生活介護の収入は、利用者の障害支援区分と所要時間で決まる基本報酬に、1単位あたりの単価を掛けて計算します。この「1単位あたりの単価」が、事業所の所在地によって変わります。全国を8段階の「地域区分」に分けて単価を設定しており、1単位あたり10.00円(その他)から11.22円(1級地)まで差があります。
同じ定員20人・稼働率84%の事業所でも、1級地(11.22円)とその他(10.00円)では、月収入(基本報酬のみ)に約36万円の差が生じます。年間では約432万円の差になります。開業する地域の地域区分は、収支計画を立てる前に必ず確認しておく必要があります。
この記事では、地域区分の仕組み・8段階の単価・地域区分別の収入試算・調べ方を整理します。
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地域区分は8段階。1単位の単価は10.00円から11.22円の間で変わる
生活介護の報酬は「単位数×1単位あたりの単価」で計算します。単位数は告示523(別表第6)で定められており、1単位あたりの単価は「地域区分」によって決まります。地域区分の根拠は「指定障害福祉サービス等の報酬の額の算定に関する基準に規定する厚生労働大臣が定める地域及び単位数」(告示539)です。
地域区分は1級地から7級地、およびその他の8段階に分かれています。生活介護の場合、各地域区分の1単位あたりの単価は以下のとおりです。
| 地域区分 | 割合 | 1単位あたりの単価 |
|---|---|---|
| 1級地 | 1122 | 11.22円 |
| 2級地 | 1098 | 10.98円 |
| 3級地 | 1092 | 10.92円 |
| 4級地 | 1073 | 10.73円 |
| 5級地 | 1061 | 10.61円 |
| 6級地 | 1037 | 10.37円 |
| 7級地 | 1018 | 10.18円 |
| その他 | 1000 | 10.00円 |
出典:告示539(生活介護の割合)
「割合」は1,000を基準とした比率で、1単位あたりの単価(円)は「割合÷100」で計算できます。1級地は1,122÷100=11.22円、その他は1,000÷100=10.00円です。
地域区分は市区町村ごとに告示539で定められています。すべての市区町村の対応は告示539、または各都道府県の告示で確認できます。また、収支シミュレーターでは市区町村を選択すると対応する地域区分が自動で反映されます。
1単位の単価の差は、月収入に数十万円の影響を与える
地域区分によって1単位あたりの単価が異なるため、同じ定員・稼働率・利用者構成でも月収入が変わります。以下は、定員20人・稼働率84%・所要時間6〜7時間未満・障害支援区分の構成(区分6/5/4/3/2以下=20/20/30/20/10%・平均区分4.2)での試算です(基本報酬のみ。加算・処遇改善加算は含まない)。
まず1人1日の基本報酬の加重平均を計算します。定員11〜20人・所要時間6〜7時間未満の単位数は、区分6:1,258単位、区分5:941単位、区分4:652単位、区分3:583単位、区分2以下:532単位です(根拠:告示523 別表第6の1 イ)。
加重平均:1,258×0.20 + 941×0.20 + 652×0.30 + 583×0.20 + 532×0.10 = 約805単位
月稼働日数22日、月間延べ利用者数は20人×22日×84%=約370人日です。
| 地域区分 | 1単位あたりの単価 | 月収入(基本報酬のみ) | その他との差(月) |
|---|---|---|---|
| 1級地 | 11.22円 | 約334万円 | +約36万円 |
| 2級地 | 10.98円 | 約327万円 | +約29万円 |
| 3級地 | 10.92円 | 約325万円 | +約27万円 |
| 4級地 | 10.73円 | 約319万円 | +約21万円 |
| 5級地 | 10.61円 | 約316万円 | +約18万円 |
| 6級地 | 10.37円 | 約309万円 | +約11万円 |
| 7級地 | 10.18円 | 約303万円 | +約5万円 |
| その他 | 10.00円 | 約298万円 | 基準 |
計算式:370人日 × 805単位 × 各単価。金額は1,000円未満を四捨五入した概算値です。
1級地(11.22円)とその他(10.00円)の差は月約36万円、年間では約432万円になります。地域区分が高い地域(主に大都市圏)では、その分だけ収入が増えますが、同時に物件費や人件費も高くなる傾向があるため、収支計画は地域区分も含めて総合的に確認する必要があります。
地域区分は利用者数や稼働率にかかわらず単価として機能する
地域区分の影響は、利用者数が多いほど大きくなります。月間延べ利用者数が増えるほど、1単位あたりの単価の差が積み重なるためです。
たとえば、定員20人で稼働率が70%(約308人日/月)の場合と90%(約396人日/月)の場合では、同じ地域区分の中でも月収入に差があります。さらに地域区分が異なれば、その差はさらに広がります。
地域区分による単価の差は、加算を加算した後の収入にも同様に乗ります。送迎加算(片道21単位など)や食事提供体制加算(30単位)を取得している場合、それらの単位数にも地域区分の単価が掛けられるためです。
加算や処遇改善加算を含めた収入全体での地域区分の影響は、収支シミュレーターで地域区分を変えて試算することで確認できます。
地域区分の調べ方。告示539と都道府県の資料を確認する
開業を検討している市区町村の地域区分を調べるには、主に次の方法があります。
方法1:告示539で確認する
「指定障害福祉サービス等の報酬の額の算定に関する基準に規定する厚生労働大臣が定める地域及び単位数」(告示539)に、市区町村ごとの地域区分が記載されています。法令等データベース(e-Gov)から最新版を確認できます。
方法2:都道府県・指定権者に問い合わせる
都道府県または指定都市・中核市(障害福祉サービスの指定権者)に問い合わせると、対象市区町村の地域区分を教えてもらえます。指定申請を検討している場合は、地域区分もあわせて確認しておくと収支計画に反映できます。
方法3:収支シミュレーターで選択する
生活介護の収支シミュレーターでは、市区町村を選択すると地域区分が自動で設定されます。収支計画の試算と地域区分の確認を同時に行えます。
地域区分と1単位あたりの単価は、定期的に見直される
地域区分の設定は、障害福祉サービスの報酬改定にあわせて見直されることがあります。令和8年6月施行の改定でも告示539の内容が更新されています。収支計画を立てる際は、必ず最新の告示を確認してください。
なお、地域区分の単価(1単位あたりの円数)は、同じ市区町村でも障害福祉サービスの種別ごとに異なる場合があります。生活介護の単価は告示539の生活介護に対応する部分を確認します。
地域区分の違いが損益分岐点に与える影響
損益分岐点(黒字になる最低の利用者数・稼働率)は、収入と支出のバランスで決まります。地域区分が高い(単価が高い)と、同じ稼働率での収入が増えるため、損益分岐点を下回るリスクが減ります。
たとえば定員20人で月の固定費が250万円の場合、地域区分「その他」(10.00円)と1級地(11.22円)では、損益分岐点となる利用者数が変わります。地域区分「その他」の方が1人1日あたりの収入が低いため、より多くの利用者が必要になります。
開業地域の地域区分を確認したうえで、定員・稼働率・人件費の組み合わせが成り立つかどうかをシミュレーターで試算することをお勧めします。
地域区分は収支計画の最初に確認する
生活介護の収支計画を立てる際、地域区分は収入計算の基礎になります。同じ事業所規模・職員構成・利用者構成でも、地域区分が異なると月収入が数十万円変わるため、「どの地域で開業するか」は収支の根幹に関わります。
地域区分が高い地域では収入が増えますが、一方で物件費・人件費も高くなることが多く、収支差率(利益率)が必ずしも高くなるわけではありません。全国平均の収支差率は9.0%(令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査・令和6年度決算)ですが、これは全地域区分を含む平均です。地域ごとの実態は異なります。
収支計画では地域区分を正しく設定したうえで、定員・稼働率・人件費・借入返済などを組み合わせて試算することが重要です。
出典:指定障害福祉サービス等の報酬の額の算定に関する基準に規定する厚生労働大臣が定める地域及び単位数(告示539・令和8年6月施行版)、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(告示523・令和8年6月施行版)、厚生労働省「令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算)。記載の試算は概算です。実際の収支は事業所の状況によって異なります。
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