「日本語教育の参照枠」は、登録日本語教員の基礎試験で出題割合が最も高い「言語と教育」区分(約3〜4割)の核心にある概念です。
試験対策として調べてみると、CEFRという外国語教育の国際的な枠組みが元になっていることはすぐわかります。ただ、「参照枠がCEFRと何が違うのか」「試験でどう出るのか」まで整理された情報は少ない状況です。
この記事では、文部科学省が公表している一次資料をもとに、試験に関わる部分を中心として解説します。
参照枠とは何か
「日本語教育の参照枠」は、文化審議会国語分科会が2021年10月に報告書として公表した文書です。正式名称は「日本語教育の参照枠 報告」(2021年・文化庁)です。
一言で言うと、日本語を使う力を6段階で表した共通の物差しです。
日本語を学ぶ人が「今どのくらいできるか」「次に何を目指すか」を、教える側も学ぶ側も共通の言葉で確認できるようにすることを目的としています。
CEFRとの関係
参照枠の元になっているのが、ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)です。CEFRはヨーロッパ評議会が策定した外国語教育の国際的な共通基準で、言語能力をA1・A2・B1・B2・C1・C2の6段階で表します。
日本語教育の参照枠は、このCEFRの枠組みを日本語教育に応用したものです。6段階の構造はCEFRと同じですが、日本語の特性(文字の多さ、敬語、話し言葉と書き言葉の違いなど)を踏まえた記述が加えられています。
| レベル | 区分名 | 参照枠での概要 |
|---|---|---|
| A1 | 基礎段階の言語使用者 | ごく基本的な表現・あいさつを理解し使える |
| A2 | 基礎段階の言語使用者 | 日常的なことについて直接関連する情報を理解できる |
| B1 | 自立した言語使用者 | 日常的な話題について意思疎通できる |
| B2 | 自立した言語使用者 | 複雑な内容を理解し、母語話者と対等に議論できる |
| C1 | 熟達した言語使用者 | 幅広い長い文章を理解し、即興で流暢に表現できる |
| C2 | 熟達した言語使用者 | ほぼすべての内容を容易に理解し、簡潔に再表現できる |
出典:文化庁「日本語教育の参照枠 報告」(2021年10月)、文部科学省「令和7年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題」
文部科学省が公表しているサンプル問題の中には「熟達した日本語話者」という表現が登場しますが、これは参照枠・CEFRのC1〜C2レベルに相当する表現です。参照枠の文言が問題文に使われている例です。
「Can-Doリスト」との関係
参照枠の特徴的な表現方法として、「Can-Do(〜できる)」の形があります。学習者がその段階で何ができるかを「〜できる」という行動で記述します。
例えば、A2レベルであれば「自分の家族、住んでいるところ、過去にしたこと、好きなことを、簡単な言葉で記述できる」という形で表します。
教師がカリキュラムを設計するとき、この「何レベルの学習者が何をできるようになることを目標とするか」を参照枠で確認しながら進める、というのが実際の使い方です。
試験での出題との関係
基礎試験の出題区分「言語と教育」(約3〜4割)には、参照枠に関連する項目が複数含まれています。文部科学省が公表している出題範囲(必須の教育内容)のうち、参照枠と直接関わる項目の例は次のとおりです。
出典:文部科学省「令和7年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題」
- 日本語教育の目標・学習項目
- 言語習得・学習のプロセス
- 教室活動の設計とCan-Doによる目標設定
- 学習者の言語レベルの評価
参照枠の概念は、教授法の選択・カリキュラム設計・評価など、「言語と教育」区分全体に横断的に関わっています。「参照枠そのもの」が問われる問題だけでなく、教室活動や評価に関する問題の前提知識として機能します。
コア・カリキュラムとの関係
参照枠と並んで、「日本語教師養成のためのコア・カリキュラム」(文化庁・2019年)が試験の出題範囲に関わります。コア・カリキュラムは日本語教師が身につけるべき知識・技能の内容を示したもので、参照枠のレベル記述をもとに教師が何を教えるかの基準になっています。
参照枠とコア・カリキュラムは別の文書ですが、「学習者の到達目標(参照枠)」と「教師が教える内容(コア・カリキュラム)」という関係で、両方を理解していると試験問題の文脈がつかみやすくなります。
参照枠を試験対策として押さえるポイント
参照枠を試験対策として整理すると、次の3点が特に重要です。
1. A1〜C2の6段階の意味
「熟達した言語使用者」がC1・C2に相当し、「自立した言語使用者」がB1・B2、「基礎段階の言語使用者」がA1・A2です。各レベルで学習者が何をできるかの概要を把握しておくと、問題文に登場したときに対応できます。
2. Can-Doの考え方
参照枠は「学習者が〜できる」という行動目標で記述します。評価や授業設計に関する問題で「このレベルの学習者が目指す目標を記述するには?」という問われ方をするとき、Can-Do表現が答えの根拠になります。
3. CEFRとの共通点・相違点
CEFRはヨーロッパの多言語環境を前提に作られているため、日本語の特性(文字体系・敬語・話し言葉の複雑さ)が十分に反映されていませんでした。参照枠は日本語の特性を踏まえた記述を加えることで、日本語教育での実用性を高めています。「CEFRをそのまま使う」のではなく「CEFRを参照して日本語向けに作ったもの」という位置づけです。
参照枠を学ぶ一次資料
参照枠の全文は文化庁のウェブサイトで無料で閲覧できます。試験対策として全文を読む必要はありませんが、各レベルのCan-Do記述と用語の使われ方を確認しておくと、問題を読んだときの理解が深まります。
文部科学省の試験サンプル問題(9問)にも参照枠の概念が含まれているため、サンプル問題を解きながら「この選択肢の根拠は参照枠のどの考え方か」を確認する練習が実践的です。
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参考資料
- 文化庁「日本語教育の参照枠 報告」(2021年10月)
- 文部科学省「令和7年度日本語教員試験の出題内容及びサンプル問題」
- 文化庁「日本語教師養成のためのコア・カリキュラム」(2019年)


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