訪問看護ステーションにPT・OT・STを雇うと、収入と費用はどう変わるか。

訪問看護ステーションにPT(理学療法士)・OT(作業療法士)・ST(言語聴覚士)を加えると、介護保険で1回294単位(その他地域で2,940円)の訪問収入が得られます。看護師の30分以上1時間未満(823単位・8,230円)より単価は低いですが、リハビリ需要のある利用者への対応が可能になります。ただし、前年度にPT等の訪問回数が看護職員の訪問回数を上回り、かつ特定の加算を算定していない場合は-8単位の減算が適用されます。

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PT・OT・STの介護保険の報酬は1回294単位

介護保険の訪問看護でPT・OT・STが訪問した場合、1回30分以内・294単位が算定されます(令和6年告示第86号)。看護師・准看護師の訪問と比べると次のとおりです。

職種・訪問区分 単位数 その他地域(円) 1級地(円)
看護師・30分以上1時間未満 823 8,230 9,382
PT・OT・ST(30分以内・1日1回) 294 2,940 3,351
PT・OT・ST(1日2回超・90/100) 264 2,640 3,010

PT等は「1回30分以内」という区分のみで、看護師のような複数の時間区分はありません。1日2回を超えて訪問する場合は所定単位数の90/100になります(令和6年告示第86号)。

PT・OT・STは人員基準の常勤換算2.5人に含まれない

訪問看護ステーションの開設に必要な人員基準(常勤換算2.5人以上の看護職員)には、PT・OT・STは含まれません(厚生労働省)。PT等は看護職員の人員基準を満たしたうえで「追加で雇う職員」という位置づけです。

人員基準を満たすために准看護師を採用し、そこにPT等を加えて多職種対応にする、という体制を取るステーションもあります。

-8単位減算が発生する条件

PT・OT・STの採用で注意が必要なのが、介護保険の-8単位減算(令和6年告示96号四の二)です。次の2つの条件をどちらも満たす場合、PT等が担当する訪問1回ごとに-8単位が適用されます。

  1. 前年度において、PT等の延べ訪問回数が看護職員の延べ訪問回数を上回った
  2. 前年度において、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない

この2つが重なった場合のみ減算が発生します。どちらか一方しか当てはまらない場合は減算になりません。

条件①: PT等の回数が看護職員を上回る 条件②: 上記加算のいずれも算定なし 減算
上回る 加算なし -8単位
上回る 加算あり(いずれか1つでも) 減算なし
上回らない(看護職員の方が多い) 加算なし・加算あり問わず 減算なし

新規開業の1年目は前年度の実績がないため減算なし

-8単位減算は「前年度」の実績に基づいて判断します。開業1年目は前年度の実績がないため、この減算は発生しません。開業2年目以降から、前年度の訪問回数と加算の算定状況によって判断されます。

減算を回避する2つの方法

開業2年目以降に減算を避けるには、次のどちらかを維持します。

  • 看護職員の訪問回数をPT等より多く保つ: 看護師・准看護師の訪問件数がPT等を上回っていれば、条件①を満たさないため減算にならない
  • 緊急時・特別管理・看護体制強化のいずれかを算定する: 24時間対応の緊急時訪問看護加算(600単位/月・I)や特別管理加算(500または250単位/月)が1件でも算定されていれば、条件②を満たさないため減算にならない

緊急時訪問看護加算は24時間対応の体制が必要ですが、24時間体制を整えること自体が医療保険の24時間対応体制加算(6,800円/月)の取得にもつながり、収入面でも有利に働きます。

PT等を入れると収入はどう変わるか

例として、現在の体制に週5日・月20回PT等の訪問を追加する場合(その他地域・1回あたり294単位)の収入増加を見ます。

  • 月20回 × 294単位 × 10.00円 = 58,800円/月の収入増

-8単位減算が発生した場合: 月20回 × (294 – 8)単位 × 10.00円 = 57,200円(差額1,600円の減少)。減算の影響は1回あたり80円(その他地域)と比較的小さいですが、回数が増えると差が広がります。

採用にかかる費用(給与・社保・研修)との比較は、実際の数値を入力してシミュレーターで確認してください。

医療保険でのPT・OT・ST

医療保険の訪問看護(訪問看護療養費)でも、一定の条件のもとでPT・OT・STが訪問することがあります。ただし、対象となる利用者の条件(精神疾患、要介護認定を受けていない方など)や算定の体系が介護保険と異なります。この記事では介護保険の内容のみを扱っています。医療保険でのPT等の訪問については、最新の告示・通知でご確認ください。

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参照した資料
厚生労働省告示第86号(指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準・令和6年改定)。同告示96号四の二(PT等の減算に関する施設基準)。数値は令和8年10月時点。1級地単価11.40円、その他地域単価10.00円。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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