令和5年4月1日から、保育所・認定こども園に安全計画の策定が義務づけられました。
「安全計画を作らなければいけないとは知っていたが、何を書けばいいかわからない」「非常災害計画とどう違うのか」という施設は多いです。この記事では、安全計画の義務の根拠・盛り込むべき内容・研修と訓練の進め方を整理します。
根拠条文は第6条の3
安全計画義務の根拠は、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第6条の3です。令和5年4月1日施行の改正で新設されました。
条文の要旨は次のとおりです。
- 乳幼児の安全の確保に関する事項についての計画(安全計画)を策定する
- 安全計画に基づき、職員への研修・保護者への周知・乳幼児への指導を実施する
- 安全計画の内容を定期的に見直す
この義務は努力義務ではなく、義務です。令和5年以降に運営指導を受けた施設では確認されています。「令和5年の義務化を知らなかった」という理由は通りません。
安全計画が対象とするリスク
安全計画は、保育所内で起こりうるすべての安全リスクを対象にします。おもに次の6つの分野が含まれます。
① 施設・設備の安全管理
園舎の老朽化・遊具の破損・門扉の施錠状況など、施設そのものに関する安全リスクを定期的に点検し、危険な箇所を記録して改修・修繕の計画を立てる取り組みです。
② 食物アレルギー対応
アレルギーのある子どもの誤食を防ぐための手順管理・エピペン対応を含むアレルギー対応を安全計画に位置づけます。「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」(厚生労働省・2019年改訂版)に基づく対応方針を文書化します。
③ 事故防止と対応
園内で起こりやすい事故(転倒・転落・誤飲・水の事故など)の防止策と、事故が起きたときの対応手順(応急処置・保護者への連絡・行政への報告)を定めます。
④ プール・水遊びの安全
プール・水遊びは、目を離した瞬間に溺水事故につながるリスクがあります。監視員の配置・子どもの体調確認・プールの水質管理・緊急時の対応手順を安全計画に盛り込みます。
⑤ 不審者対応
園への不審者の侵入・子どもへの接触を防ぐための手順(門扉管理・来訪者確認・不審者情報の共有)と、侵入が起きた場合の対応(子どもの避難誘導・警察への通報)を定めます。
⑥ 交通安全
バス送迎中の事故・散歩中の交通事故の防止策と、事故発生時の対応手順を定めます。特に送迎バスのおきざり事故(車内に子どもが残されたままになる事故)については、令和4年以降に義務化された確認装置・点呼の手順も含めます。
安全計画に必ず盛り込む内容
安全計画として機能させるために最低限必要な内容を整理します。
- 対象とするリスクの一覧(施設・アレルギー・事故・プール・不審者・交通安全など、その施設が対応すべき分野)
- 各リスクに対する予防策の手順(誰が・何を・いつ確認するかが分かる形で書く)
- 事故・緊急時の対応手順(誰に報告して・誰を呼んで・どこに通報するか)
- 研修・訓練の実施方針(年1回以上の研修と訓練の実施・記録の残し方)
- 保護者への周知方法(入園時の説明・年度ごとの通知など)
- 計画の見直しサイクル(年1回の定期見直しと、事故発生時の臨時見直し)
非常災害計画・BCPとの違い
安全計画・非常災害計画・BCPは別々の義務で、それぞれ根拠条文が違います。整理すると次のとおりです。
| 文書 | 根拠条文 | 義務化の時期 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 安全計画 | 第6条の3 | 令和5年4月 | 園内外のすべての安全リスク(施設・事故・アレルギー・プール・不審者・交通) |
| 非常災害計画 | 第6条第2項 | 昭和23年(当初から) | 避難・消火の手順。月1回の避難・消火訓練義務 |
| BCP | 第6条の4 | 令和6年4月 | 感染症・災害が発生しても保育を継続するための体制整備 |
「安全計画の中に避難・消火の手順を書けば非常災害計画を兼ねられる」と考えている施設がありますが、非常災害計画は第6条第2項で別に定められており、安全計画とは別に存在している必要があります。ただし、安全計画の中で非常災害計画への参照を入れることは問題ありません。
研修と訓練の進め方
第6条の3は、安全計画に基づく職員への研修と訓練の実施を求めています。頻度については「定期的に」という表現ですが、自治体の手引きでは年1回以上を目安とすることが多いです。
研修の内容
研修では安全計画の内容を職員全員に周知します。取り上げるべきテーマは次のとおりです。
- 安全計画の全体像と各分野の取り組みの確認
- 事故発生時の報告・対応手順の確認
- 直近の事故・ヒヤリハット事例の振り返り
- 施設・設備の安全点検結果の共有
- 次年度に向けた安全計画の見直し方針
訓練の内容
訓練は、特定のシナリオを想定した実際の行動確認です。安全計画に盛り込んだリスクの中から、その施設のリスクの大きさ・過去の事故・ヒヤリハットに応じて選びます。
- 不審者侵入のロールプレイ(子どもの避難誘導・警察通報の手順確認)
- アレルギー誤食のシミュレーション(エピペン投与・119通報の手順確認)
- プール事故の対応訓練(水中からの引き上げ・AED使用・蘇生の手順確認)
非常災害の避難・消火訓練(月1回以上)は安全計画の訓練とは別義務ですが、「今月の避難訓練を安全計画の観点から振り返る」という形で組み合わせることは可能です。
保護者への周知
安全計画は、保護者への周知も義務になっています。周知のタイミングと方法は施設ごとに判断できますが、一般的には次のような形が多いです。
- 入園時に重要事項説明書に安全計画の概要を盛り込んで説明する
- 年度始めのクラス懇談会や保護者会で安全計画の内容を説明する
- 安全計画の概要を掲示板・おたより・保護者向けポータルサイトに掲載する
「周知した記録」も残しておくことが望ましいです。懇談会の実施記録に「安全計画について説明した」という記載を残すか、配布した資料のコピーを保管してください。
記録の残し方
安全計画に関して残すべき記録は次のとおりです。
- 安全計画の本体(策定日・最終更新日を記載しておく)
- 研修の記録(実施日・テーマ・参加者の氏名)
- 訓練の記録(実施日・想定シナリオ・参加者・課題点)
- 施設・設備の安全点検記録
- ヒヤリハット・事故の記録(第6条の3の安全計画見直しの根拠になる)
- 保護者への周知の記録
安全計画は「策定した」だけでは不十分で、実際に研修・訓練を実施して記録が残っている状態が必要です。運営指導では安全計画の本体だけでなく、研修・訓練の実施記録まで確認されることがあります。
安全計画の見直しサイクル
第6条の3は「定期的に見直す」ことを求めています。年1回の定期見直しに加えて、次のタイミングで臨時の見直しをすることが望ましいです。
- 重大な事故やヒヤリハットが発生したとき
- 施設・設備の大きな変更があったとき
- 新しいガイドライン・通知が出て対応が変わったとき
- 職員体制や子どもの構成に大きな変化があったとき
見直しをしたときは、安全計画に「最終更新日」を記載し、変更内容を記録に残してください。
まとめ
保育所の安全計画義務のポイントをまとめます。
- 根拠は第6条の3。令和5年4月1日から義務
- 対象とするリスクは6分野:施設・アレルギー・事故・プール・不審者・交通安全
- 非常災害計画(第6条第2項)・BCP(第6条の4)とは別物
- 研修と訓練を定期的(年1回以上)に実施し、記録を残す
- 保護者への周知も義務
- 年1回以上の定期見直しが必要
安全計画に関する研修資料・確認テスト・訓練記録様式を用意したツールがあります。ぜひ活用してください。


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