小規模多機能型居宅介護の令和9年度改定の動向。2040年問題と在宅支援の強化。

小規模多機能型居宅介護の令和9年度改定の動向。2040年問題と在宅支援の強化。 介護

次の介護報酬改定は令和9年(2027年)度です。小規模多機能型居宅介護の開業を検討している場合、令和9年度改定の方向性を事前に把握しておくことは、事業計画の精度を高める上で重要です。改定の動向を整理します。

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令和9年(2027年)度介護報酬改定の概要

介護報酬改定は原則として3年に1度行われます。直近の改定は令和6年(2024年)4月で、次回は令和9年(2027年)4月が予定されています。改定の内容は通常、前年(令和8年・2026年度)末ごろに告示されます。

令和9年度改定は、第10期介護保険事業計画(2027〜2029年度)の開始とも重なります。第10期の計画策定では、高齢者数のピーク(団塊の世代が後期高齢者に達した後の2040年ごろ)を見越した対応が焦点の一つになると見込まれています。

小規模多機能に関連する政策の動向

令和6年度の報酬改定では、小規模多機能型居宅介護は基本報酬の引き上げ・加算の整理・BCP義務化・ハラスメント防止義務化など複数の変更がありました。令和9年度改定に向けた政策議論では、次のような方向性が見込まれています(2026年11月時点での情報であり、確定した内容ではありません)。

令和9年度改定で議論が見込まれる論点(2026年11月時点の見通し)
論点 内容の方向性
在宅支援の強化 2040年問題に向けて在宅系サービスの充実を求める方向。小規模多機能の役割強化が引き続き課題
人材確保と処遇改善 介護職員の処遇改善加算が引き続き重要な政策課題。加算の整理・簡素化の議論が続く見込み
科学的介護(LIFE)の推進 LIFE加算の普及・活用が引き続き推進される見込み。入力の簡素化・フィードバックの充実が議論される
認知症対応の強化 認知症高齢者の増加に対応した認知症ケアの質向上が政策の柱。認知症加算の要件の見直しも視野に
地域包括ケアの推進 複合型サービス(小規模多機能+訪問看護)等の複合化・連携の推進が継続課題

複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)との関係

小規模多機能型居宅介護に訪問看護を組み合わせた「複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)」は、医療依存度の高い在宅高齢者に対応できるサービスとして注目されています。

令和9年度改定では、複合型サービスの整備推進・参入要件の見直し等が議論される可能性があります。小規模多機能の開業を検討する際に、将来的な複合型サービスへの移行・展開を視野に入れることも一つの選択肢です。

定員・規模の見直しの議論

小規模多機能の登録定員は現在29人です。この定員上限について、令和9年度改定に向けた議論の中で見直しが検討される可能性があります。定員の変更があれば、事業の規模・採算性・運営モデルに大きく影響します。

現時点(2026年11月)では具体的な変更案は公表されていません。改定の動向は厚生労働省の「社会保障審議会介護給付費分科会」の審議で公開されるため、分科会の議事録を定期的に確認することをお勧めします。

報酬改定と事業計画書の修正の考え方

収支計画・事業計画書を作成する場合、令和9年度改定後の報酬を正確に予測することは難しいです。収支計画での対応方法として次のアプローチがあります。

  • 令和6年度現行の報酬で計算する:現行の単位数・加算率を使って試算し、改定後の変化は別途シナリオ分析として用意する
  • 保守的な試算で計画を立てる:基本報酬が±3〜5%変動した場合の損益分岐点の変化を確認し、余裕を持った資金計画を立てる
  • 改定直前に計画を見直す:開業準備が改定の発表(令和8年末ごろ)に近い場合、改定後の告示が出てから計画を修正する

2040年問題と小規模多機能の位置づけ

2040年ごろに向けて、85歳以上の超高齢者数・認知症有病者数がピークを迎える見込みです。この「2040年問題」への対応として、在宅で最期まで生活できる体制の整備が社会的な課題になっています。

小規模多機能は「通い・泊まり・訪問」の一体的なサービスを通じて在宅生活を支える機能を持ちます。2040年問題を背景に、小規模多機能の役割は今後も重要であり続けると見込まれています。介護報酬改定でも、在宅系サービスの充実という方向性は基本政策として維持される可能性が高いです。

報酬改定の情報収集の方法

令和9年度改定に向けた動向を把握するためには、次の情報源を活用します。

  • 厚生労働省ウェブサイト:社会保障審議会介護給付費分科会の議事録・資料が公開されています(令和7〜8年にかけて議論が本格化)
  • 都道府県・市区町村の事業者向け情報:改定が確定した後、都道府県・市区町村から事業者向けの説明会・資料が提供されます
  • 介護事業者団体のニュースレター・研修:全国老人福祉施設協議会・日本認知症グループホーム協会等の団体が改定情報を発信します

過去の改定から見る令和9年度の傾向

令和9年度改定を予測する上で、令和3年・令和6年の改定の傾向を振り返ることが参考になります。

過去の改定の主な傾向(令和3・6年度)
改定年度 小規模多機能に関する主な変更内容
令和3年度(2021年) LIFE活用の推進(科学的介護推進体制加算の新設)・処遇改善加算の整理・複合型サービスの評価強化
令和6年度(2024年) 基本報酬の引き上げ・BCP義務化・ハラスメント防止義務化・協力医療機関の義務化・LIFE加算の拡充

令和6年度の改定では、2つの方向性が明確でした。一つは「基本報酬の引き上げによる経営改善の後押し」、もう一つは「義務化項目の追加による質の担保」です。令和9年度改定でも同様の方向性が継続する可能性があります。

開業を検討する事業者が今からできる準備

令和9年度改定の内容はまだ確定していませんが、開業を検討している事業者が今から準備できることは次の通りです。

  1. 現行の令和6年度改定の内容を完全に把握する:BCP・ハラスメント防止・協力医療機関の義務等、令和6年度に義務化された項目への対応を先に固める
  2. LIFE(科学的介護)の導入準備をする:令和9年度でもLIFE活用がさらに推進される見込みのため、LIFEに対応したICTソフトの導入・操作習得を早めに進める
  3. 処遇改善加算の最上位区分(Ⅰ)を算定できる体制を整える:処遇改善加算は収入の大きな底上げになる。要件を確認して算定可能な体制を開業時から構築する
  4. 社会保障審議会の動向を定期的に確認する:令和7〜8年ごろに議論が本格化するため、年に数回は分科会の資料を確認する習慣を作る

令和9年度改定が事業計画に与える影響

事業計画(収支計画書・融資申請書)に令和9年度改定を盛り込む場合は、「不確定要素として明記した上でシナリオ分析を加える」形が適切です。融資審査担当者・行政への申請においても、「改定前提の楽観的な計画」より「現行報酬での収支が成立する計画」の方が評価される傾向があります。

開業が令和9年度(2027年4月)以降になる場合は、改定の告示(令和8年末ごろ予定)を確認してから収支計画を最終調整することをお勧めします。

人材確保政策の行方と令和9年度改定

介護人材の確保は、令和9年度改定でも引き続き政策の重心に置かれる見込みです。特に2040年に向けて、介護職員の需要がさらに高まることが予測されており、処遇改善・働き方改革・テクノロジー(介護ロボット・IoT)の活用促進が政策として推進される方向です。

処遇改善加算については、令和6年度改定で一本化・整理が行われましたが、令和9年度改定でもさらなる整理・要件の見直しが議論される可能性があります。現行の算定要件を満たしている事業所には、改定後も引き続き算定できるよう要件を維持することが重要です。

ICT・テクノロジーの活用推進

介護業界では、ICT・テクノロジーを活用した業務効率化が政策として推進されています。令和9年度改定でも、次のような方向性が継続・強化される見込みです。

  • 介護記録のICT化:紙の記録からデジタル記録への移行促進
  • LIFEとの連携強化:科学的介護推進体制加算の要件・フィードバック活用の充実
  • 介護ロボット・センサーの活用:見守りセンサー・排泄予測機器等の導入に対する補助金・加算の継続
  • テレヘルス(遠隔医療)との連携:訪問看護・医療連携におけるICTの活用

開業時からICTを積極的に活用することで、職員の業務負担を軽減しながら記録の質を向上させることができます。LIFE対応の介護記録ソフトの導入は、令和9年度改定後の加算要件の変化にも対応しやすくなります。

小規模多機能の開業を検討する事業者が令和9年度改定を待つかどうか

「令和9年度改定の結果を見てから開業するかどうか判断したい」という考え方もありますが、改定の告示が出るのは令和8年(2026年)末ごろです。告示が出てから準備・指定申請・開業準備をすると、実際に開業できるのは早くて令和9年後半〜令和10年前後になる可能性があります。

一方で、令和6年度改定では基本報酬が引き上げられた事例があります。令和9年度改定でも基本報酬の変動がある場合、改定後に開業した方が収支が有利になる可能性もあります。

改定待ちのリスクとしては、「改定の詳細が出るまで準備が止まる」「改定内容が期待より小さい場合に計画が遅れる」等があります。現行の令和6年度報酬でも収支が成立する計画を立て、改定があれば上乗せとして捉える姿勢が、開業準備には現実的です。

令和9年度改定後の収支変動に備えた準備

令和9年度改定で基本報酬の変動・加算要件の見直しがあった場合、開業後の事業所には次のような影響が出る可能性があります。

改定後に想定される主な影響と対応策
想定されるケース 対応の考え方
基本報酬が引き上げられた場合 月次収入の増加。既存計画より収支が有利になる。追加の算定要件が課される場合は確認が必要
加算要件が厳格化された場合 算定していた加算が取れなくなる可能性。要件変更の告示が出たら速やかに対応を確認する
新たな義務項目が追加された場合 BCP・ハラスメント防止等のように新たな義務化が行われる可能性がある。体制・書類整備で対応する
新加算が創設された場合 算定可能な加算が増える可能性。新加算の要件を確認し、対応できる場合は早期算定開始を目指す

改定は事業所のコントロール外の要因ですが、情報を早期に取得して対応の準備をすることで、改定後のリスクを最小化することができます。都道府県・事業者団体の説明会への参加を習慣化することが有効です。

改定情報を実務に活かすための習慣

介護報酬改定の情報は量が多く、すべてを把握するのは難しいです。小規模多機能の実務者・開業準備中の事業者が、改定情報を効率的に把握するための習慣として次のことをお勧めします。

  • 年に2〜3回、厚生労働省の分科会資料を確認する:特に令和7〜8年度にかけて議論が本格化するため、半年に1度程度のペースで確認することで大きな方向性を把握できる
  • 都道府県・市区町村の事業者向けメルマガ・通知を受け取る:自治体が発信する通知・説明会情報を見逃さない仕組みを作る
  • 事業者団体・業界紙の情報を定期的にチェックする:WAM NET(福祉・医療機構)や介護専門誌の改定関連記事を活用する

改定対応は情報収集が勝負です。告示が出てから慌てて対応するより、議論の動向を早期に把握して体制整備・スタッフへの周知を計画的に進められる状態が理想です。

参考・出典

  • 社会保障審議会介護給付費分科会(厚生労働省):審議資料は厚生労働省ウェブサイトで公開
  • 令和6年度介護報酬改定の概要(厚生労働省)

この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。令和9年度改定の内容は確定しておらず、今後変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省の公表資料でご確認ください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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