移動式クレーンのつり角度と張力計算:2本吊りで角度が大きいほどロープ負荷が増える理由

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移動式クレーン運転士の試験「力学に関する知識」では、荷を吊り上げる際の荷重の分担(分力)の計算が頻出です。2本のワイヤロープで荷を吊った場合、1本のロープにかかる張力はつり角度によって変わります。この計算パターンを覚えておきましょう。

つり角度とは何か

「つり角度(開き角度)」は、2本のワイヤロープが荷の吊り点でなす角度のことです。ワイヤロープ2本を開いて荷を吊るほど(つり角度が大きくなるほど)、1本のロープにかかる張力が大きくなります。

つり角度と張力の関係

2本の同じ長さのワイヤロープで質量Wの荷を吊り上げる場合、1本のロープにかかる張力Tは:

T = W ÷ (2 × cos(θ÷2))

(θ:つり角度、Wの荷の場合の合計荷重)

代表的なつり角度での張力倍率:

つり角度(開き角) 1本のロープの張力(荷重Wに対する比) ポイント
0°(2本が平行) W÷2 = 0.5W 最も張力が小さい。荷を2等分で支える
60° W÷√3 ≈ 0.577W 各ロープはW/2より少し大きい
90° W÷√2 ≈ 0.707W 垂直荷重の約√2/2倍
120° W÷1 = W 各ロープに荷重全体と同じ張力がかかる
180°(水平) 無限大→不可能 水平方向に近づくと張力が急増。実用不可

試験で最重要なのは「つり角度が大きいほど1本のロープの張力が大きくなる」という関係です。

実際の計算例

例:質量600kgの荷を2本のワイヤロープで吊り角度60°で吊った場合、1本のロープの張力は?

T = 600kg ÷ (2 × cos30°) = 600 ÷ (2 × 0.866) = 600 ÷ 1.732 ≈ 346kg

もしつり角度が120°であれば:
T = 600kg ÷ (2 × cos60°) = 600 ÷ (2 × 0.5) = 600 ÷ 1 = 600kg

つり角度を小さく保つ重要性

クレーン作業でつり角度が大きくなると、ワイヤロープへの負荷が大きくなり、切断やシャックルの破断等の事故につながります。実務では「つり角度は60°以内」が推奨されることが多く、それを超える場合は使用するワイヤロープの定格荷重を確認・変更する必要があります。

試験でよく問われるポイントまとめ

  • つり角度が大きいほど1本のロープの張力は大きくなる
  • つり角度0°(平行)→ 各ロープはW÷2
  • つり角度120°→ 各ロープはW(荷重と同じ張力)
  • つり角度が60°以内になるようにワイヤロープの長さを選ぶ

3本・4本のワイヤロープでつる場合の計算

3本・4本のワイヤロープで対称につる場合、本数が増えると1本あたりの張力は小さくなります。

3本対称の場合:各ロープの張力T = W ÷ (3 × cos θ)

4本対称の場合:各ロープの張力T = W ÷ (4 × cos θ)

例:1tの荷を開き角度90°(θ=45°)の4本のロープでつる場合:

T = 1000kg ÷ (4 × 0.707) = 1000 ÷ 2.83 ≒ 354kg

2本の場合の半分以下の張力になります。ロープ本数を増やすことで各ロープの負荷が軽減されます。

計算問題の出題パターンと対策

出題パターン 使う式・考え方
開き角度から張力を求める T = W ÷ (本数 × cos θ)
張力から安全係数を求める 安全係数 = 切断荷重 ÷ 使用荷重(張力)
モーメントを求める M = F × L(力×距離)
質量と重力の変換 F(N) = m(kg) × g(m/s²)、g≒9.8または10

試験でつまずきやすいポイント

  • 「θ」の定義:ロープが「垂直から」なす角度 か 「水平から」なす角度 かを確認する
  • 「開き角度」:2本のロープがなす角度(2θ)であることに注意(1本分の角度θではない)
  • cos θ の値:30°→0.866、45°→0.707、60°→0.500 の3つを暗記しておくと計算が速い
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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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