児童発達支援の設備基準は、国の省令(平成24年厚生労働省令第15号)が設備の「種類」を定め、具体的な面積は都道府県・政令市が条例で決めます。開業に必要な設備は、指導訓練室・屋外遊戯場(代替施設可)・相談室・調理室・洗面所・便所の6種類です。「何平方メートル以上」という数値は自治体ごとに異なるため、指定申請の前に所管の都道府県または政令市に確認することが必要です。
開業に必要な6つの設備
国の基準省令(平成24年厚生労働省令第15号)は、児童発達支援(センター以外)の設備として以下の6種類を定めています。
| 設備 | 主な要件 | 代替・省略 |
|---|---|---|
| 指導訓練室 | 支援に必要な機械器具等を備える。面積は自治体条例で決まる | 不可(必須) |
| 屋外遊戯場 | 障害児が遊戯できるスペース | 近隣の公園・運動場を利用できる場合は不要 |
| 相談室 | プライバシーを確保できる構造 | 不可(必須) |
| 調理室 | 食事・おやつの提供に対応できる設備 | 不可(必須) |
| 洗面所 | 清潔を保てる構造 | 不可(必須) |
| 便所 | 利用児童が使いやすい構造 | 不可(必須) |
これらの設備は、原則として専ら当該事業の用に供するものでなければなりません。障害児の支援に支障がない範囲であれば他の事業と共用できますが、判断は自治体の審査によります。
なお、児童発達支援センターは上記6種類に加え、遊戯室・医務室・静養室なども必要です。センター以外の一般の事業所と比べて要件が多く、開業難易度も高くなります。この記事では、センター以外の一般の事業所を対象に解説します。
指導訓練室の面積は自治体の条例で決まる
指導訓練室の面積は、国の基準省令では「必要な広さ」とされており、具体的な数値(何平方メートル以上)は定められていません。都道府県・政令市が条例で独自に定めることになっています。
自治体によって基準が異なる例として、千葉県・柏市の指定申請の手引き(令和3年度)では、児童1人当たり3.3平方メートル(1坪)以上が目安として示されています。千葉県は口頭指導として3平方メートル以上を示しているとも記載されています。ただし、これは一例であり、全国共通の基準ではありません。
定員10人の事業所で柏市の例(3.3平方メートル)を当てはめると、指導訓練室の面積は33平方メートル以上が目安になります。テナント物件で開業する場合、出入り口や廊下・倉庫のスペースを除いた実質的な指導訓練室の面積がこの基準を満たすかどうかを、物件の図面をもとに確認することになります。
実際の申請の際は、所管の都道府県または政令市の指定担当課に問い合わせて、現行の基準を確認してください。自治体によっては、指定申請の前に「事前協議」の場を設けており、面積要件の判断もそこで行われます。
屋外遊戯場の要件と代替方法
基準省令では、屋外遊戯場を設けるよう定めています。ただし、事業所の近隣に児童が遊戯できる施設がある場合は、屋外遊戯場を設けなくてよいとされています(国の基準省令における例外規定)。
実務上は、近隣の公園・広場を代替として認めている自治体が多いです。認められる要件の例としては以下のようなものがあります。
- 事業所から徒歩で移動できる距離にあること
- 利用する際の安全動線が確保できること
- 利用計画書または公園との調整記録を提出できること
ただし、自治体によって認める条件が異なります。屋外遊戯場の代替を検討している場合は、事前協議の段階で確認することを推奨します。
屋外遊戯場を自前で設ける場合は、児童が安全に遊べる構造・広さであることが求められます。駐車場スペースと兼用している施設も存在しますが、支援中は安全確保の観点から駐車用途との切り分けが必要になります。
相談室の要件
相談室については、プライバシーを確保できる構造であることが求められます。具体的には、相談内容が外部に漏れにくい防音性能、または個室性を持つ構造です。
間仕切りで区切られたスペースが認められるかどうかは自治体によって判断が異なります。完全な個室でなくても認められる場合もありますが、壁・扉の有無・防音性能について事前協議で確認しておくと安全です。
相談室は、保護者との個別面談・サービス担当者会議・個別支援計画の説明などで使います。児童の支援中に相談室が使えない場面が生じないよう、利用時間帯と動線を考慮した配置を検討してください。
調理室の要件
おやつや食事を提供する場合は、調理室が必要です。食品衛生法に基づく営業許可が別途必要になる場合もあります(提供の内容・規模によって異なる)。
冷蔵庫・電子レンジ・シンクなどの基本的な設備が必要です。食品衛生の観点から、手洗い専用のシンクを設けることを求める自治体もあります。
おやつの提供だけであれば、厨房としての設備規模は大きくなりません。提供内容(加熱・調理の有無)と提供人数を踏まえて、保健所と相談しながら設備を整えることになります。
洗面所・便所の要件
洗面所は清潔を保てる構造であることが求められます。感染症対策の観点から、ペーパータオルや石鹸の設置が推奨されます。手指消毒の機会が多い事業所の特性に合わせて、洗面所の数と配置を考えると実務がスムーズになります。
便所については、利用児童が使いやすい構造であることが基本です。幼児対応の便器や補助便座の設置が必要になる場合もあります。男女別に設ける義務があるかどうかは自治体条例の内容によります。
障害の状態によってはトイレ介助が必要なケースもあります。スペースの余裕と扉の開閉方向も含めて、実際の支援場面を想定した設計が重要です。
新築・改装・テナントで開業する場合のポイント
開業形態(新築・改装・既存テナント)によって、設備基準への対応方法が変わります。
既存テナントを借りる場合
最もコストが抑えやすい形態ですが、面積・構造・設備が基準を満たすかどうかを事前に確認する必要があります。指導訓練室の面積が不足している、相談室として使えるスペースがない、などの問題が発覚した場合は、間仕切り工事や改修が発生します。
物件を契約する前に、所管の指定担当課に図面を持参して事前協議を行うことが望ましいです。契約後に基準を満たさないことが判明すると、改修コストや退去・再探索のリスクが生じます。
改装・リノベーションする場合
既存の建物を改装する場合は、建築確認申請が必要な工事規模かどうかの判断が先決です。用途変更(居住用→福祉施設)が伴う場合は確認申請が必要になるケースもあります。自治体の建築担当課と相談してください。
新築する場合
最も設備基準に合わせた設計ができますが、初期費用が大きくなります。設計段階から指定担当課と連絡を取り、基準を満たす設計にすることで、後からの改修が不要になります。
児童発達支援と放課後等デイサービスを同一施設で運営する場合
児童発達支援と放課後等デイサービスを同一の事業所(多機能型)で運営する場合は、共用できる設備があります。国の基準省令(平成24年厚生労働省令第15号)では、多機能型の場合に設備の共用が認められる旨の規定があります。
実務上は、指導訓練室・相談室・調理室・洗面所・便所などを2つのサービスで共用している事業所が多いです。ただし、同時に両サービスの支援が行われる場合には、それぞれの利用定員に対応できる広さが確保されているかどうかが審査の対象になります。
多機能型での開業を検討している場合は、各サービスの指定申請を同時に行うか、時期をずらすかを含めて事前協議で確認することを推奨します。
設備基準違反のリスク
設備基準を満たさないまま指定を受けた場合、または指定後に基準を下回る状態になった場合は、行政指導・改善命令・指定取消のリスクがあります。
よくある事例として、以下が挙げられます。
- 利用定員を増やした結果、面積が基準を下回った
- 相談室として使っていたスペースを他の用途に転用した
- 屋外遊戯場として認めてもらっていた公園が使えなくなった
- 調理室の設備が老朽化したまま放置されていた
定員変更の申請や設備の変更の際は、事前に担当課に相談することが基本です。設備の状態は定期的に点検し、不具合があれば早めに対処することが重要です。
センター以外の設備基準 vs. センターの設備基準
参考として、センター(福祉型)の設備基準との比較を整理します。
| 設備 | センター以外(一般の事業所) | センター(福祉型) |
|---|---|---|
| 指導訓練室(発達支援室) | 必要(面積は条例) | 必要(2.47㎡/人以上の例あり) |
| 遊戯室 | 不要(指導訓練室に含む) | 必要 |
| 屋外遊戯場 | 必要(代替施設可) | 必要 |
| 医務室 | 不要 | 必要 |
| 静養室 | 不要(指導訓練室に含む場合あり) | 必要 |
| 相談室 | 必要 | 必要 |
| 調理室 | 必要 | 必要 |
| 洗面所 | 必要 | 必要 |
| 便所 | 必要 | 必要 |
センターの発達支援室については、福岡市の令和7年度設備基準資料および下関市の基準資料に「2.47平方メートル以上/人」の記載があります。ただしこれはセンターの基準であり、センター以外の一般事業所の基準ではありません。
よくある質問
自宅を事業所として使えますか
住宅を事業所として使うことは、多くの自治体で認めていません。指定申請の際に「事業所として使える用途」の建物であることが求められます。用途地域・建物の用途変更の必要性も含めて、事前に確認してください。
指導訓練室の面積が足りない場合、間仕切りを外せば解決しますか
間仕切りの除去で面積が確保できる場合もありますが、構造壁の場合は除去できません。また、面積を拡大した結果、相談室などの別の設備スペースが減る問題が生じることもあります。改修前に図面を持参して担当課に確認することを推奨します。
放課後等デイサービスと同一の設備で運営できますか
多機能型として同一施設で運営することは認められています。設備の共用については、基準省令の多機能型の規定に基づいて自治体が判断します。利用定員の合計に対して面積が確保されているかどうかが審査の主な観点になります。
設備基準の確認は指定申請のどの段階でしますか
物件を契約する前に行うことが理想です。多くの自治体は、申請の前段階として「事前協議」の機会を設けています。物件の図面・面積の資料を持参して、設備基準の適否を事前に確認しておくと、申請後の指摘・差し戻しを減らせます。
まとめ
児童発達支援の設備基準は、国の省令(平成24年厚生労働省令第15号)が設備の種類を定め、具体的な面積は自治体条例に委ねています。指導訓練室・相談室・調理室・洗面所・便所が必須設備で、屋外遊戯場は近隣施設で代替可能です。
開業前に最も重要なのは、所管の都道府県または政令市の指定担当課に事前協議を行うことです。面積の数値は自治体ごとに異なり、物件選定の前に基準を確認することでコスト超過や申請差し戻しのリスクを抑えられます。
開業後の収支の試算や事業計画の作成には、以下のツールをご活用ください。
定員・加算・稼働率を入力すると、月次の収支・損益分岐点・開業に必要な資金の目安が確認できます。

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