認知症の方を対象とした介護サービスとして、小規模多機能型居宅介護と認知症対応型通所介護はよく比較されます。定員・費用の仕組み・指定権者・提供できるサービスの範囲が大きく異なります。開業を検討する場合の違いを整理します。
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2つのサービスの違いを先にまとめる
| 比較項目 | 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護 |
|---|---|---|
| 介護保険の分類 | 地域密着型サービス | 地域密着型サービス |
| 指定権者 | 市区町村 | 市区町村 |
| 利用可能者 | 要支援1〜要介護5(事業所の市区町村の住民) | 要支援1〜要介護5(認知症の診断がある方) |
| 定員 | 登録29人以下・通い18人以下・宿泊9人以下 | 単独型12人以下、共用型3人以下 |
| 提供サービス | 通い+泊まり+訪問(3つセット) | デイサービス(日中のみ) |
| 費用の仕組み | 月額定額制 | 回数×単価(出来高) |
| ケアマネジャー | 事業所のスタッフが担当(外部ケアマネ不可) | 外部の居宅介護支援事業所のケアマネが担当 |
| 区分支給限度基準額 | 対象外(定額制のため限度額を超えても算定) | 対象(限度額内での算定) |
認知症対応型通所介護は日中のデイのみ。宿泊・訪問はできない
認知症対応型通所介護は、認知症の診断がある方を対象とした日中のデイサービスです。日常生活上の世話・入浴・食事・機能訓練が中心で、宿泊サービスや自宅への訪問介護は提供できません。
一方、小規模多機能型居宅介護は通い(デイ)・泊まり(ショートステイ相当)・訪問の3つをひとつの事業所が提供します。利用者の状態や家族の都合に合わせて柔軟に組み合わせられるため、独居の認知症高齢者や家族の介護負担軽減が必要なケースに対応しやすいサービスです。
費用の仕組みが大きく違う:定額制と出来高制
認知症対応型通所介護は、利用回数に応じた出来高制です。1回の利用ごとに単価が発生し、月の利用回数が増えるほど費用が増加します。区分支給限度基準額の範囲内で算定されます。
小規模多機能型居宅介護は月額定額制です。通い・宿泊・訪問を何回使っても介護保険分の月額は変わりません。区分支給限度基準額の対象外のため、限度額を超えた利用でも介護保険分の費用は増えない仕組みです。
| 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護 | |
|---|---|---|
| 費用の計算方法 | 月額定額(要介護度別) | 利用回数×単価 |
| 利用回数が増えると | 費用は変わらない | 費用が増加する |
| 区分支給限度額との関係 | 対象外(定額に上乗せなし) | 対象(限度額の範囲内) |
| 食費・宿泊費 | 別途利用者負担 | 食費のみ別途(通所時) |
ケアマネジャーの担当が変わる
認知症対応型通所介護を利用する場合、外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーがケアプランを作成します。デイ以外のサービス(訪問介護・訪問看護など)も引き続き組み合わせが可能です。
小規模多機能型居宅介護を利用すると、外部の居宅介護支援事業所のサービスは利用できなくなります。ケアプランは小規模多機能の事業所の計画作成担当者(介護支援専門員)が作成します。これは利用者・家族にとって大きな変化です。
現在の担当ケアマネジャーとの関係や、他の訪問介護・通所介護との併用状況によっては、小規模多機能への切り替えが難しいケースもあります。事業所の集客・利用者獲得の難しさに影響する点です。
開業の難しさの違い:公募と総量規制
どちらも地域密着型サービスのため、市区町村が指定権者です。小規模多機能型居宅介護は、多くの市区町村で公募制と総量規制(第9期介護保険事業計画の整備目標数)があります。整備枠に空きがない地域では新規開業ができません。
認知症対応型通所介護も地域密着型ですが、小規模多機能ほど総量規制が厳しくない自治体もあります。開業を検討する市区町村の整備計画を事前に確認することが必要です。
| 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護 | |
|---|---|---|
| 指定権者 | 市区町村 | 市区町村 |
| 公募・総量規制 | 多くの自治体で公募制・総量規制あり | 自治体によって異なる(小多機より緩い場合がある) |
| 管理者の要件 | 認知症対応型サービス事業管理者研修が必須 | 認知症対応型サービス事業管理者研修が必須 |
| 開業費用の目安 | 物件(通い・宿泊スペース)+設備で1,000万円以上が一般的 | 通所スペースの整備のみで済む場合が多い |
どちらを選ぶか:提供したいケアの範囲で決まる
在宅生活の継続を支え、宿泊や訪問まで一体的に対応したいなら小規模多機能が向いています。開業費用・人員体制・公募の壁があるため参入難度は高いですが、定額制で安定した月次収入が見込める点が特徴です。
日中のデイサービス専門で認知症の方を支えるなら、認知症対応型通所介護の方がシンプルな事業モデルです。定員が小さく(単独型12人以下)、小規模多機能より設備投資を抑えられる場合があります。
市区町村の整備目標・地域のニーズ・自分が提供したいケアの内容を軸に選択することをお勧めします。
認知症対応型通所介護の「単独型」と「共用型」の違い
認知症対応型通所介護には、単独型と共用型の2種類があります。
| 種別 | 定員 | 対象・場所 |
|---|---|---|
| 単独型 | 12人以下 | 専用の建物で認知症の方を対象に日中のデイサービスを提供 |
| 共用型 | 3人以下 | 認知症対応型共同生活介護(GH)または養護老人ホームの食堂等を共用し、地域の認知症の方にもサービスを提供 |
共用型は、グループホームを運営している事業者が既存施設の共用スペースを活用して実施するケースが一般的です。定員3人と小さく、専用の場所を別途設けなくてよいため、GH運営者にとってはコストを抑えてサービスを拡充する手段になります。
月次収入の目安:稼ぎやすさの比較
登録定員(小規模多機能)・通所定員(認知症対応型通所介護)の違いが、月次収入の最大値に影響します。以下は収入の目安です(地域区分「その他」・要介護3・主な加算なし)。
| 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護(単独型) | |
|---|---|---|
| 1人あたりの月次報酬目安 | 約22,000〜25,000円(月額定額・要介護3の基本報酬) | 利用回数×1,200〜1,350円程度/回(8時間以上9時間未満・要介護3) |
| 最大登録・通所定員 | 登録29人 | 通所12人 |
| 月次収入の目安(定員満員時) | 約64〜73万円/月(基本報酬のみ・概算) | 月あたりの利用回数次第(例:週3回×12人なら月次45〜50万円程度) |
小規模多機能は月額定額のため、登録者が多いほど収入が安定します。一方、認知症対応型通所介護は利用回数に応じた出来高制のため、利用者が休んだ月は収入が落ちます。月次収入の安定性は小規模多機能のほうが高いといえます。
利用者・家族への切り替え説明のポイント
現在、外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーのもとで複数のサービスを利用している高齢者が小規模多機能に切り替える場合、次の変化が生じます。
- ケアマネジャーが変わる:現在の担当ケアマネと関係が深い場合、切り替えへの抵抗が生じることがあります
- 他のサービスとの併用ができなくなる:訪問介護・通所介護・デイサービス等は小規模多機能の利用開始後は原則として利用できなくなります(訪問看護・訪問リハビリテーション・福祉用具貸与等は一部例外があります)
- 月次費用の変化:それまで使っていたサービスの合計と、小規模多機能の月額との比較が必要です
利用者・家族が切り替えを検討する際には、現在利用しているサービスの月次費用と小規模多機能の月額を具体的に比較して説明することが重要です。月額のほうが高くなる場合でも、宿泊や緊急時の訪問が月額に含まれることでメリットが生じるケースを丁寧に説明するとよいでしょう。
どちらが開業しやすいか:自治体の整備状況
小規模多機能型居宅介護は、多くの自治体で第9期介護保険事業計画に整備目標数が設定されており、公募制をとっています。整備枠に空きがない場合は新規開業の申請ができないため、開業前に必ず市区町村の整備計画を確認する必要があります。
認知症対応型通所介護は、小規模多機能型居宅介護ほど総量規制が厳しくない自治体が多い傾向がありますが、こちらも地域密着型サービスのため市区町村の指定が必要です。申請前に市区町村の担当窓口へ確認することは共通して必要です。
| 確認事項 | 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護 |
|---|---|---|
| 整備目標・公募の確認 | 必須(整備枠なしは申請不可) | 要確認(自治体によって異なる) |
| 管理者の研修 | 認知症対応型サービス事業管理者研修(修了必須) | 認知症対応型サービス事業管理者研修(修了必須) |
| 計画作成担当者 | 介護支援専門員(必須) | 不要 |
| 設備基準 | 通い・泊まりの機能が一体(宿泊室含む) | 通所スペースのみ |
管理者の研修(認知症対応型サービス事業管理者研修)はどちらも修了が必要ですが、小規模多機能はさらに計画作成担当者(介護支援専門員の資格保有者)を確保することが必要です。人材の確保という観点でも、小規模多機能のほうが参入条件は厳しくなっています。
ケアマネジャーからの紹介を得やすいのはどちらか
小規模多機能型居宅介護は、居宅介護支援事業所(外部ケアマネ)を通じた紹介が原則として使えません。登録者を集めるための集客・営業の面では、外部ケアマネへの営業が使えない分、難易度が上がります。
一方、認知症対応型通所介護は外部のケアマネジャーがケアプランを作成するため、居宅介護支援事業所への営業(利用者紹介依頼)が集客の主な手段になります。デイサービスと同じ集客モデルです。
小規模多機能は地域包括支援センターとの連携・地域住民への認知度向上・病院の地域連携室への営業など、外部ケアマネ以外の集客チャネルを開拓する必要があります。開業後の集客に時間がかかる傾向があるため、開業から登録定員に達するまでの期間を長めに見積もることが必要です。
利用者の立場から見た2つのサービス
利用者・家族の視点では、どのような状況のときにどちらのサービスが向いているかを整理します。
| 状況 | 向いているサービス | 理由 |
|---|---|---|
| 日中のデイを利用したいが、他の訪問介護も続けたい | 認知症対応型通所介護 | 外部ケアマネのもとで複数サービスの併用が可能 |
| 急に宿泊が必要になることがある(家族の急用・病気等) | 小規模多機能型居宅介護 | 定額制で宿泊も通いも訪問も含まれる |
| 独居で、昼夜を問わず何かあったときに対応してほしい | 小規模多機能型居宅介護 | 訪問機能で夜間・緊急時の対応が可能(体制による) |
| 現在の担当ケアマネジャーとの関係を続けたい | 認知症対応型通所介護 | 小規模多機能に切り替えると担当ケアマネが変わる |
| 月々の費用を一定に抑えたい(使うほど費用が増えるのを避けたい) | 小規模多機能型居宅介護 | 月額定額制のため利用回数が増えても費用は変わらない |
利用者・家族にとっては、現在の生活スタイル・利用中のサービスとの相性・費用の仕組みをもとに選択することが実際的です。どちらのサービスが「良い・悪い」ではなく、その時点の状態と生活環境に合った選択かどうかが重要です。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 介護保険法第78条の2(地域密着型サービスの指定)
この記事は2026年11月時点の制度に基づいています。報酬・基準は改定されることがありますので、最新の告示を確認してください。
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