生活介護の収入は、利用者の障害支援区分と1日の所要時間の組み合わせで決まる基本報酬に、各種加算を足す形で計算する。区分が高いほど、所要時間が長いほど報酬単価は高くなる仕組みだ。
全国平均では、1事業所あたり年間収入は5,632万円(月あたり約563万円)だ(厚生労働省「令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査」・令和6年度決算の平均値)。定員20人・稼働率84%の事業所で試算すると、月収入(基本報酬のみ)は約298万円になる。
この記事では、生活介護の収入がどのように計算されるかを、報酬の構造から実際の試算まで順に説明する。
生活介護の基本報酬は、障害支援区分と所要時間の組み合わせで決まる
生活介護の基本報酬は、「利用者の障害支援区分」と「1日の所要時間」の2軸で決まる。根拠は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等の報酬の額の算定に関する基準」(告示523)の別表第6だ。
障害支援区分は2以下・3・4・5・6の5段階、所要時間は3時間未満から8時間以上まで7段階に分かれており、組み合わせは350パターンある。区分が高く所要時間が長いほど報酬単価は高くなる。
| 所要時間 | 区分2以下 | 区分3 | 区分4 | 区分5 | 区分6 |
|---|---|---|---|---|---|
| 3時間未満 | 218 | 239 | 268 | 386 | 517 |
| 3〜4時間未満 | 273 | 300 | 335 | 483 | 646 |
| 4〜5時間未満 | 327 | 358 | 401 | 578 | 774 |
| 5〜6時間未満 | 381 | 419 | 469 | 676 | 904 |
| 6〜7時間未満 | 532 | 583 | 652 | 941 | 1,258 |
| 7〜8時間未満 | 545 | 598 | 669 | 966 | 1,291 |
| 8時間以上 | 607 | 660 | 730 | 1,027 | 1,353 |
出典:告示523(令和8年6月施行)別表第6の1 イ、定員11〜20人の場合。地域単価(1単位あたりの単価。地域区分により10.00円〜11.22円の間で変わる)を掛けた金額が1人1日の収入になる。
区分6・8時間以上(1,353単位)と区分2以下・3時間未満(218単位)では、6倍以上の差がある。利用者の障害支援区分の構成が収入に大きく影響する理由がここにある。
全国平均の収入は月563万円。定員規模で幅がある
厚生労働省「令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算)によると、生活介護の全国平均収支は次のとおりだ。
| 項目 | 金額(年間) | 月換算 |
|---|---|---|
| 収入 | 5,632万円 | 約563万円 |
| 人件費率 | — | 67.5% |
| 収支差率 | — | 9.0% |
出典:厚生労働省「令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査」(令和6年度決算・生活介護・全国平均)
ただし、この数字は全規模の平均だ。定員10人以下の小規模事業所と50人以上の大規模事業所では収入も人件費率も大きく異なる。定員の大きい事業所ほど規模のメリットが働き、収支差率が改善しやすい傾向がある。
定員規模別の月収入(基本報酬)の試算
条件を統一して定員規模別に月収入を比較する。稼働率84%・所要時間6〜7時間未満・区分構成(区分6/5/4/3/2以下=20/20/30/20/10%・加重平均約805単位)・地域区分「その他」(1単位10.00円)・月稼働日数22日の試算だ。
| 定員 | 月間延べ利用者数 | 月収入(基本報酬のみ) |
|---|---|---|
| 10人 | 約185人日 | 約149万円 |
| 20人 | 約370人日 | 約298万円 |
| 30人 | 約554人日 | 約447万円 |
| 50人 | 約924人日 | 約745万円 |
この試算は基本報酬のみで、送迎加算・処遇改善加算などを加えると収入はさらに増える。
なお、指定生活介護事業所(通所型)の定員には省令上の下限はない(「指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準」省令171)。定員10人以下の小規模事業所も実際に多く存在する。定員20人以上が義務となるのは施設入所支援と一体的に運営する「障害者支援施設」(省令174 第37条)の場合であり、単独の通所型指定生活介護とは別の基準だ。
処遇改善加算を加えると収入はどれだけ増えるか
処遇改善加算(Ⅰ)(24.0%)を算定できれば、基本報酬にさらに24.0%の加算が加わる。定員20人・稼働率84%の試算では次のようになる。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 基本報酬(月間) | 約298万円 |
| 処遇改善加算(Ⅰ)24.0% | 約71万円 |
| 合計(基本報酬+処遇改善) | 約369万円 |
出典:障害福祉サービス等報酬告示(令和6年3月改定)(処遇改善加算率)
処遇改善加算(Ⅰ)は、福祉・介護職員処遇改善計画書の策定・研修体制の整備・キャリアパス要件を満たすことで算定できる。開業時から体制を整えておくことで、開業直後から算定が可能になる。
さらに、人員配置体制加算(区分5・6が60%以上かつ配置基準を満たす場合に321単位/日まで算定可)を取得できれば、定員20人・稼働率84%の場合に月間で最大約200万円以上の収入増加になる。
損益分岐点の目安
損益分岐点(赤字にならない最低の稼働率・利用者数)は、加算の取得状況と固定費(人件費・家賃など)によって変わる。一概には言えないが、定員20人の事業所での目安を示す。
月間の固定費の目安は以下のとおりだ(職員2〜3名の場合)。
| 費用の種類 | 月額の目安 |
|---|---|
| 職員の人件費(2〜3名) | 約200万〜280万円 |
| 家賃・光熱費・通信費 | 約20万〜40万円 |
| 消耗品・外注費・その他 | 約10万〜20万円 |
| 合計(概算) | 約230万〜340万円 |
月間固定費を250万円と仮定すると、定員20人・1単位10.00円・区分構成(加重平均805単位)・月稼働22日の場合、損益分岐の稼働率の目安は次のようになる。
基本報酬のみで損益分岐に達する延べ利用者数:250万円 ÷(805単位×10.00円)÷ 22日 ≈ 約14.1人/日(稼働率71%相当)。処遇改善加算込みならさらに低い稼働率で均衡する。
開業直後は利用者が徐々に集まる期間があり、稼働率が50〜70%程度から始まるケースが多い。黒字化まで3〜6か月かかることを想定して、運転資金を十分に確保しておく必要がある。
入金タイムラグに注意する
障害福祉サービスの報酬は、サービスを提供した月の翌々月に入金される。
たとえば4月1日に開業した場合、4月のサービス提供分が入金されるのは6月だ。4月・5月は職員の人件費・家賃・光熱費などの支出が続くが、サービス報酬の入金はない。最低でも2か月分の支出を賄える運転資金を持って開業する必要がある。
職員の配置基準が収支の核になる
生活介護では、「指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準」(省令171 第78条)により、利用者の平均障害支援区分に応じて職員の最低配置数が義務付けられている。
| 利用者の平均障害支援区分 | 必要な職員数(最低基準) |
|---|---|
| 4未満 | 利用者数 ÷ 6 |
| 4以上5未満 | 利用者数 ÷ 5 |
| 5以上 | 利用者数 ÷ 3 |
出典:省令171 第78条(「指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準」)
平均区分が5以上の場合は利用者3人に対して職員1人が必要になる。定員20人で稼働率84%(約17人)なら、最低で約6人の職員が必要だ。
人件費は収入の67.5%(全国平均)を占める最大のコスト要因だ。必要な職員数は区分が高いほど増えるが、報酬単価も高くなるため、区分が高い利用者が多い事業所が必ずしも経営的に不利というわけではない。
加算の選択によって収入は変わる
基本報酬に加えて、要件を満たした場合に加算できる項目がある。主なものを挙げる。
| 加算名 | 単位(参考) | 主な要件 |
|---|---|---|
| 人員配置体制加算(Ⅰ) | 321単位/日 (定員20人以下) |
区分5・6が60%以上、かつ告示551 六イで定める配置基準を満たす |
| 人員配置体制加算(Ⅱ) | 265単位/日 (定員20人以下) |
区分5・6が60%以上、かつ告示551 六ロで定める配置基準を満たす |
| 人員配置体制加算(Ⅲ) | 181単位/日 (定員20人以下) |
区分5・6が50%以上、かつ告示551 六ハで定める配置基準を満たす |
| 人員配置体制加算(Ⅳ) | 51単位/日 (定員20人以下) |
告示551 六ニで定める配置基準を満たす(区分の割合要件なし) |
| 福祉専門職員配置等加算(Ⅰ) | 15単位/日 | 有資格者が全従業者の35%以上 |
| 送迎加算(Ⅰ) | 21単位/片道 | 送迎サービスを実施 |
| 食事提供体制加算 | 30単位/日 | 食事提供を実施(令和9年3月31日まで) |
出典:告示523 別表第6の2(加算単位数・定員20人以下の場合)・告示551 六イ〜ニ(配置要件)
食事提供体制加算は令和9年3月31日までの経過措置だ。令和9年4月以降に開設する事業所はこの加算を見込めない。
地域区分によって同じサービスでも収入が変わる
障害福祉サービスの報酬は「単位数」で定められているが、1単位あたりの金額(地域単価)は市区町村の地域区分によって異なる。
| 地域区分 | 1単位の単価 | 主な地域(例) |
|---|---|---|
| 1級地 | 11.22円 | 東京23区の一部 |
| 2級地 | 10.98円 | 東京23区周辺・政令市の一部 |
| 3級地 | 10.92円 | — |
| 4級地 | 10.73円 | — |
| 5級地 | 10.61円 | — |
| 6級地 | 10.37円 | — |
| 7級地 | 10.18円 | — |
| その他 | 10.00円 | 上記以外の地域 |
出典:「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(告示539)
1級地と「その他」では1単位あたり1.22円の差がある。年間延べ利用者数が5,000人日の事業所で基本報酬1,000単位を例にすると、年間約6,100万円(1級地)と5,000万円(その他)の差になる。開設地域の地域区分は事業計画に必ず確認しておく必要がある。
全国に12,990か所の事業所がある市場規模
生活介護の事業所数は、令和7年1〜3月時点で12,990か所だ(厚生労働省「最近の動向」令和7年版)。令和6年同期(12,780か所)から210か所増加しており、毎年一定のペースで増えている。
障害福祉サービス全体の中では、グループホームとともに事業所数の多い基幹的なサービスだ。重度の障害がある方の地域生活を支えるインフラとして、行政からの必要性も高い位置づけにある。
まとめ
- 生活介護の基本報酬は障害支援区分(5段階)と所要時間(7段階)の組み合わせで350パターンある(告示523 別表第6)
- 全国平均の月収入は約563万円・収支差率9.0%・人件費率67.5%(令和7年度経営概況調査・令和6年度決算)
- 定員20人・稼働率84%の試算では月収入(基本報酬のみ)約298万円。処遇改善加算(Ⅰ)24.0%込みで約369万円になる
- 職員の最低配置数は平均障害支援区分によって決まる(÷6・÷5・÷3)
- 指定生活介護事業所(通所型)の定員に省令上の下限はない。20人以上が必要なのは施設入所支援と一体運営する障害者支援施設(省令174)の場合
- 地域区分によって同じサービスでも1単位あたりの収入が10.00〜11.22円の間で変わる
- 食事提供体制加算は令和9年3月31日まで。開設時期によって収支が変わる
- サービス報酬の入金は翌々月のため、少なくとも2か月分の支出を賄える運転資金が必要
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