泡消火薬剤の種類・pH・比重などの規格数値は、消防設備士 甲種第2類(甲2)の試験で「構造・機能及び工事整備(規格)」として出題されます。薬剤の規格は「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令」(以下「薬剤規格省令」)に定められており、種類ごとの性状・試験方法・容器の表示事項が問われます。pHは6.0〜8.5、比重(耐アルコール型以外の水成膜泡)は20℃で1.000以上といった数値を正確に覚えることが合格に直結します。
泡消火薬剤の種類
薬剤規格省令第2条に基づき、泡消火薬剤は次の5種に分類されます。
| 種別 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| たんぱく泡消火薬剤 | 動物性たんぱく質を加水分解した薬剤。安定した泡を形成 | 石油貯蔵タンク等 |
| フッ素たんぱく泡消火薬剤 | たんぱく泡にフッ素系界面活性剤を加えた薬剤。流動性が高い | 石油タンク・飛行機格納庫 |
| 合成界面活性剤泡消火薬剤 | 界面活性剤を主成分とした薬剤。高膨脹比泡(高発泡)に使用 | 地下駐車場(高発泡全域放出) |
| 水成膜泡消火薬剤 | フッ素系界面活性剤を含み、燃料面に薄い水膜を形成する薬剤 | 飛行機格納庫・駐車場 |
| 耐アルコール泡消火薬剤 | アルコール類など水溶性の可燃性液体に対応した薬剤 | 化学工場・醸造所 |
出典:泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令第2条(昭和50年自治省令第26号)。
試験では「たんぱく泡と水成膜泡の違い」「高発泡に使われる薬剤の種類(合成界面活性剤)」が問われます。また、アルコール類(水溶性可燃物)には耐アルコール泡消火薬剤が必要であり、通常の水成膜泡では泡が崩壊してしまうため使えません。
泡消火薬剤のpH(水素イオン濃度)
薬剤規格省令の性状試験では、泡消火薬剤の20℃におけるpHの範囲が定められています。試験で最も頻出の数値です。
| 種別 | pH(20℃) |
|---|---|
| たんぱく泡消火薬剤 | 6.0〜8.5 |
| フッ素たんぱく泡消火薬剤 | 6.0〜8.5 |
| 合成界面活性剤泡消火薬剤 | 6.0〜8.5 |
| 水成膜泡消火薬剤 | 6.0〜8.5 |
| 耐アルコール泡消火薬剤 | 規格省令の規定による(省令で確認) |
pHの範囲(6.0〜8.5)は弱酸性〜弱アルカリ性です。この範囲から外れると、配管の腐食・劣化が進みやすくなります。誤りやすい数値として「6.5〜8.5」「6.0〜9.0」などが選択肢に出ますが、正解は6.0〜8.5です。出典:薬剤規格省令(e-Govで最新版を確認してください)。
比重
泡消火薬剤の比重(20℃)の基準は薬剤の種類によって異なります。代表的な数値を押さえます。
- たんぱく泡消火薬剤(3%型):1.01以上(薬剤規格省令の性状基準)
- 水成膜泡消火薬剤(3%型・6%型):1.000以上
比重が1.0以上ということは「水より重い(沈む)」ことを意味します。試験では「水より軽い」「0.8〜1.0」などの誤った選択肢が並ぶことがあります。正解は1.0以上(水と同等またはそれ以上)です。
引火点
泡消火薬剤は不燃性または難燃性でなければなりません。引火点の基準は種別によって異なりますが、多くの薬剤は「引火点なし」または「60℃以上」です。引火性を持つ薬剤は規格に合格しないため、市場に出ている製品はいずれも引火点の基準をクリアしています。
腐食性
泡消火薬剤は機器・配管への腐食性が低いことが求められます。薬剤規格省令では、標準試験片(鋼板等)を薬剤の希釈液(使用濃度)に浸漬した場合の腐食量を測定する試験が定められています。腐食量が基準値以下でなければ合格しません。
沈澱量
薬剤を一定時間静置したあとの沈澱物の量が規定値以下であることが基準です。沈澱物が多いと、薬剤が配管内で詰まる原因になります。たんぱく系の薬剤は沈澱が出やすいため、定期的な交換・点検が必要です。
流動点
泡消火薬剤の流動点(低温でも流動できる最低温度)は、使用される環境温度を下回ることが必要です。寒冷地の駐車場・格納庫では低温時でも正常に作動できる薬剤を選定します。流動点が高すぎると冬季に薬剤が固まり、設備が動作しないリスクがあります。
粘度
薬剤の粘度はプロポーショナー(薬剤混合装置)での混合比率に影響します。粘度が高すぎると配管内の流動が悪くなり、設計どおりの混合比が得られなくなります。薬剤規格省令では粘度の試験方法と基準値が定められています。
容器と表示事項
薬剤規格省令第7条・第8条では、泡消火薬剤を充填する容器の要件と、容器に表示しなければならない事項を定めています。
容器の要件
- 容量に応じた強度・耐腐食性を持つ素材(ポリエチレン・金属等)
- 薬剤の漏えいを防ぐ密封構造
- 外部からの衝撃・日光による劣化に耐える設計
表示事項
- 製造業者名または商標
- 品名・種別(たんぱく泡・水成膜泡等)
- 使用濃度(3%・6%等)
- 容量(L)
- 製造年月または製造年
- 取扱い上の注意事項
試験では「容器の表示事項として正しいもの」「容器に表示が不要なもの」の形式で問われます。「取扱い上の注意事項」は表示が必要な事項のひとつです。
混合比(使用濃度)と種類
泡消火薬剤は水と混合して使います。混合比は薬剤の種類によって異なります。
| 使用濃度 | 代表的な薬剤の種別 |
|---|---|
| 1% | 水成膜泡消火薬剤(高性能型) |
| 3% | 水成膜泡・フッ素たんぱく泡・合成界面活性剤泡等 |
| 6% | たんぱく泡・合成界面活性剤泡等 |
混合比が低い(1%・3%)薬剤は貯蔵量が少なくて済む反面、高性能を維持するためのコストが高い傾向があります。6%型は1缶あたりの貯蔵量が多く必要です。プロポーショナー(混合装置)は設計時の混合比に合わせて選定します。
薬剤の年次点検と交換
定期点検(総合点検)では薬剤の性状確認(pH・比重・外観)が行われます。基準を超えた劣化が認められた場合は交換が必要です。たんぱく系薬剤は経年で沈澱・変質しやすく、5〜10年を目安に交換するケースが多いです。水成膜泡は比較的安定していますが、製造業者の推奨期間を確認することを推奨します。
泡消火薬剤の規格試験の流れ
泡消火薬剤として市場に出るためには、薬剤規格省令に定める試験に合格し、検定に通過した製品でなければなりません。試験項目のうち試験官が実施する主要なものは次のとおりです。
外観試験
薬剤の色・透明度・沈澱の有無を確認します。著しい変色・異物の混入がある場合は不合格です。
pH試験
20℃に調整した薬剤のpHをpHメーターで測定します。規定値(6.0〜8.5)の範囲内にあることを確認します。
比重試験
20℃の薬剤の比重(密度)を比重計またはピクノメーターで測定します。規定値(たんぱく泡1.01以上・水成膜泡1.000以上等)以上であることを確認します。
腐食試験
標準試験片(鋼・アルミ等)を薬剤の希釈液(使用濃度)に一定時間浸漬し、腐食量(㎎/cm²)を測定します。腐食量が規定値以下であることを確認します。
消火試験
規定の装置を使い、試験用可燃性液体への消火性能を確認します。規定時間内に消火できることが基準です。
試験に出る「薬剤規格」の頻出ポイント
甲2の試験で薬剤規格から出題されるポイントをまとめます。穴埋め形式・正誤問題の両方に対応できるよう確認してください。
| 項目 | 正しい値・内容 | 誤りやすい選択肢の例 |
|---|---|---|
| pH(20℃) | 6.0〜8.5 | 6.5〜8.5・6.0〜9.0 |
| 比重(水成膜・3%型) | 1.000以上(水より重い・同等以上) | 水より軽い・0.8〜1.0 |
| アルコール類への対応薬剤 | 耐アルコール泡消火薬剤 | 水成膜泡・たんぱく泡 |
| 高発泡に使われる薬剤 | 合成界面活性剤泡消火薬剤 | たんぱく泡・水成膜泡 |
| 容器の表示事項(必須) | 製造業者名・品名・種別・使用濃度・容量・製造年 | 製造場所・保管期限(不要) |
薬剤の保管と劣化
泡消火薬剤は適切な条件で保管しないと性能が劣化します。保管上の注意点を整理します。
- 直射日光・高温・凍結を避ける(流動点以上の温度で保管)
- 容器は密封状態を維持する(空気に触れると酸化・変質が進む)
- たんぱく系薬剤は合成系より劣化が早い傾向がある(定期的な性状確認・交換が必要)
- 定期点検(機器点検6か月・総合点検1年)で性状確認(外観・pH・比重)を実施する
劣化した薬剤は泡の膨脹比が低下したり消火性能が損なわれたりします。消防法では定期的な点検が義務付けられており(消防法第17条の3の3)、薬剤の性状確認はその一環です。
薬剤貯蔵量の計算
泡消火設備の設計では、必要な薬剤貯蔵量を算出します。基本的な計算の考え方を示します。
薬剤貯蔵量(L)= 水溶液の必要量(L)× 薬剤の使用濃度(%)÷ 100
例:3%型薬剤・水溶液1,000L必要な場合
薬剤量 = 1,000 × 3 ÷ 100 = 30L
水溶液の必要量はフォームヘッドの個数・放出量・放出時間から算出します(消防法施行規則第15条・第16条)。貯蔵量の計算は試験に出ることがあります。
薬剤の型式承認と検定
泡消火薬剤は消防法の検定制度の対象です(消防法第21条の2)。型式承認を受けた製品でなければ設置できません。検定では薬剤規格省令の各性能試験をクリアすることが必要です。市販の泡消火薬剤には型式番号が表示されており、承認を受けた製品であることを確認できます。
試験で間違えやすい「薬剤規格の落とし穴」
薬剤規格は数値が細かく、試験で紛らわしい選択肢が出やすい科目です。ここでは間違えやすいポイントを絞って解説します。
「耐アルコール型」と「水成膜泡」の混同
アルコール類(メタノール・エタノール等)の液体火災には「耐アルコール泡消火薬剤」が必要です。水成膜泡はアルコールに触れると泡が崩壊するため使えません。試験では「水成膜泡で対応できる」という誤った選択肢が出ます。アルコールには耐アルコール型が必要と明確に覚えてください。
「高発泡」と「合成界面活性剤」の対応
高発泡(膨脹比80以上)に使う薬剤は合成界面活性剤泡消火薬剤です。たんぱく泡や水成膜泡は低発泡向けで、高発泡には適しません。「地下駐車場の全域放出方式→高発泡→合成界面活性剤」という連想で覚えると整理しやすいです。
比重「1.0以上」の意味
比重1.0以上は「水と同じかそれより重い」ことを意味します。泡消火薬剤は基本的に水より重い(または同等)です。「水より軽い・0.8〜1.0」という選択肢は間違いです。比重の基準は薬剤の種別と濃度によって若干差がありますが、「1.0以上」という基本を押さえておくと正解できます。
pH 6.0〜8.5は弱酸性〜弱アルカリ性
pH7.0が中性です。6.0は弱酸性側・8.5は弱アルカリ性側です。強酸性・強アルカリ性になると配管を腐食するため、この範囲内に収まるよう規格で定められています。「pH5.0〜9.0」「pH6.5〜8.5」などの選択肢は誤りです。
薬剤規格の学習のまとめ
甲2の試験で薬剤規格から出題される問題は「構造・機能及び工事整備(機械)25問」の中の薬剤規格パートから6問程度です。数値の暗記と「どの種類に何が使えるか」の対応関係を覚えることが得点の近道です。試験前に次の5点を確認してください。
- pH:6.0〜8.5(弱酸性〜弱アルカリ性)
- 比重:1.0以上(水より重い・同等以上)
- アルコール類:耐アルコール型が必要(水成膜泡では不可)
- 高発泡に使う薬剤:合成界面活性剤泡消火薬剤
- 容器の表示:製造業者名・品名・種別・使用濃度・容量・製造年(必須)
薬剤規格省令は6条から構成されており、出題は主に第1条(種類)・第2条(性状)・第3条(容器)・第4条〜第8条(試験方法・表示事項)の範囲からです。数値ドリル形式で繰り返すと確実に得点できる科目です。
薬剤の選定は防護対象物によって変わります。駐車場や航空機格納庫のような油脂系可燃物には水成膜泡薬剤(AFFF)が広く使われます。アルコール類など水溶性危険物には耐アルコール型(AR-AFFF)を使います。試験ではこの組み合わせを問う問題も出るため、薬剤種別と適用対象をセットで覚えておくことが重要です。また、薬剤の保管期間・交換基準(製造後10年を目安とするものが多い)についても出題されることがあります。使用期限・品質確認の方法まで理解しておくと、実務でも役立つ知識が身につきます。
薬剤規格の問題練習は消防設備士 甲種第2類 AI問題集で。筆記106問は無料で解けます。
消防設備士全般の情報は消防設備士の問題集・試験対策(5類横断)をご覧ください。
出典:泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和50年自治省令第26号)・消防法第21条の2・消防法施行規則第15条・第16条・第31条の6。


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