在宅サービスと施設入所の比較【コスト・選択のタイミング・ケアマネの役割】

介護

在宅サービスと施設サービスのどちらを選ぶかは、利用者・家族にとって大きな選択です。ケアマネジャーとして選択肢を提示する際の比較ポイントと、居宅介護支援事業所として在宅支援を行う上で押さえておくべき視点を整理します。

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在宅サービスと施設サービスの選択に影響する主な要因

利用者・家族が在宅継続か施設入所かを検討する際に影響する主な要因は次の通りです。

  • 介護の必要度・医療的ケアの有無:要介護4・5や医療的ケア(経管栄養・人工呼吸等)が必要な場合は、在宅での介護負担が大きくなる
  • 家族の介護力:同居家族の有無・家族の就労状況・介護に費やせる時間
  • 利用者本人の意向:「自宅にいたい」「施設の方が安心」という本人の意向
  • 経済的な状況:施設入所には毎月の費用(食費・居住費・介護保険の自己負担等)がかかる。在宅介護も複数サービスを使うと費用がかかる
  • 地域の資源:利用できる在宅サービス・施設の空き状況

在宅サービスと施設サービスのコスト比較

在宅と施設の費用は利用するサービスの種類・頻度・施設の種類によって大きく異なります。あくまでも参考値として比較します。

在宅・施設の月額費用の目安(参考値・要介護3の場合)
サービスの種類 月額の目安 主な内訳
在宅(居宅介護支援+複数サービス) 40,000〜120,000円 訪問介護・通所介護・福祉用具等の自己負担(1割)+食費
特別養護老人ホーム(特養) 80,000〜150,000円 介護保険自己負担(1割)+食費・居住費(補足給付の対象となる場合あり)
介護老人保健施設(老健) 90,000〜160,000円 介護保険自己負担(1割)+食費・居住費
有料老人ホーム(介護付き) 150,000〜350,000円 月額費用(介護保険自己負担+食費・居住費等)
グループホーム(認知症対応型) 100,000〜200,000円 月額費用(介護保険自己負担+食費・居住費等)

上記はあくまでも目安です。在宅では介護保険の区分支給限度基準額の範囲内でサービスを組み合わせることになります。要介護3の場合の区分支給限度基準額は月約270,480単位(令和8年6月時点)で、自己負担1割の場合は月最大約27,048円になります(食費・居住費は含まない)。

在宅継続を支える主なサービスの種類

居宅介護支援のケアプランで活用できる主な在宅サービスは次の通りです。ケアマネジャーとして利用者の状況に応じた組み合わせを提案することが重要です。

  • 訪問介護(ホームヘルプ):身体介護・生活援助・通院等乗降介助
  • 訪問入浴介護:浴槽を持ち込んで自宅で入浴を支援
  • 訪問看護:看護師等が訪問して医療的ケア・健康観察等を実施
  • 訪問リハビリテーション:理学療法士・作業療法士等が訪問してリハビリを実施
  • 通所介護(デイサービス):日中に施設に通い食事・入浴・機能訓練等を受ける
  • 通所リハビリテーション(デイケア):介護老人保健施設等に通いリハビリを受ける
  • 短期入所生活介護(ショートステイ):施設に短期間入所して介護を受ける(家族の休暇・緊急対応)
  • 福祉用具貸与・購入:車いす・介護ベッド・特定福祉用具の貸与・購入
  • 住宅改修:手すりの設置・段差解消など(一人20万円まで保険給付)
  • 小規模多機能型居宅介護:訪問・通い・泊まりを一体的に提供するサービス

在宅限界点と施設入所の検討タイミング

在宅介護に「限界点」が来るサインとして、次のような状況が挙げられます。ケアマネジャーとしてこれらの状況を察知し、適切に施設入所の選択肢を提示することも大切な役割です。

  • 介護者(家族)の疲弊:睡眠不足・体力的な限界・精神的な負担の増大
  • 夜間介護の必要性:夜間に介護が必要な状況で家族が対応できない
  • 医療的ケアの増加:痰の吸引・胃ろう・酸素療法など、在宅での管理が難しくなる
  • 認知症の進行:徘徊・暴力行為・夜間の興奮など、在宅での対応が困難になる
  • 独居で支援者がいない:独居で身寄りがなく、緊急時の対応ができない

施設入所の検討は「失敗」ではなく、利用者・家族の状況に合わせた最善の選択です。ケアマネジャーとして、施設入所を検討する段階になったときに適切な情報提供(施設の種類・費用・申込方法)を行うことが求められます。

施設入所時の居宅介護支援事業所の役割

利用者が施設に入所した場合、居宅介護支援事業所との契約は終了します。しかし、入所前の連携・情報提供の段階でケアマネジャーが果たす役割は大きいです。

  • 施設への情報提供:利用者の心身の状態・医療情報・生活歴・家族状況等を施設側に提供する(退院・退所時と同様に、引き継ぎ書の作成等)
  • 家族へのサポート:施設選びの情報提供(施設の種類・空き状況・費用等)の案内
  • 入所前のカンファレンス参加:施設のケアマネジャー・スタッフとの引き継ぎ会議に参加する場合もある

在宅復帰を見据えた施設入所中のケアマネジャーの関わり

老健(介護老人保健施設)は、在宅復帰を目指すためのリハビリ目的での入所が多い施設です。老健入所中でも、退所後に在宅に戻ることを見据えて居宅介護支援事業所のケアマネジャーが連携を続けるケースがあります。退所時にはケアマネジャーが退院・退所加算(最大900単位)を算定しながら在宅復帰のケアプランを作成します。

主な施設サービスの特徴と入所要件

施設入所を検討する際に選択肢となる主な施設の特徴・入所要件を整理します。

主な介護保険施設の特徴と入所要件(令和8年時点)
施設の種類 対象者 目的・特徴
特別養護老人ホーム(特養・介護老人福祉施設) 要介護3以上が原則 常時介護が必要で在宅生活が困難な方の生活の場。終身入所が可能。低所得者向けの補足給付制度あり
介護老人保健施設(老健) 要介護1以上 在宅復帰を目指すリハビリが主目的。原則3〜6か月の入所が目安。在宅復帰後に居宅介護支援が再開
介護医療院 要介護1以上(長期の医療的ケアが必要な方) 医療と介護を一体的に提供。長期入所が可能。元・介護療養型医療施設に代わる施設
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 要支援2以上・認知症の診断がある方 少人数(5〜9人)での共同生活。自立した生活を支援する。地域密着型サービス
有料老人ホーム(介護付き・住宅型・健康型) 施設によって異なる 民間運営。介護付きは特定施設入居者生活介護として保険給付。費用は幅広い
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) 自立〜要介護まで幅広い 安否確認・生活相談サービス付きの賃貸住宅。介護サービスは外部から利用

在宅継続のための地域包括ケアシステムとの連携

国は「住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられる社会」を目指す地域包括ケアシステムの構築を推進しています。居宅介護支援のケアマネジャーは、このシステムの中核として次の資源と連携します。

  • 地域包括支援センター:要支援者のケアプラン作成・介護予防の相談・虐待対応・権利擁護等を担う地域の総合相談窓口
  • 在宅医療・介護連携推進事業:各市区町村が運営。在宅医療・介護の連携の研修・ネットワーク構築を支援
  • 認知症初期集中支援チーム:認知症の早期発見・早期対応を支援
  • 生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員):介護保険外の生活支援(買い物・移動・見守り等)と地域資源のコーディネート

ケアマネジャーとして、地域包括支援センターや在宅医療・介護連携推進事業の取り組みと連携することで、介護保険サービス外の地域資源も活用した包括的な支援が可能になります。

在宅サービスと施設サービスの選択に関するケアマネジャーの姿勢

ケアマネジャーは在宅サービスと施設サービスのどちらが利用者・家族にとって最善かを、中立的な立場で情報提供する役割を担います。「在宅継続を推す」「施設入所を勧める」という偏った立場ではなく、利用者の意向・家族の状況・地域の資源・経済的な状況を総合的に考慮した選択肢の提示が求められます。

「いずれ施設に入れるかも」という不安を持つ家族に対して、現在の在宅サービスを充実させることで施設入所を遅らせることができる場合があります。一方で、家族の介護負担が限界に達している場合は、施設入所を前向きな選択として提案することが利用者・家族の生活の質向上につながります。

施設の空き待ちと在宅サービスの組み合わせ

特別養護老人ホーム(特養)は入所希望者が多く、入所申し込みから実際に入所できるまでに数か月〜数年かかる場合があります。施設の空き待ち期間も在宅で生活する必要があるため、在宅サービスを充実させることが重要です。

在宅での生活を支えながら施設入所を待つ間に活用できるサービスには次のものがあります。

  • 短期入所生活介護(ショートステイ):家族の介護疲れを癒す・緊急時の対応として活用できる。月に数日〜数週間、施設に短期間入所する。
  • 小規模多機能型居宅介護:通い・訪問・泊まりを一体的に提供するサービス。利用者の状況に応じて柔軟に対応できる。
  • 夜間対応型訪問介護:夜間に介護が必要な場合に訪問介護員が対応する。夜間の家族負担を軽減できる。

施設の空き待ちの間も在宅で安全・安心な生活を送れるよう、ケアマネジャーとしてサービスの組み合わせを工夫することが求められます。

在宅か施設かの判断で困ったときの相談窓口

利用者・家族が在宅継続か施設入所かで迷っている場合、ケアマネジャーだけでなく次の窓口への相談も活用できます。

  • 地域包括支援センター:要支援者・要介護者の相談窓口。施設の種類・費用・申し込み方法の案内も行う。
  • 市区町村の介護保険担当窓口:特養への申し込み手続き・低所得者向けの補足給付制度の確認。
  • 福祉用具専門相談員:在宅での安全な生活環境整備の観点から、住宅改修・福祉用具の活用について相談できる。

在宅と施設の選択を検討する際のケアマネジャーの実務的アドバイス

「施設に入れた方がいい?それとも自宅で過ごした方がいい?」という家族からの相談は、ケアマネジャーとして頻繁に受ける質問の一つです。この相談に答えるためのケアマネジャーとしての実務的なアドバイスを整理します。家族に対しては「在宅でできること・できないこと」を具体的に整理した上で、施設の種類・費用・申し込み方法の情報を提供することが重要です。「どちらが正解」ではなく「その方の状況に合った最善の選択ができるよう、一緒に考える」姿勢でいることが求められます。

老老介護・認認介護の問題と在宅支援の課題

介護する側(家族)も高齢者という「老老介護」や、介護する本人も認知症を抱える「認認介護」は、在宅生活を維持する上での深刻な課題です。ケアマネジャーとしてこれらの状況に気づいた場合は、早期に専門的な支援につなげることが重要です。

老老介護・認認介護が疑われる場合の対応としては次のことが考えられます。

  • 地域包括支援センターへの相談・情報共有
  • 介護者(家族)への福祉用具・住宅改修の案内(介護負担軽減)
  • 短期入所(ショートステイ)の活用で介護者の休息(レスパイト)を確保
  • 介護者自身への支援(介護者教室・相談窓口の案内)
  • 施設入所を含めた今後の方向性について早めの意向確認

在宅継続か施設入所かの判断は、利用者本人だけでなく介護者(家族)の状況も考慮する必要があります。介護者が倒れれば在宅生活の継続は困難になります。介護者支援の視点を持つことが、ケアマネジャーとして質の高い支援につながります。

参考・出典

  • 介護サービス情報公表システム(厚生労働省)
  • 令和6年度介護報酬改定の概要(厚生労働省)

この記事は2026年11月時点の情報に基づいています。施設の費用・サービス内容は施設ごとに異なりますので、各施設にご確認ください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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