泡消火設備の水源水量計算。フォームヘッド75L/min・放射時間10分・薬剤量の求め方

泡消火設備の水源水量は、消防法施行規則第15条・第16条・第18条に定める計算式で求めます。消防設備士 甲種第2類(甲2)の筆記(構造機能)では、「必要水量の計算式」「フォームヘッドの必要流量」「放射時間」が出題されます。正確に覚えて計算問題を確実に得点しましょう。

水源水量の計算の考え方

泡消火設備の水源には、消火に必要な薬剤水溶液を一定時間放出し続けられるだけの水量が必要です。必要水量の計算は「1ヘッドあたりの放射量 × 同時開放ヘッド数 × 放射継続時間」が基本です。

フォームヘッドの放射量基準

施行規則第15条に基づくフォームヘッドの放射量基準を整理します。

フォームヘッドの種類 放射量(設計流量)
標準型フォームヘッド 75L/min以上
高発泡用フォームヘッド(高発泡ヘッド) 設計書の規定による

標準型(低発泡)フォームヘッドの1個あたりの設計放射量「75L/min以上」は頻出数値です。

同時開放ヘッド数

水源水量の計算に使う同時開放ヘッド数は、防護区画(一斉開放弁1個が担当する区画)内のフォームヘッドの全数です。一斉開放弁が開くと、その区画内の全ヘッドから同時に放出が始まるためです。

例:1区画に12個のフォームヘッドがある場合、同時開放ヘッド数は12個。

複数の防護区画がある場合、最大の区画(ヘッド数が最も多い区画)を基準に計算します。

放射継続時間

泡消火設備の放射継続時間は消防法施行規則に規定があります。

設備の種類・対象 放射継続時間
固定式泡消火設備(一般) 10分以上
高発泡式(全域放出方式) 別途規定による

「10分以上」は試験の頻出数値です。「5分」「15分」が誤り選択肢として出やすいため、正しい数値を確認してください。

水源水量の計算式

標準的な泡消火設備の水源水量は次の式で計算します。

水源水量(L)= ヘッド1個の放射量(L/min) × 同時開放ヘッド数(個) × 放射継続時間(min)

計算例

次の条件で水源水量を求めます。

  • フォームヘッド1個の放射量:75 L/min
  • 同時開放ヘッド数:12個
  • 放射継続時間:10分

水源水量 = 75 × 12 × 10 = 9,000 L(9 m³)

この計算式と数値の当てはめは、試験の構造機能(筆記)で直接問われます。

薬剤タンクの容量計算

水源水量とは別に、泡消火薬剤の必要量も計算します。薬剤量は「薬剤の使用濃度(%)」と「水源水量」から求めます。

薬剤量(L)= 水源水量(L) × 使用濃度(%) ÷ 100

計算例

水源水量9,000L・薬剤使用濃度3%の場合:

薬剤量 = 9,000 × 3 ÷ 100 = 270 L

薬剤タンクにはこの量以上の薬剤が必要です。

なお、使用濃度(3%・6%等)は薬剤の種類と対象危険物によって異なります。水成膜泡薬剤(AFFF)は一般に3%、たんぱく泡薬剤は6%が代表的な使用濃度です。

ポンプの吐出量・揚程との関係

水源水量の計算から、ポンプが必要とする流量(吐出量)も求められます。

必要吐出量(L/min)= ヘッド1個の放射量 × 同時開放ヘッド数

先ほどの例では:75 × 12 = 900 L/min がポンプの必要吐出量です。ポンプの揚程(圧力)は配管の摩擦損失・ヘッドの放射圧力・高さ(静水頭)を合算して決定します。甲2の試験では「ポンプの吐出量の計算式」「揚程の概念」が問われることがあります。

試験での出題ポイント

水源水量・ポンプ計算に関して、甲2の試験で特に確認しておくべき事項をまとめます。

  • フォームヘッド1個の放射量:75 L/min以上(「50L」「100L」が誤り選択肢)
  • 放射継続時間:10分以上(「5分」「15分」が誤り選択肢)
  • 水源水量の計算式:放射量 × ヘッド数 × 時間
  • 同時開放ヘッド数:一斉開放弁1個が担う区画内の全ヘッド数
  • 薬剤量計算:水源水量 × 使用濃度(%) ÷ 100

数値を丸暗記するだけでなく、計算の流れを理解しておくと、数値が変わった問題でも対応できます。

非常電源による継続時間保証

水源水量の計算と合わせて、非常電源の容量(30分以上)も確認しておきましょう。ポンプが停電時でも30分以上動作できるよう、非常電源の容量が設計されています。放射継続時間10分間の余裕を持たせた設計です。

水源水量の計算の詳細(補正・安全率)

実際の設計では、計算値に安全率を乗じてタンク容量を決定します。試験では基本計算式と基本数値(75L/min・10分)が問われますが、実務では1.1〜1.2倍程度の安全率を乗じた余裕のある設計が一般的です。甲2の試験では安全率の具体的な数値より「基本計算ができること」が重要です。

高発泡式の水源水量

高発泡式(全域放出方式)では区画全体を泡で満たす必要があるため、区画の容積に応じた泡の量(発泡量)から逆算して水源水量を決めます。高発泡は発泡倍率が80倍以上と高く、少ない薬剤水溶液で大量の泡を作れます。区画の気積(m³)を高発泡の発泡倍率で割ると、必要な薬剤水溶液量が求まります。甲2の試験では高発泡式の計算の概念が問われることがあります。

ポンプの揚程(全揚程)の計算概要

ポンプの全揚程(H)は次の式で表します。

全揚程(H)= 実揚程(h1)+ 配管摩擦損失水頭(h2)+ フォームヘッドの放射圧力水頭(h3)

  • 実揚程(h1):水源の水面からフォームヘッドまでの高さ(m)
  • 配管摩擦損失水頭(h2):配管の摩擦で圧力が失われる分(配管長さ・径で決まる)
  • フォームヘッドの放射圧力水頭(h3):ヘッドが必要とする最低放射圧力(設計値)

甲2の試験では全揚程の式そのものより「揚程に含まれる要素はどれか」という選択問題が出ます。実揚程・摩擦損失・放射圧力の3要素を覚えておきましょう。

配管摩擦損失と管径の関係

配管が細いほど摩擦損失が大きく、ポンプに高い揚程が必要になります。逆に配管が太いと摩擦損失が小さくなりますが、コストが上がります。甲2では配管径の計算は詳細に問われませんが、「細い管は圧力損失が大きい」という基本的な概念は理解しておくと良いでしょう。

水源水量と水槽の設計

計算した水源水量に基づき、地下水槽またはタンク(受水槽)が設置されます。水槽の容量は「計算した水源水量+α(消防署の指導・安全率)」で決定します。水槽の材質は鋼板製・FRP製などが使われ、満水・減水の警報装置が設けられます。

甲2の試験では水槽の材質・警報装置の詳細より「水源水量の計算と水槽の役割」が問われます。

消火ポンプの種類と特徴

泡消火設備のポンプは渦巻きポンプ(遠心力ポンプ)が一般的です。甲2で問われるポンプの知識を整理します。

項目 内容
型式 渦巻きポンプ(遠心力式)が主流
試験の種類 締切試験・定格流量試験・最大流量試験
性能試験の基準 定格点での揚程が設計値以上
動力源 電動機(モーター)が主流・ディーゼルエンジン駆動も可
始動方式 自動起動(圧力スイッチ連動)・手動起動(制御盤ボタン)

薬剤の消費量と補充計画

泡消火薬剤は一度放出すると大量に消費されます。放出後は速やかに薬剤を補充する必要があります。薬剤タンクの容量は計算値以上を確保し、補充用の薬剤(予備薬剤)をストックしておくことが推奨されます。

甲2の試験では薬剤補充の手順より「薬剤量の計算」が中心です。薬剤量 = 水源水量 × 使用濃度の式を確実に使えるようにしましょう。

ポンプの性能試験の詳細と水量の関係

ポンプの性能は3段階の試験で確認します。各試験と水量計算の関係を整理します。

試験の種類 内容 計算との関係
締切試験 吐出側弁を全閉にして運転する。流量はゼロ・揚程は最大 締切揚程が設計値以上であることを確認
定格流量試験 設計流量(必要吐出量)で運転する 定格点の揚程が設計値以上であることを確認
最大流量試験 吐出側弁を全開にして運転する 最大流量時の揚程が設計の下限以上であることを確認

甲2の試験では試験の種類と目的が問われます。「締切試験でポンプが過熱・振動なく運転できることを確認する」「定格流量試験で設計どおりの揚程が出ることを確認する」という各試験の目的を覚えておきましょう。

水源水量の計算で間違えやすいポイント

筆記試験での計算問題で間違えやすいポイントをまとめます。

  • 放射量の単位:「75 L/min」は1分間の放射量。「75 L/h」(時間)と混同しない
  • 放射継続時間の単位:「10分」は分。「10秒」「10時間」は誤り
  • 同時開放ヘッド数:問題文に複数区画がある場合は「最大の区画のヘッド数」を使う
  • 薬剤量の計算:パーセント(%)を忘れて100を掛けてしまうミスが多い

単位の確認と計算式の正確な当てはめが合否を分けます。試験では式を書いてから計算する習慣を付けましょう。

異なる使用濃度と水源水量の変化

薬剤の使用濃度が変わると、同じ水源水量でも必要薬剤量が変わります。たんぱく泡薬剤(6%)と水成膜泡薬剤(3%)では必要薬剤量が2倍異なります。水源水量は薬剤の種類・濃度によらず「ヘッド数×放射量×時間」で計算しますが、薬剤タンクのサイズは使用濃度によって変わります。甲2では薬剤量計算も出題されるため、水源水量と薬剤量の両方を計算できるようにしましょう。

水源水量の計算を試験本番で素早く解くコツ

試験本番では計算問題に使える時間が限られます。水源水量計算を素早く正確に解くためのコツを整理します。

  • 式を先に書く:「放射量×ヘッド数×時間」と先に書いてから数を入れることで、式の組み立てミスを防ぐ
  • 単位を揃える:L/minとminを掛けてLになることを確認してから計算する
  • 同時開放ヘッド数の確認:複数区画の問題は「最大区画」を選ぶ。問題文をよく読む
  • 薬剤量計算のパーセントミス:「×3÷100」ではなく「×0.03」と変換してから計算すると速い

甲2の試験時間(筆記1時間45分・実技1時間45分)は余裕があるため、焦らず確実に計算することが合格への近道です。計算ミスがないか数値を代入して確認する習慣をつけましょう。

水源水量のまとめ:試験前に確認する数値一覧

水源水量計算に関する甲2試験の頻出数値を一覧にまとめます。

項目 数値・規定 根拠
フォームヘッド1個の放射量 75 L/min以上 施行規則第15条
放射継続時間 10分以上 施行規則第16条
水源水量の計算式 放射量×ヘッド数×時間 施行規則第18条
薬剤量の計算式 水源水量×使用濃度÷100 薬剤規格省令
非常電源の容量 30分以上 施行規則第12条

この表を暗記してから問題集に取り組むと、計算問題の正答率が大きく上がります。試験当日の直前確認用にも使えます。

実務での水量計算の応用

甲2取得後の設計・工事業務では、水源水量の計算が建物設計の早い段階で行われます。建築設計者から「このフロアで何個ヘッドが必要か・タンク容量はいくらか」という質問に答えられる技術者が現場では求められます。試験で学ぶ計算式・数値は実務でも同じものを使います。試験合格後も法令改正や新しい薬剤の登場に合わせて知識をアップデートしていく姿勢が長く活躍できる消防設備士の条件です。また、実際の現場では配管の摩擦損失や建物の高さ(静水頭)によってポンプ揚程が変わります。設計ソフトを使った自動計算も普及していますが、手計算で原理を理解していることが誤りの早期発見につながります。試験後も水源水量計算の知識は設備更新・増設時の比較検討で使えます。「現在のポンプで追加のヘッドに対応できるか」「薬剤タンクの容量を増やさずに区画を広げられるか」といった判断も、基本計算式の理解がベースになります。甲2の資格を取得して現場に出た後も、施行規則の数値が正しく頭に入っていることで、客先からの質問に自信を持って答えられます。法令改正が行われた場合は施行規則の変更点を確認し、古い数値のままにならないよう注意してください。e-Govで最新の施行規則を参照する習慣が、長く正確に業務をこなせる技術者の基本姿勢です。計算の基礎を理解した上で最新法令と照合することが、消防設備士として信頼され続ける条件です。甲2の合格後も泡消火設備の知識を定期的に見直し、現場で遭遇した疑問を一次資料で確認する姿勢を続けましょう。それが現場での信頼と、長く続けられるキャリアの基盤になります。

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消防設備士全般の情報は消防設備士の問題集・試験対策(5類横断)をご覧ください。

出典:消防法施行規則第15条・第16条・第18条・消防法施行令第13条。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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