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有料老人ホームの経営が成り立つかどうかは、稼働率(入居率)が損益分岐点を超えるかどうかで決まります。損益分岐点とは、収入と費用がちょうど同じになる入居率のことで、それを下回っている間は赤字が続きます。厚生労働省「令和7年度介護事業経営概況調査(特定施設入居者生活介護)」によると、特定施設の平均稼働率は90%台前半の水準です。小規模施設ではこの水準を維持しながら黒字を確保するために、費用構造の設計が重要になります。
稼働率が1%変わると収入に直接影響する
有料老人ホームの収入は、入居者1人あたりの月額収入(介護付きなら介護報酬+居住費・食費等、住宅型なら居住費・食費・生活支援費等)に入居者数を掛けた金額です。定員が決まっている以上、入居者数=定員×稼働率で決まります。
たとえば定員30名で、入居者1人あたりの月額収入の目安が25万円の施設の場合を考えます。
| 稼働率 | 入居者数 | 月間収入の目安 |
|---|---|---|
| 100% | 30名 | 750万円 |
| 90% | 27名 | 675万円 |
| 80% | 24名 | 600万円 |
| 70% | 21名 | 525万円 |
稼働率が90%から80%に下がるだけで月75万円の収入減になります。人件費などの固定費は入居者数が変わっても大きくは変わらないため、稼働率の変化は利益に直接跳ね返ります。
損益分岐点の稼働率は施設ごとに計算が必要
損益分岐点の稼働率は、施設の費用構造(固定費の水準)と収入単価によって変わります。一般的な目安として、「定員の80〜85%程度」と言われることがありますが、これはあくまでもおおまかな目安です。施設によっては70%台で黒字になる場合も、90%以上でないと赤字が続く場合もあります。
損益分岐点を計算するには、以下の数字を把握することが出発点です。
- 月間の固定費の合計(人件費・家賃または建物ローン・光熱費・食材費の固定部分など)
- 入居者1人あたりの月間収入(介護報酬収入+居住費・食費等の自費収入)
- 入居者1人あたりの変動費(食材費の変動部分など)
損益分岐点の入居者数は「固定費 ÷(1人あたり収入 − 1人あたり変動費)」で計算できます。これを定員で割ると、損益分岐点の稼働率になります。
開業後に損益分岐点を超えるまでの期間の目安や、その間に必要な運転資金の規模については、有料老人ホームの開業、黒字になるまでどれくらいかかるか。で詳しく説明しています。
全国の特定施設の稼働率は90%台前半
厚生労働省の「令和7年度介護事業経営概況調査(令和6年度決算分・特定施設入居者生活介護)」の結果では、特定施設の平均稼働率は90%台前半で推移しています(詳細は最新の調査報告書で確認してください)。
ただし、この平均値は既に安定運営している既存施設を含む数字です。開業間もない施設は平均を大きく下回る状態からスタートするのが一般的です。開業計画では「最終的に90%前後を目指すとして、達成まで何か月かかるか」を試算することが重要です。
費用構造を変えると損益分岐点が変わる
損益分岐点を下げる(低い稼働率でも黒字になる)ためには、固定費を抑えることが有効です。主な方法として以下が挙げられます。
- 建物を賃借(リース)にして初期の設備投資を抑える
- 職員の常勤・非常勤の比率を検討し、人件費の固定費化を抑える
- 定員を小さく始めて、稼働率が安定してから増床を検討する
- 食事を外注(給食委託)にすることで厨房設備の投資と人員を削減する
一方で、費用を削ることで施設の質やサービス水準が下がると、口コミや紹介が伸びず、稼働率の向上が難しくなる本末転倒な結果になるリスクがあります。削れる固定費と守るべきサービス水準のバランスを考えながら設計することが大切です。
収支をシミュレーションしてみる
居室数・要介護度構成・月額費用・人件費などを入力すると、月次の収支・損益分岐点の稼働率・入居率を変えたときの感度分析が確認できます。
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