児童発達支援の強度行動障害支援、研修義務と加算・支援手順の整備。

児童発達支援の強度行動障害支援 ABC分析と支援手順書の整備 福祉事業の開業と運営



児童発達支援の強度行動障害支援、研修義務と加算・支援手順の整備。

強度行動障害とは、自傷・他傷・器物破損・激しいパニックなど、自身や周囲に重大な影響を及ぼす行動が高頻度・高強度で継続する状態を指します。強度行動障害のある子どもを支援する児童発達支援事業所では、支援の質を確保するための研修体制と、記録による支援手順の整備が求められます。

令和6年度報酬改定では、強度行動障害支援体制加算の見直しが行われ、加算算定には「強度行動障害支援者養成研修(基礎研修・実践研修)の修了者の配置」が要件に含まれています。

強度行動障害支援に関する研修と加算の概要

研修・制度 概要・根拠
強度行動障害支援者養成研修(基礎研修) 強度行動障害の概念・要因・支援の基本的な考え方を学ぶ。都道府県・指定機関が実施
強度行動障害支援者養成研修(実践研修) 基礎研修修了後、個別支援計画の作成や環境調整の実践的スキルを学ぶ
強度行動障害支援体制加算 強度行動障害のある利用者(障害支援区分の認定調査における行動関連項目の合計が10点以上)の支援に、実践研修修了者が中心となって関わる場合に算定できる。詳細な算定要件は都道府県・指定権者に確認

(出典:厚生労働省「障害児通所支援の報酬・基準について」令和6年度報酬改定・指定通所支援基準)

行動障害を理解するための基本的な考え方

強度行動障害のある子どもの「問題行動」は、本人の意図的な反抗ではなく、コミュニケーションの手段・環境への不適応・感覚の過負荷などから生じていることが多くあります。支援者が「なぜその行動が起きているか」を把握することが適切な対応の出発点です。

ABC分析(行動の前後の整理):行動(B: Behavior)が起きる前の状況(A: Antecedent)と、行動の後に起きること(C: Consequence)を記録・整理することで、行動のパターンと誘発要因を明確にします。記録を積み重ねることで、「どの場面で・どのような行動が・どんな頻度で」起きているかが見えてきます。

環境調整:感覚過敏がある子どもには、音・光・人の密度など環境の刺激を調整することが行動を落ち着かせる第一歩になります。「問題行動を止めること」より「行動が起きにくい環境をつくること」を優先します。

支援手順書(個別対応マニュアル)の整備

強度行動障害のある子どもの支援では、職員によって対応が異なると混乱を招き、かえって行動障害を悪化させる可能性があります。個別の支援手順を文書化し、関わる全職員が統一した対応をとることが重要です。

支援手順書に含める項目の例:

  • 本人の行動特性(どのような状況でどの行動が出やすいか)
  • 先行刺激への対応(パニックになりやすい場面・物・音の種類と回避策)
  • パニック発生時の対応手順(声かけの言葉・トーン・退避空間への誘導)
  • 自傷・他傷が激しい場合の安全確保(本人と周囲を守るための最低限の身体介入)
  • 落ち着いたあとの関わり方(再発防止のための確認・本人の気持ちの整理)
  • 保護者への報告ラインと内容

支援手順書は個別支援計画と連動させ、モニタリングに合わせて更新します。

身体的介入と虐待の境界を明確にする

他傷・激しい自傷など緊急性が高い場面では、安全確保のための最低限の身体的介入が必要になることがあります。しかしこの判断は、虐待防止の観点からも職員全員が正確に理解していなければなりません。

指定通所支援基準の身体拘束廃止規定では「緊急やむを得ない」場合を除き身体的拘束は禁止されており、例外的に認める場合も「切迫性・非代替性・一時性」の三要件を満たすことと、本人・保護者への説明と記録が義務づけられています。

研修では、「緊急やむを得ない身体介入」と「虐待に相当する身体的拘束・暴力」の違いを、実際の場面を想定した事例で確認します。

研修で確認する内容

行動記録の取り方:ABC分析の記録様式の使い方・書き方を実際に練習します。「事実の記録」と「職員の解釈・印象」を区別して書く習慣が重要です。

支援手順書の確認:在籍する子どもの支援手順書を読み合わせ、「知っている職員」と「知らない職員」の差をなくします。新入職員が加わったタイミングでも実施します。

緊急対応の役割分担:他傷・自傷の激しいパニックが起きた場合に誰が何をするかを事前に確認します。「本人への関わり担当」「他の子どもの安全確保担当」「管理者・保護者への報告担当」の役割を人数に合わせて割り当てます。

記録として残すもの

  • 行動観察記録(ABC記録・頻度・強度)
  • 支援手順書とその更新履歴
  • 研修の実施記録(実施日・内容・参加職員名・受講確認サイン)
  • 緊急身体介入が発生した場合の記録(三要件の記述・本人・保護者への説明内容)
  • 強度行動障害支援者養成研修修了者の修了証のコピー(加算算定の根拠)

法定研修・訓練のキットを使う

放課後等デイサービス・児童発達支援向けの虐待防止・身体拘束廃止・事故発生防止テーマの教材・確認テスト・記録様式を収録した研修キットを公開しています。強度行動障害支援の研修にも活用できます。

▶ 虐待防止・身体拘束廃止テーマの研修教材・確認テスト付き研修キット


出典:指定通所支援の事業等の人員、設備及び運営に関する基準・厚生労働省「障害児通所支援の報酬・基準について」(令和6年度報酬改定)・厚生労働省「強度行動障害支援者養成研修の研修課程を定める件」(告示)。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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