グループホームの運営規程。記載が義務づけられている項目。

グループホーム(共同生活援助)の運営規程は、平成18年厚生労働省令第171号(指定共同生活援助の章)に基づき、指定を受けた事業者が作成・整備しなければならない書面です。事業の目的・運営方針から職員配置・利用料・緊急時対応まで、記載が義務付けられている項目を整理します。

運営規程の作成は省令第171号が根拠

障害者グループホーム(指定共同生活援助)は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(障害者総合支援法)に基づく指定障害福祉サービス事業です。指定を受けた事業者は、「指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第171号、以下「省令」)の定める基準に従い、適切なサービスを提供しなければなりません。

省令は、共同生活援助の章において、運営規程として定めなければならない事項を列挙しています。運営規程は事業所の運営の根本原則・方針・手順を文書化したものであり、指定申請時に都道府県等へ提出するほか、利用者・家族への説明にも使用します。

運営規程は一度作れば終わりではなく、内容に変更が生じた場合は変更届出が必要です。また、常に最新の状態に保ち、従業者に周知することが求められます。

なお、都道府県や政令指定都市・中核市によっては運営規程の標準様式を公表しているため、指定権者の様式に従って作成することで記載漏れを防ぎやすくなります。

運営規程に記載しなければならない主な事項

省令が共同生活援助の運営規程に定めることを求めている事項は、おおむね以下の通りです。

  1. 事業の目的及び運営の方針
  2. 職員の職種・員数・職務の内容
  3. 営業日及び営業時間(サービス提供を行う日・時間帯)
  4. 共同生活住居の概要(住居ごとの所在地・利用定員等)
  5. 指定共同生活援助の内容及び利用者から受領する費用の種類・額
  6. 通常の事業の実施地域
  7. 緊急時等における対応方法
  8. 非常災害対策
  9. 虐待の防止のための措置に関する事項
  10. その他運営に関する重要事項

「その他運営に関する重要事項」には、苦情対応体制・身体拘束等の適正化に関する事項・個人情報の取り扱い・サービス利用に際して利用者が守るべきルール等が含まれます。

事業の目的・運営の方針の書き方

運営規程の最初に置かれる「事業の目的及び運営の方針」は、グループホームがどのような考え方のもとで運営されるかを示す部分です。

法人の理念・グループホームが目指す支援の方向性・地域とのつながり方などを、利用者や家族にも分かりやすい言葉で記載します。行政には内容が具体的に書かれた書類を提出する必要があるため、事業の核となる考えを3〜5文程度にまとめておくのが実務上の目安です。

記載する運営の方針として多く見られるのは、「利用者の自立支援と地域生活の継続を支援する」「障害特性に応じた個別支援を提供し、一人ひとりの意思決定を尊重する」「地域の関係機関と連携し、安心して暮らせる環境を整える」などの表現です。

なお、受け入れる利用者の障害種別・障害支援区分の範囲が実態と一致していることも重要です。強度行動障害を有する者や医療的ケアが必要な者を受け入れる場合は、その旨を運営の方針に明記しておくと、運営指導での説明がしやすくなります。

職員の職種・員数・職務内容

省令は、共同生活援助の人員配置として次の職種の配置を求めています。

  • 管理者
  • サービス管理責任者
  • 世話人
  • 生活支援員(障害支援区分3以上の利用者を受け入れる場合等)

運営規程には、これらの職種それぞれについて「何名配置するか」「常勤・非常勤の別」「具体的な職務内容」を記載します。

サービス管理責任者については、利用者60名以下の場合は1名以上の配置が必要です(60名を超える場合は追加が必要)。世話人は、利用者6名に対して1名以上(常勤換算)が最低基準です。生活支援員の配置は、利用者の平均障害支援区分に応じた基準を満たす必要があります。

員数は変更が生じた場合に届出が必要になるため、実態と運営規程の記載が一致しているかを定期的に確認することが重要です。特にサービス管理責任者が退職・異動した場合は、後任が確保されるまでの空白期間が運営指導上の問題になりやすいため注意が必要です。

共同生活住居の概要と利用定員

共同生活援助は「共同生活住居」単位でサービスを提供するため、運営規程には住居ごとの情報を記載します。

記載する内容の例は次の通りです。

  • 住居の名称(例:○○グループホーム第1棟)
  • 所在地(住所)
  • 利用定員(各住居の定員数)
  • 住居の構造(木造・鉄骨・RC等)
  • サテライト型住居を設ける場合はその旨と所在地

共同生活住居の定員は2名以上10名以下(サテライト型住居を除く)とされています。この上限を超えて定員を設定することはできないため、住居を増設する場合は指定申請(変更届または追加指定)が必要です。

住居を廃止する場合も変更届が必要です。廃止の際は利用者の他サービスへの移行支援を適切に行う必要があるため、閉鎖のスケジュールは早めに行政と相談することが重要です。

利用料その他の費用

運営規程には、利用者から受け取る費用の種類と額を明記します。

共同生活援助で事業者が受け取ることができる主な費用は次の通りです。

  • 家賃(実費:家賃減額制度の対象になる場合がある)
  • 食費(実費)
  • 光熱水費(実費)
  • 日用品費(実費)
  • その他日常生活に通常必要となる費用(実費)

家賃については「障害者グループホームの家賃助成制度」(特定障害者特別給付費)が設けられており、利用者が一定の要件を満たす場合は市区町村から月額上限1万円の補足給付が支給されます。この制度について利用者に適切に説明し、申請を支援することも事業者の重要な役割です。

費用の額は、実費として徴収できる範囲が都道府県等の運営基準や通知で示されている場合があります。運営規程に記載する金額と実際に請求している金額が一致しているかは、運営指導でも確認されるポイントです。年度初めに費用の見直しを行った場合は、速やかに運営規程を改定し利用者への説明・同意取得を行いましょう。

緊急時等における対応方法

利用者の体調急変・行動上の問題・事故発生時など、緊急時の対応方法を運営規程に定めます。

記載内容の例は次の通りです。

  • 緊急時の連絡先一覧(管理者・サービス管理責任者・協力医療機関等)
  • 救急搬送の手順・搬送先医療機関の確保
  • 家族・後見人等への連絡方法・タイミング
  • 行政(市区町村等)への報告義務が生じる場合の対応(事故報告)
  • 夜間帯の緊急事態における対応手順
  • 事故発生時の記録・報告方法

グループホームは夜間もサービスを提供するため、夜間支援従事者(宿直者)と管理者・緊急時の協力医療機関との連絡体制を整備し、手順を具体的に定めておくことが求められます。深夜帯に宿直者しかいない状況で体調急変が発生した場合の判断基準を明確にしておくことが実務上の重要ポイントです。

また、利用者の状態変化を記録する「ヒヤリハット報告書」の様式・提出先・集計方法についても、運営規程または関連手順書で定めておくことが推奨されます。

非常災害対策

省令は、非常災害に関する具体的な計画の策定・設備の整備・訓練の実施を求めています。運営規程にはこれらの非常災害対策の概要を定めます。

非常災害対策として定めるべき主な内容は次の通りです。

  • 消防計画の策定(消防法に基づく)と定期更新
  • 避難訓練・消火訓練の実施(年2回以上)
  • 非常災害時の連絡体制(地域住民・行政機関・協力事業者等)
  • 浸水・地震・土砂災害等のリスクに応じた対策
  • 避難先・避難経路の確保と利用者への周知

令和3年度以降、業務継続計画(BCP)の策定も義務化されました(令和6年4月から完全義務化)。BCPは運営規程とは別文書として策定しますが、非常災害対策の規定と整合した内容にすることが必要です。BCP策定にあたっては、国が公表している「障害福祉サービス事業等における業務継続ガイドライン」が参考になります。

虐待の防止のための措置

「障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(障害者虐待防止法)と省令改正により、指定障害福祉サービス事業者は虐待防止措置を義務として講じる必要があり、その内容を運営規程に記載します。

虐待防止に関して運営規程に定める事項の例は次の通りです。

  • 虐待防止責任者の設置(管理者等)
  • 虐待防止委員会の設置と定期開催(少なくとも年1回)
  • 従業者への研修実施(年1回以上)
  • 苦情解決との連携(虐待の申し出を受け付ける体制)
  • 通報・報告義務に関する周知方法

虐待防止委員会は管理者を委員長として、世話人・生活支援員・サービス管理責任者等で構成します。委員会の議事録は記録・保存が求められるため、様式と保存期間(2年以上)をあらかじめ定めておくことが実務上の確認ポイントです。

身体拘束等の適正化についても、虐待防止の延長として委員会での検討・記録が必要です。「やむを得ず身体拘束等を行った場合の手順」を運営規程または別途手順書に定め、従業者全員に周知しておくことが求められます。

変更時の届出義務

運営規程の記載事項に変更が生じた場合は、都道府県等(または政令指定都市・中核市)への変更届出が必要です。届出期限は各都道府県等が定めており、変更が生じた日からおおむね10日以内とされている場合が多いですが、自治体によって異なるため指定権者の案内を確認してください。

変更が多く発生しやすい項目は次の通りです。

  • 管理者・サービス管理責任者の氏名(異動・交代)
  • 職員の員数(増員・減員)
  • 利用定員(変更の場合は指定基準の要件を満たすか確認が必要)
  • 共同生活住居の増減(新設・廃止)
  • 利用料・費用の改定
  • 営業時間の変更

特に、サービス管理責任者の交代は加算取得の要件にも影響します。サービス管理責任者が欠員になると「サービス管理責任者欠如減算」が適用され、報酬単位数が減算されます。計画的な採用・育成が必要です。

また、報酬改定があった年度(次回は令和9年度予定)は、運営規程全体を見直す機会として活用することが推奨されます。

運営指導での確認ポイント

都道府県等が実施する運営指導では、運営規程は必ず確認される書類の一つです。よくある指摘事項を以下に整理します。

  • 運営規程と重要事項説明書の記載内容が一致していない
  • 変更が生じているのに運営規程が更新されていない(旧職員の名前が残っている等)
  • 利用料の実費徴収額と運営規程の記載額が異なる
  • 虐待防止・苦情解決・非常災害対策の記載が省令の求める水準に達していない
  • 利用者への説明・同意の記録(利用契約書との整合)が不足している
  • BCPが策定されていない(令和6年4月以降は完全義務)

運営規程は「作成して終わり」にせず、少なくとも年1回(法令改正や報酬改定のタイミング)に見直しを行うことが推奨されます。見直した際は改定日を更新し、従業者全員に周知した記録(回覧・説明会記録等)を残しておきましょう。

グループホームの収支計画シミュレーター

運営規程の整備は開業準備の重要な一部ですが、グループホーム開業時に最初に試算しておきたいのが収支です。基本報酬・加算取得による収入と、人件費・家賃・各種運営費のバランスを数字で確認するには、以下のシミュレーターをご活用ください。

グループホーム(共同生活援助)開業収支シミュレーター

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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