小規模多機能型居宅介護の宿泊サービスは、定員9人以下の少人数で運営されます。家族の急な事情への対応・認知症利用者のレスパイト・夜間の見守りなど、宿泊の活用方法は多様です。この記事では宿泊の制度上の位置づけ・算定できる加算・実務上の使い方・宿泊機能が収支に与える影響を整理します。
宿泊サービスの制度上の位置づけ
小規模多機能型居宅介護の宿泊サービスは、通いの延長として利用者が事業所に宿泊するサービスです。ショートステイ(短期入所生活介護)と異なり、宿泊単独の利用はできません。小規模多機能型居宅介護に登録した利用者が、通い・訪問と組み合わせて使うものです。
| 項目 | 小規模多機能の宿泊 | 短期入所生活介護(ショートステイ) |
|---|---|---|
| 利用できる人 | 小規模多機能型居宅介護の登録者のみ | 在宅で生活する要介護者(登録不要) |
| 費用 | 月額定額の中に含まれる(宿泊費は別途) | 利用日数に応じて課金 |
| 同一スタッフとの連続性 | 通い・訪問と同じスタッフが担当 | ショートステイ先は別事業所のため担当者が変わる |
| 定員 | 9人以下 | 施設規模による(数十人規模のものも多い) |
| 他のサービスとの組み合わせ | 小規模多機能の通い・訪問との一体運営 | 他の居宅サービスと組み合わせ可 |
宿泊の定員と設備基準
宿泊の定員は「登録定員の3分の1以下かつ9人以下」と省令で定められています。登録定員が最大29人の場合、宿泊定員の上限は9人です。
宿泊室は1人部屋が原則で、床面積7.43㎡以上が必要です(収納スペースを除く)。認知症の利用者が安心して過ごせる環境として、個室の確保は重要です。
宿泊を活用するケース
宿泊サービスが特に有効なケースを整理します。
| ケース | 活用の内容 |
|---|---|
| 家族の急な用事・入院 | 主介護者が不在になる日に臨時で宿泊を手配できる |
| 認知症利用者の夜間徘徊・不眠 | 定期的に宿泊を使うことで家族の夜間介護負担を軽減 |
| 退院直後の状態が不安定な時期 | 自宅での生活に戻る前の経過観察として宿泊を活用 |
| 家族のレスパイト(介護からの一時休息) | 月に数日まとめて宿泊を利用することで家族が休める |
| ターミナルケア期 | 看取りの段階で宿泊・訪問を組み合わせた24時間対応 |
宿泊時に算定できる加算
宿泊に関連して算定できる主な加算は以下のとおりです。
| 加算の種類 | 単位数 | 概要 |
|---|---|---|
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 200単位/日(7日間限度) | BPSDが急に悪化した利用者を緊急に受け入れた場合 |
| 看護職員配置加算(Ⅰ〜Ⅲ) | 月800〜1,171単位(事業所全体) | 夜間対応含む看護体制の強化 |
「認知症行動・心理症状緊急対応加算」は、BPSDが急に悪化した利用者を緊急に受け入れた場合に1日200単位・7日間を限度として算定できます。夜間の緊急宿泊に対応できる体制を整えておくことで、地域のニーズに応えながら加算収入も確保できます。
宿泊の夜間体制:夜勤スタッフの確保が課題
宿泊サービスを提供するには、夜間に宿泊者の安全を確保するスタッフの配置が必要です。省令では、宿泊利用者がいる夜間に少なくとも1名以上のスタッフが事業所内に宿泊または夜勤することが求められます。
夜間スタッフの確保は、小規模多機能型居宅介護の運営上の主要な課題のひとつです。
- 夜勤手当の設定による人件費の増加
- 夜勤ができるスタッフの採用・定着
- 宿泊利用者がゼロの日でも夜勤スタッフを配置するコスト
宿泊定員9人をフルに活用できれば夜勤コストは分散しますが、宿泊利用者が少ない日は夜勤コストが重くなります。宿泊の利用率と夜勤コストのバランスが収支を左右するため、開業計画段階での試算が重要です。
宿泊が収支に与える影響
宿泊サービスの収支への影響は、以下のように整理できます。
| 項目 | 宿泊あり(夜間体制あり) | 宿泊なし(通いのみ) |
|---|---|---|
| 夜勤スタッフの人件費 | 発生する(月30万〜60万円程度) | 発生しない |
| 宿泊費収入(食費込み) | 1泊3,000〜5,000円程度が別途収入 | なし |
| 緊急対応加算の可能性 | 算定可能 | 算定不可 |
| 利用者・家族の評価 | 急な対応ができる点で信頼を得やすい | 夜間の急変・急な宿泊ニーズに対応不可 |
宿泊の「宿泊費」は月額定額の外の別途費用です。1泊1,000〜2,000円(食費別)程度が多いですが、事業所の設定によります。宿泊利用が活発であれば、夜勤コストを宿泊費収入で一定程度補うことができます。
宿泊機能なしで開業することも可能か
省令上、小規模多機能型居宅介護は宿泊機能を持つことが前提ですが、実態として宿泊利用がほとんどない事業所もあります。夜勤スタッフの確保が難しい地域では、宿泊利用を受け付けつつも利用頻度を管理しながら運営するケースがあります。宿泊機能を「なし」で運営することは制度上認められていません。
小規模多機能型居宅介護の宿泊コストを含めた収支計画の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号・令和6年改定後)
この記事は2026年11月時点の法令・告示に基づいています。
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