法定後見の申立てを急ぎで進めたい」と連絡する
- 申立て中に緊急の資金需要がある場合は「審判前の保全処分」を家庭裁判所に申立てることを相談する
- 介護保険・施設入所等の医療・介護系の手続きは、後見人がいなくても家族が動けるものから着手する(施設入所契約は家族が代理できる場合が多い)
施設入所の手続きは家族ができる場合が多い
成年後見人がいない段階でも、介護施設への入所契約は家族(近親者)が手続きできることが多い。施設によって対応は異なるが、一般的に「家族の同意書・身元引受書」を提出することで入所手続きが進められる。
ただし、施設の費用支払いに口座が凍結されている場合は別途対処が必要だ。施設の担当者に「口座が使えない状態」と正直に相談し、後見申立て中であることを説明して支払いの猶予・分割対応を求める方法もある。
この記事のまとめ
- 中等度でも医師が「意思能力あり」と判断した場合は任意後見・家族信託・遺言を急いで進められる可能性がある
- まず主治医に意思能力の見解を確認するのが第一歩
- 意思能力なしの場合は法定後見申立てのみが選択肢(急ぎの資金需要には保全処分)
- 施設入所契約は後見人なしで家族が対応できる場合が多い
出典:民法第3条の2(意思能力)、厚生労働省「認知症ケアの手引き」、公証人法・公証人手数料令(公正証書の作成要件)
5問の診断で今すぐ危険度と損失額を確認できます。
▶ 認知症診断後 手続きナビ(無料診断)

コメント