通所介護の個別機能訓練加算。算定要件と収入への影響。

通所介護の個別機能訓練加算は、(Ⅰ)イが56単位/日、(Ⅰ)ロが76単位/日、(Ⅱ)が20単位/月で算定できます(令和6年4月改定後・参考値)。加算Ⅱの算定にはLIFEへのデータ提出が必要です。この記事では、各区分の算定要件・機能訓練指導員の配置条件・届出手続き・収入試算・算定ミスの注意点を整理します。

個別機能訓練加算の3区分と単位数

個別機能訓練加算には(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)の3区分があります。根拠は介護報酬の告示(平成12年厚生省告示第19号・最終改正令和6年3月)です。単位数は以下の通りです(算定前に告示原文または自治体の算定手引きで確認してください)。

区分 単位数(参考値) 算定単位 特記
個別機能訓練加算(Ⅰ)イ 56単位/日 利用者1人・1日ごと 機能訓練指導員を専従で配置(所定の時間帯)
個別機能訓練加算(Ⅰ)ロ 76単位/日 利用者1人・1日ごと (Ⅰ)イに加え、機能訓練指導員が居宅を訪問して利用者の状態を把握
個別機能訓練加算(Ⅱ) 20単位/月 利用者1人・1月ごと LIFEへのデータ提出が必須。(Ⅰ)との併算定可

※上記単位数は告示の概要として記載しています。告示改定により変更される場合があります。算定前には厚生労働省の告示原文または都道府県の手引きでご確認ください。

(Ⅰ)イの算定要件

個別機能訓練加算(Ⅰ)イを算定するには、次の要件を満たす必要があります。

  • 機能訓練指導員を、営業時間を通じて1名以上専従で配置すること
  • 機能訓練指導員が、個別機能訓練計画を作成し、その計画に基づいて機能訓練を実施すること
  • 個別機能訓練計画には、利用者ごとの目標・訓練内容・実施時間・担当者を記載すること
  • 3か月ごとに計画の見直しを行い、利用者またはその家族への説明・同意を得ること

「専従」とは、機能訓練の提供時間帯において機能訓練指導員としての業務に専念することを意味します。他の業務(介護業務など)との兼務が認められる時間帯については、自治体の解釈通知で確認が必要です。

(Ⅰ)ロの算定要件(居宅訪問)

個別機能訓練加算(Ⅰ)ロは、(Ⅰ)イの要件に加えて、機能訓練指導員が利用者の居宅を訪問し、生活環境を確認した上で訓練計画を立案・見直す場合に算定できます。

  • (Ⅰ)イのすべての要件を満たすこと
  • 機能訓練指導員が、1年に1回以上、利用者の居宅を訪問して生活環境・ADLの状態を確認すること
  • 居宅訪問の内容を個別機能訓練計画に反映すること

居宅訪問には移動時間・人件費が発生します。対象利用者が多い場合は、年間スケジュールを組んで計画的に実施することが必要です。

(Ⅱ)の算定要件(LIFE提出が必須)

個別機能訓練加算(Ⅱ)は、LIFEへのデータ提出を条件に算定できます。(Ⅰ)との併算定が可能です。

  • 個別機能訓練に関するデータをLIFE(科学的介護情報システム)に提出し、フィードバックを受けること
  • LIFEのフィードバックを活用して、訓練計画の見直しに活かすこと

LIFEへのデータ提出は、厚生労働省が提供する「LIFE入力支援ツール」を使うか、ソフトウェアからCSVエクスポートで行います。対応する介護ソフトを使用していると作業負担を軽減できます。

機能訓練指導員の資格要件

機能訓練指導員として配置できる職種は、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・看護師(准看護師を含む)・柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師、そして一定の実務経験を有する鍼灸師とされています(老企第36号等)。

「機能訓練指導員」という国家資格は存在せず、上記いずれかの有資格者が機能訓練指導員として機能を担う形です。配置に必要な資格の確認は、指定権者(都道府県等)の解釈通知で確認することをおすすめします。

届出手続きと算定開始のタイミング

個別機能訓練加算を算定するには、都道府県・指定都市・中核市への体制届出が必要です。

  1. 機能訓練指導員の採用・配置(専従配置の要件を満たす状態にする)
  2. 個別機能訓練計画の整備(様式・記載内容の確認)
  3. 指定権者へ体制届出書を提出
  4. 届出が受理された翌月(または翌々月)から算定開始(自治体により異なる)

届出前に算定した場合は不正請求となり、返還命令・指定取消のリスクがあります。採用・配置が整ってから届出するという順序を守ってください。

加算取得による収入への影響(試算例)

定員20名・稼働率80%(1日16名利用)・1単位10.00円(その他地域)の通所介護事業所が、個別機能訓練加算(Ⅰ)イと(Ⅱ)を取得した場合の月間追加収入を概算します(稼働日22日)。

加算 計算 月間追加収入(概算)
(Ⅰ)イ:56単位/日 56 × 16名 × 22日 × 10.00円 約19.7万円/月
(Ⅱ):20単位/月 20 × 16名 × 10.00円 約0.3万円/月
合計 約20.0万円/月

(Ⅱ)単独では収入増が小さいですが、(Ⅰ)との併算定で算定手続きの費用対効果は改善します。また(Ⅱ)のLIFEフィードバックを訓練計画改善に活用することで、利用者の継続利用・稼働率維持につながる効果も期待できます。

(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロ、どちらを算定すべきか

居宅訪問の実施が可能かどうかが判断の分かれ目です。

  • (Ⅰ)イを選ぶ場合:移動時間・人件費の余裕がない・利用者が遠方に住んでいる・機能訓練指導員が1名のみで訪問に割ける時間がない
  • (Ⅰ)ロを算定する場合:機能訓練指導員を複数配置・利用者の多くが近隣在住・年間スケジュールで訪問を組める体制がある

(Ⅰ)ロは(Ⅰ)イより20単位/日高いため、16名利用・22日稼働で月間約7.0万円の差になります。居宅訪問にかかる実際のコストと比較して判断してください。

よくある算定ミス・注意点

  1. 「専従」の解釈誤り:機能訓練指導員を他の業務と兼務させながら加算を算定するケースは運営指導で指摘されやすい事項です。専従の時間帯・記録を整備してください。
  2. 計画の3か月見直しが未実施:個別機能訓練計画は3か月ごとの見直しが義務です。見直し・説明・同意の記録を保存してください。
  3. LIFEへの提出漏れ:(Ⅱ)を算定しているにもかかわらずLIFEへのデータ未提出が続くと、加算の返還を求められることがあります。提出状況の定期確認が必要です。
  4. 機能訓練指導員の退職後:機能訓練指導員が退職した場合、要件を満たさなくなった時点で速やかに加算の変更届出が必要です。退職後も算定を続けた場合は不正請求になります。

体制加算一覧記事との重複について

当サイトには通所介護の体制加算全般を整理した記事(口腔機能向上加算・個別機能訓練加算・入浴介助加算など)も掲載しています。この記事では個別機能訓練加算の算定要件・収入計算・実務の注意点に特化して詳しく解説しています。

まとめ

通所介護の個別機能訓練加算は(Ⅰ)イ・(Ⅰ)ロ・(Ⅱ)の3区分があり、(Ⅱ)はLIFEへのデータ提出が必要です。算定には機能訓練指導員の専従配置・個別機能訓練計画の作成・3か月ごとの見直しが必要で、体制届出後から算定できます。機能訓練指導員の退職・LIFE提出漏れは加算返還リスクがあるため、定期的な確認体制を整えてください。

よくある質問

機能訓練指導員は管理者や生活相談員と兼務できますか

管理者との兼務は一般的に認められています(管理業務に支障がない範囲)。生活相談員との兼務については自治体の解釈通知で確認が必要です。「専従」の要件が問われるのは、機能訓練指導員として機能訓練を提供している時間帯です。

(Ⅰ)と(Ⅱ)は同時に算定できますか

はい、(Ⅰ)イまたは(Ⅰ)ロと(Ⅱ)は同時に算定できます。(Ⅰ)イと(Ⅰ)ロは同時算定できません(どちらか一方を選択)。

LIFEのアカウントはどこで取得できますか

LIFEのアカウントは厚生労働省・老健局が管理しています。「科学的介護情報システム(LIFE)」のページから申請できます。申請・登録については自治体の窓口または厚生労働省の問い合わせ先に確認してください。

通所介護の収支シミュレーターでは、個別機能訓練加算を含む加算取得後の月次収支・損益分岐点を試算できます。

通所介護 収支シミュレーター

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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