就労継続支援A型の収入は、「評価点の区分」と「定員の区分」によって決まります。
これは他の障害福祉サービスとは異なる仕組みです。訪問介護や放課後等デイサービスは利用者の状態やサービスの内容によって単位数が変わりますが、就労継続支援A型は事業所自身の評価スコアが報酬に直結するという構造になっています。
この記事では、就労継続支援A型の月間収入がどのように計算されるかを、告示の条文に基づいて整理します。実際の試算も示しますので、開業の検討や収支の見直しに使ってください。
評価点の区分は7段階
就労継続支援A型の基本報酬は、「評価点」と呼ばれるスコアによって7つの区分に分かれます(平成18年厚生労働省告示第523号 別表第13)。
| 区分 | 評価点 | 定員20人以下 サービス費(Ⅰ) |
定員21〜40人 サービス費(Ⅱ) |
定員41〜60人 サービス費(Ⅲ) |
定員61〜80人 サービス費(Ⅳ) |
定員81人以上 サービス費(Ⅴ) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 区分1 | 170点以上 | 791単位 | 751単位 | 716単位 | 697単位 | 681単位 |
| 区分2 | 150〜170点未満 | 733単位 | 699単位 | 668単位 | 651単位 | 636単位 |
| 区分3 | 130〜150点未満 | 701単位 | 670単位 | 641単位 | 624単位 | 610単位 |
| 区分4 | 105〜130点未満 | 666単位 | 638単位 | 612単位 | 596単位 | 582単位 |
| 区分5 | 80〜105点未満 | 533単位 | 511単位 | 492単位 | 480単位 | 469単位 |
| 区分6 | 60〜80点未満 | 419単位 | 404単位 | 389単位 | 380単位 | 372単位 |
| 区分7 | 60点未満 | 325単位 | 314単位 | 304単位 | 297単位 | 291単位 |
出典:平成18年厚生労働省告示第523号 別表第13
区分1(170点以上)と区分7(60点未満)を比べると、791単位と325単位で約2.4倍の差があります。評価点の区分が事業所の収入を大きく左右することが分かります。
評価点は5つの分野で決まる
評価点は、以下の5分野のスコアを合計したものです。
- 賃金水準(利用者への賃金が高いほどスコアが上がる)
- 生産活動(生産活動の収益状況)
- 多様な働き方(在宅・短時間など多様な働き方への対応)
- 支援力向上(職員の資格・研修状況)
- 地域連携活動(地域の就労支援機関等との連携)
評価点は年度末に確定し、翌年度の報酬区分に反映されます。開業1年目には、実績がないため評価点を算定できません。この場合は「みなし規定」が適用され、区分5(80点以上105点未満)として扱われます。
開業1年目はさらに引き下げがある
開業1年目は、みなし規定の区分5に加えて、1000分の965(約3.5%減)の引き下げが適用されます。
たとえば定員20人以下・区分5の場合、533単位×0.965=約514単位が1年目の実際の単位数になります。
2年目以降は実績に基づいて評価点が算定されます。生産活動の収益や利用者への賃金水準が評価されるため、2年目以降の区分がどこになるかは事業の内容によって変わります。
1単位の単価と月間収入の計算式
1単位の金額は、事業所の所在する地域の区分によって異なります。1級地(東京都特別区など)は1単位=11.26円、地方の3級地・その他は10.00円が上限です。ここでは計算を単純にするため、1単位=10.00円(その他の地域)で試算します。
月間収入の計算式は以下のとおりです。
月間収入 = 1日あたりの基本報酬(単位数)× 1単位の単価 × 利用実績(延べ日数)
利用実績は「利用者1人×1日」で1回とカウントします。定員20人・稼働率90%・月22日営業の事業所なら、延べ利用日数は20人×90%×22日=396回です。
区分×定員別の月間収入試算(稼働率90%・月22日)
下の表は、定員20人以下の事業所で稼働率90%・月22日営業・1単位10円の条件で、各区分の月間収入の目安を示したものです。
| 区分 | 評価点 | 1日あたり単位数 (定員20人以下) |
月間収入目安 (延べ396回) |
月間収入目安 (延べ440回・稼働100%) |
|---|---|---|---|---|
| 区分1 | 170点以上 | 791単位 | 約313万円 | 約348万円 |
| 区分2 | 150〜170点未満 | 733単位 | 約290万円 | 約323万円 |
| 区分3 | 130〜150点未満 | 701単位 | 約278万円 | 約308万円 |
| 区分4 | 105〜130点未満 | 666単位 | 約264万円 | 約293万円 |
| 区分5(みなし) | 80〜105点未満 | 533単位 | 約211万円 | 約234万円 |
| 区分5(1年目) | みなし×0.965 | 514単位 | 約204万円 | 約226万円 |
| 区分6 | 60〜80点未満 | 419単位 | 約166万円 | 約184万円 |
| 区分7 | 60点未満 | 325単位 | 約129万円 | 約143万円 |
※1単位10円で計算。延べ396回=定員20人×90%×22日。
区分1(170点以上・313万円)と区分7(60点未満・129万円)では、月間収入に約184万円の差が生じます。評価点の区分が経営の安定に直結することが数字で確認できます。
定員が大きくなると収入はどう変わるか
定員が増えると1日あたりの単位数は下がりますが、利用者数が増えるため月間の延べ利用日数が増え、収入全体は大きくなります。
下の表は、区分5(みなし・533単位)で稼働率90%・月22日の条件における、定員別の月間収入目安です。
| 定員 | サービス費の種別 | 1日単位数 | 延べ利用日数 (稼働率90%・22日) |
月間収入目安 |
|---|---|---|---|---|
| 20人以下 | サービス費(Ⅰ) | 533単位 | 396回 | 約211万円 |
| 21〜40人 | サービス費(Ⅱ) | 511単位 | 594回(30人×90%×22日) | 約304万円 |
| 41〜60人 | サービス費(Ⅲ) | 492単位 | 891回(45人×90%×22日) | 約438万円 |
| 61〜80人 | サービス費(Ⅳ) | 480単位 | 1,386回(70人×90%×22日) | 約665万円 |
| 81人以上 | サービス費(Ⅴ) | 469単位 | 1,782回(90人×90%×22日) | 約836万円 |
※1単位10円・区分5(533/511/492/480/469単位)で計算。定員21〜40人・41〜60人・61〜80人・81人以上はそれぞれ定員の中間値で試算。
定員が大きくなれば収入の絶対額は増えますが、職員の配置基準(利用者10人に対して職業指導員・生活支援員を合わせて1人以上)も増えるため、費用も比例して増加します。定員を増やせば収益が上がるとは限らず、稼働率と職員配置のバランスが重要です。
基本報酬以外に加算がある
基本報酬に加えて、要件を満たす場合にはさまざまな加算が算定できます。主な加算を以下にまとめます。
| 加算名 | 単位数の目安 | 要件の概要 |
|---|---|---|
| 処遇改善加算(Ⅰ) | 基本報酬の24.0% | 職員の賃金改善・研修・評価の仕組みを整える |
| 処遇改善加算(Ⅱ) | 基本報酬の22.0% | 加算(Ⅰ)より要件が緩い |
| 特定処遇改善加算(Ⅰ) | 基本報酬の7.0% | 経験10年以上の職員への配分など |
| 就労移行連携加算 | 500単位/月(利用者1人あたり) | 就労移行支援事業所と連携して就職に結びつけた場合 |
| 職場適応援助者養成研修修了者配置加算 | 90単位/日 | ジョブコーチ養成研修を修了した職員を配置 |
| 就労定着支援連携加算 | 70単位/月(利用者1人あたり) | 就職した利用者と就労定着支援事業所が連携 |
出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年3月改定)
処遇改善加算は金額が大きく、算定できるかどうかで月間収入が大きく変わります。就労継続支援A型の場合、加算(Ⅰ)を算定できれば基本報酬の24.0%分が上乗せされます。定員20人・区分5の基本報酬が月211万円なら、処遇改善加算(Ⅰ)で約50.6万円の上乗せが期待できます。
収入に影響する要素のまとめ
就労継続支援A型の月間収入は、以下の要素によって変わります。
- 評価点の区分:区分1〜7の7段階。区分1と区分7では1日あたりの単位数が約2.4倍異なる(定員20人以下の場合)
- 定員の区分:定員が増えると1日の単位数は下がるが、延べ利用日数が増えて収入総額は大きくなる
- 稼働率:利用者が定員に対してどれだけ実際に通っているか。稼働率が下がると収入が比例して減る
- 地域区分:1単位の単価が地域によって異なる(10.00〜11.26円の範囲)
- 処遇改善加算等の加算:要件を満たすことで基本報酬に上乗せされる
- 開業年数:1年目はみなし区分5かつ0.965の引き下げが適用され、2年目以降の収入より少なくなる
A型の収入と費用の関係
就労継続支援A型の費用構造の特徴は、利用者への賃金(工賃ではなく最低賃金以上の賃金)が毎月の固定費として発生することです。
厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算・334事業所)によると、就労継続支援A型の全国平均は以下のとおりです。
- 収支差率(収支差÷収入):約2.3%
- 給与費率(給与費÷収入):約74.5%
- 収入に占める利用者への賃金の割合:概ね40〜55%程度(事業所によって異なる)
出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果(案)」(2025年)
収支差率2.3%は全国平均で、黒字の事業所と赤字の事業所が混在しています。利用者への賃金を適正に支払いながら安定した収支を確保するためには、評価点の区分を高く維持し、稼働率を安定させることが重要です。
収入計算シミュレーターを使う
評価点の区分・定員・稼働率を入力して月間収入の目安を確認するには、収支シミュレーターをご利用ください。
就労継続支援A型の月間収入・収支・損益分岐点を入力した数字で試算できます。
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出典
- 平成18年厚生労働省告示第523号 別表第13(就労継続支援A型・基本報酬の単位数)
- 障害福祉サービス等報酬告示(令和6年3月改定)(処遇改善加算・各種加算)
- 厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果(案)」(2025年)


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