保育所の散歩・交通安全に関する研修と訓練は、令和5年4月施行の安全計画(第6条の3)の対象分野「交通安全」に基づき、年1回以上の実施が義務です。散歩中の事故(交通事故・転倒・はぐれ)は重大事故につながるリスクがあります。この記事では、安全計画への記載事項・散歩ルートの点検手順・引率体制・緊急時の連絡手順・記録の残し方を整理します。
交通安全研修は安全計画(第6条の3)の対象分野
令和5年4月1日施行の児童福祉施設の設備及び運営に関する基準 第6条の3(安全計画)は、「交通安全」を安全計画の対象分野の一つとして位置づけています。安全計画には散歩・交通安全に関する方針と手順を盛り込み、年1回以上の研修・訓練を実施して記録を残すことが求められます。
また、内閣府「特定教育・保育施設等における重大事故防止及び事故発生時の対応のための指針」(令和5年改訂版)は、散歩中の事故防止を重点項目として掲げています。
| 根拠 | 内容 | 最低頻度 |
|---|---|---|
| 第6条の3(安全計画)交通安全分野 | 散歩・戸外活動中の交通安全に関する研修・訓練 | 年1回以上 |
| 安全計画の記載 | 散歩ルートの定期点検(年1回以上)・危険箇所の管理 | 年1回以上の点検 |
安全計画の「交通安全」分野に記載すべき5項目
安全計画の交通安全分野には、少なくとも次の5項目を盛り込んでください。運営指導では安全計画の内容が実態と一致しているかが確認されます。
-
散歩ルートの一覧と危険箇所マップ
使用している散歩ルートをすべてリストアップし、危険箇所(見通しの悪い交差点・段差・工事現場・交通量の多い道路)をマップまたはリストで管理します。ルートは年1回以上点検し、変化があれば更新してください。 -
引率の人員体制の基準
「子ども○人に対して職員○人以上」という引率の人員基準を明記します。法令上の最低基準(1〜2歳:1対6、3歳以上:1対20)より手厚い体制を設定している施設も多いです。施設が設定した基準を安全計画に記載してください。 -
散歩前の確認事項
出発前に行う確認(子どもの人数・体調・帽子着用・水筒の持参・緊急連絡先の携帯)を手順として明記します。「誰が何を確認するか」の役割分担も記載しておくと実用的です。 -
緊急時の連絡手順
散歩中に事故や急変が起きた場合の「119番・110番通報→施設長への報告→保護者への連絡」の手順と担当者を記載します。引率職員が2人以上いる場合は、「誰が子どもを守り・誰が通報するか」の役割分担も明記してください。 -
研修・訓練の実施計画
年1回以上の研修・訓練の実施予定を年間計画に記載します。散歩ルートの点検と研修を兼ねて実施する施設もあります。
散歩ルートの点検で確認する6つのポイント
安全計画に基づく散歩ルートの点検では、次の6点を確認してください。点検は年1回以上が推奨されますが、工事や道路状況の変化があった場合はそのつど確認してください。
| 確認項目 | 確認のポイント |
|---|---|
| 交差点・横断歩道 | 見通しが確保されているか・信号の有無・車の交通量 |
| 歩道の状態 | 段差・凹凸・工事などで歩道が塞がれていないか |
| 車の出入り口 | ルート沿いの駐車場・倉庫の出入口で車が出てきやすい箇所 |
| 避難できる場所 | 緊急時に子どもを避難させられる場所(公園・広場・施設の敷地)がルート上にあるか |
| 休憩場所・日陰 | 夏季の熱中症対策として日陰で休憩できる場所があるか |
| 季節・天候による変化 | 雨天時の水たまり・冬期の凍結・落ち葉による滑りなどの季節変化 |
散歩中の子ども管理、人数確認のタイミングを決める
散歩中のはぐれ事故を防ぐには、人数確認のタイミングを明確にルール化することが重要です。
- 出発前:施設を出る前に全員の人数を確認
- 移動中:交差点を渡った後・公園に入った後など、地点を決めて確認
- 活動中:公園での自由遊び中は定期的な点呼(遊具ごとの担当者を決める)
- 帰園前:公園を出る前に全員の人数を確認してから移動
- 帰園後:施設に戻った後に全員の人数を確認
確認のタイミングを記録に残す施設もあります。「出発時○人・帰園時○人」を散歩記録に明記しておくと、トラブルがあった際の確認が容易です。
散歩中に事故が起きた場合の対応手順
散歩中に事故(交通事故・転倒・急変)が起きた場合の対応手順を、あらかじめ全職員で確認しておいてください。
- 子どもの安全を確保する:まず他の子どもを安全な場所に集め、状況を確認します
- 必要に応じて119番・110番:意識がない・出血が多い・交通事故の場合はすぐに通報
- 施設長へ連絡:引率職員が1人の場合でも、子どもを安全な場所に確保した上で施設に連絡。2人以上いる場合は1人が子どもを見守り1人が通報・連絡
- 保護者への連絡:施設長の指示のもと、保護者に状況を連絡する
引率職員が1人の場合に「子どもの安全確保」と「通報」を同時にこなすのは困難です。引率は原則として2人以上とする体制を安全計画に明記することを推奨します。
研修で確認すべき内容と記録
交通安全研修では、次の内容を全職員で確認してください。
- 現在使用している散歩ルートと危険箇所の共有
- 引率の人員体制の基準と役割分担
- 人数確認のタイミングと手順
- 緊急時の連絡手順と役割分担
- 散歩ルートの実地点検(可能であれば参加型で)
研修の記録には、実施日・参加者・確認した内容の概要を残してください。安全計画の訓練を兼ねる場合は「安全計画(第6条の3)の研修を兼ねる」と記録に明記しておくと、安全計画研修の実施記録としても機能します。
運営指導でよく指摘される不備
- 散歩ルートの記録・点検記録がない:「毎日散歩しているが記録は特に取っていない」という施設があります。安全計画に散歩ルートの記載と年1回以上の点検が求められます
- 引率の人員基準が安全計画に記載されていない:何人の子どもに何人の職員が引率するかの基準が文書化されていないケースがあります。安全計画に明記してください
- 緊急時の連絡手順が全職員に周知されていない:施設長は知っているが、若手・パート職員が緊急時の連絡先や手順を知らないケースがあります。研修で全員が確認できる体制を作ってください
- 交通安全に関する研修記録がない:避難訓練の記録はあるが、散歩・交通安全に関する研修記録が存在しないケースがあります。安全計画の訓練として年1回以上の実施と記録が必要です
まとめ
保育所の散歩・交通安全に関する研修は、安全計画(第6条の3)の「交通安全」分野として年1回以上の実施が義務です。安全計画には散歩ルートの一覧・危険箇所・引率体制・緊急時の連絡手順を明記し、年1回以上の点検記録を残してください。
散歩中の人数確認は「出発前・地点ごと・活動中・帰園前・帰園後」の5タイミングでルール化し、緊急時の役割分担を全職員で確認しておくことが重大事故の防止につながります。
散歩・交通安全研修の資料・ルート点検チェックシート・記録様式をまとめたツールを用意しています。ぜひ活用してください。


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