通所介護(デイサービス)の経営、全国約23,500事業所の数字から読み取れること。

通所介護(デイサービス)の経営、全国約23,500事業所の数字から読み取れること。 福祉事業の開業と運営

通所介護(デイサービス)の経営は、稼働率・加算の取得状況・人件費の管理の3つで大きく変わります。全国平均の収支差率(収入に対する利益の割合)は、厚生労働省の調査によると黒字の事業所でプラスになっているものの、赤字の事業所も一定数あります。開業直後から安定した収益を得るのは難しく、定員に対する稼働率を早期に高めることが課題になります。

この記事では、通所介護の経営に関する全国の数字と、経営を安定させるための考え方を整理します。

全国平均の収支差率は2.4%だが事業所によって差が大きい

厚生労働省が実施する「介護事業経営実態調査」では、通所介護の収支差率(収入に対する利益の割合)が公表されています。令和4年度の調査では通所介護(通常規模型)の収支差率(税引き前)は2.4%でした。

出典:厚生労働省「令和4年度介護事業経営実態調査結果」(令和5年3月公表)。

ただし、この全国平均の数字は規模・地域・加算の取得状況の異なる多数の事業所の平均であり、個々の事業所の経営状況とは異なります。特に小規模・定員20名前後の事業所は、規模の経済が働きにくいため、大規模事業所より固定費の負担が重くなる傾向があります。

介護報酬の入金は提供月の翌々月になる

通所介護の収入の大半を占める介護報酬は、次の流れで入金されます。

  1. サービス提供月(例:4月)
  2. 翌月10日頃に国民健康保険団体連合会(国保連)に請求(例:5月10日)
  3. さらに翌月(例:6月末)に国保連から入金

つまり、4月に提供したサービスの報酬が入るのは6月です。開業後2か月間は介護報酬の入金がありません。また、月の途中で請求した場合は翌々月の末になります。

さらに、利用者が支払う1〜3割の自己負担分は事業所が直接徴収します。自費サービスや実費(食費・日常生活費等)の回収も毎月必要です。

利用者1人あたりの月の利用回数が収入を左右する

通所介護の収入は「1日あたりの報酬単位数 × 地域単価 × 月の利用回数 × 利用者数」で決まります。ケアプランに位置づけられる週の利用回数は、利用者の要介護度・生活状況によって異なります。一般的に要介護3以上の利用者は週2〜5回の利用になることが多く、要介護1〜2では週1〜3回程度が多いとされています。

月の利用回数が増えるほど収入が増えますが、職員の配置も増やす必要があります。利用者1人あたりの月の利用回数を安定させることが、収益の安定につながります。

競合が多い地域では稼働率を確保することが難しい

通所介護は、同じ圏域に複数の事業所が競合します。利用者はケアマネジャー(居宅介護支援事業所)を通じて事業所を選ぶことが多いため、居宅介護支援事業所への営業活動が稼働率に直結します。

新規開業後に稼働率を上げるために有効とされていることをまとめると次のとおりです。

  • 居宅介護支援事業所への定期的な営業:近隣のケアマネジャーに事業所の特徴・受け入れ可能な利用者像・空き状況を伝える
  • 特徴を絞って差別化する:入浴特化・機能訓練特化・認知症対応など、利用者・ケアマネジャーに選ばれる軸を持つ
  • 利用者・家族からの口コミ:通所介護は利用者の継続的な利用が収益の基盤であり、サービスの質が評価されると家族や医療機関からの紹介につながる
  • 地域のイベント・出前講座への参加:地域包括支援センターや市区町村の介護予防事業への協力が認知度向上につながる場合がある

処遇改善加算の取得は職員の採用・定着に影響する

通所介護の経営課題のひとつが介護職員の確保と定着です。処遇改善加算(令和6年6月〜一本化後)は、算定によって介護職員の賃金を引き上げる財源になります。加算率は最大14.8%(処遇改善加算Ⅰ)で、月の基本報酬・各種加算の合計に対して乗じた額が追加収入になります。

処遇改善加算を算定するためには、賃金改善計画の作成・実績報告・職場環境の整備などの要件があります。算定しない場合は職員の賃金が競合他社より低くなりやすく、採用・定着に不利になる場合があります。

報酬改定は3年ごとに収支に影響する

介護報酬は原則として3年ごとに改定されます。令和6年度の改定では処遇改善加算の一本化(令和6年6月施行)が行われました。次回の改定は令和9年度が予定されています。

報酬改定では基本報酬の増減・加算の見直しがあり、事業所の収入に直接影響します。改定のたびに事業計画を見直し、必要に応じて加算の取得や人員配置を調整することが必要です。

規模が大きくなると大規模型に移行して単価が下がる

事業所の月平均延べ利用者数が300人を超えると、報酬単価が高い通常規模型から大規模型Ⅰに移行します。大規模型Ⅰは通常規模型比で約5%の単価減、750人超の大規模型Ⅱでは約7.5%減になります。

事業を拡大しても単価が下がるため、利用者数の増加による収入増加は規模移行のタイミングで頭打ちになります。規模が大きくなる段階では、加算の取得強化・人件費の効率化などで収支を維持する必要があります。


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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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