クレーンの吊り荷用具と銘板(表示プレート)とは
クレーンで荷を吊り上げるために使用する「吊り荷用具(玉掛け用具)」には、安全使用のための必要事項を示した「銘板(めいばん)」または「表示タグ」が取り付けられています。銘板はユーザーが用具の正しい使用方法・使用制限を確認するための重要な情報源です。試験(クレーン知識・法令)では、吊り荷用具に記載される表示事項が問われることがあります。
吊り荷用具の種類
クレーンで使用される主な吊り荷用具を整理します。
| 用具名 | 材質・形状 | 主な用途 |
| ワイヤーロープスリング | 金属素線を撚ったロープ。両端にアイ(輪)を加工 | 重量物・鋼材・機械設備の吊り上げ |
| ナイロンスリング(繊維スリング) | 合成繊維(ナイロン・ポリエステル等)を織り込んだベルト状・ラウンド状 | 傷をつけたくない荷・軽量物・表面仕上げ品 |
| チェーンスリング | 金属鎖(リンクチェーン)。先端にフック・マスターリング | 高温・酸・油環境での使用。機械設備の吊り上げ |
| シャックル | U字形鋼にピン(ボルト)を通した金具 | ワイヤー・スリング・チェーンをフックに繋ぐ接続金具 |
| 吊りビーム(スプレッダービーム) | 鋼製の梁(ビーム)に複数の吊り点がある | 長尺物・複数点吊りが必要な大型荷物 |
銘板(表示タグ)に記載される主な事項
吊り荷用具の銘板・表示タグには、安全使用に必要な次の情報が表示されます。
- 使用荷重(WLL: Working Load Limit):その用具を単独で使用できる最大許容荷重。単位はt(トン)またはkg。これを超えて使用することは厳禁
- サイズ・仕様:ワイヤーロープのゲージ径・チェーンのリンク径・スリングの幅・長さ等
- 使用角度による荷重変化:スリングを2本かけで使用する場合、掛け角度(開き角度)によって使用荷重が変化する。銘板や別表で角度別の許容荷重が示される
- 製造者名・製品番号:メーカー名・ロット番号。不具合発生時の追跡に使用
- 製造年月(または検査年月):使用開始からの経過年数を把握するため
- 廃棄基準の目安:ナイロンスリングでは繊維の断裂・著しい摩耗・酸アルカリ接触等が廃棄基準
使用荷重(WLL)と掛け角度の関係
スリングを2本掛けで使用する場合、スリングの開き角度が大きくなるほど各スリングにかかる張力(荷重)は増加します。
| 掛け角度(2本の開き角) | 使用荷重の目安(1本掛け比) | 各スリングの張力 |
| 0°(垂直2本掛け) | ×2.0 | 荷重÷2(半分ずつ) |
| 60°(2本の開き角60°) | ×1.73(≒×√3) | 荷重÷√3 |
| 90°(2本の開き角90°) | ×1.41(≒×√2) | 荷重÷√2 |
| 120°(2本の開き角120°) | ×1.0(1本掛けと同等) | 荷重と同等(非効率) |
掛け角度が120°を超えると、各スリングの張力が荷重以上になり危険です。一般的に掛け角度は
90°以内での使用が推奨されます。試験でも「掛け角度と張力の関係」は計算問題として出題されます。
ナイロンスリングの銘板の色コード
ナイロンスリング(繊維スリング)は、使用荷重・幅・色によって識別します。JIS規格では幅・色・使用荷重の組み合わせが標準化されています。
- 色コードの例(JIS規格):スリングの縁・ラベルの色で使用荷重が分かる(例:紫・緑・黄・灰・赤・茶・青・橙の順に荷重増加)
- 実務での確認:色だけでなく必ず銘板の「WLL(使用荷重)」を数値で確認する。色は大まかな識別用
スリングの点検と廃棄基準
スリングは使用前の点検が必要です。廃棄(使用禁止)の基準は材質によって異なります。
- ワイヤーロープスリング:断線(1よりの間に素線数の10%以上)・直径減少(公称径の7%超)・キンク・著しい変形腐食 → ワイヤーロープの廃棄基準と同一
- ナイロンスリング(繊維スリング):繊維の切断・著しい摩耗・縫い目のほつれ・酸・アルカリ・溶融金属との接触があったもの・著しい変形 → 廃棄
- チェーンスリング:チェーンの伸び(原長の5%超)・著しい摩耗(原径の10%超)・き裂・変形・リンクの開口 → 廃棄
- シャックル:変形・ピンの損傷・ネジ部の摩耗・き裂 → 廃棄
吊り荷用具の選定ポイント
- 吊り荷の重量:用具のWLL(使用荷重)が吊り荷の重量以上であることを確認する。多本掛けの場合は掛け角度も考慮する
- 吊り荷の形状・温度・表面状態:高温物にはチェーンスリング。表面保護が必要な場合はナイロンスリング。油・酸がかかる場所は耐化学性を確認
- 吊り点の形状:シャックルの形状(バウ型・ストレート型)と用途の一致
一問一答(試験対策)
- Q:スリングの銘板に記載される「WLL」とは何か? A:Working Load Limit(使用荷重)。その用具が使用できる最大許容荷重
- Q:2本掛けスリングの開き角度が大きくなるとどうなるか? A:各スリングにかかる張力が増加し、より大きな荷重が作用する
- Q:スリングの掛け角度は一般的に何度以内が推奨されるか? A:90°以内
- Q:ナイロンスリングを廃棄すべき状態は? A:繊維の切断・著しい摩耗・酸アルカリとの接触・縫い目のほつれ等
- Q:チェーンスリングの廃棄基準(伸び)は原長の何%超か? A:5%超
まとめ
吊り荷用具の銘板・WLL表示は安全管理の基本情報です。2本掛け時の掛け角度と張力の関係(90°以内推奨)、各スリングの廃棄基準(ワイヤー10%断線・チェーン伸び5%・ナイロン繊維切断等)は試験でよく問われます。現場では使用前に必ず銘板のWLLを確認し、掛け角度・荷重の適合を判断することが安全管理の基本です。
クレーン・デリック運転士の過去問演習には
AI問題演習アプリをご活用ください。
シャックルの種類と使用荷重
シャックルは吊り荷用具を接続するための金具で、玉掛け作業では欠かせない部品です。種類ごとの特性と使用荷重(WLL)を理解しましょう。
| 種類 | 形状の特徴 | 主な用途 |
| バウシャックル(Ω形) | U字部が丸く幅広い。ロープやリングが多方向から力を受けられる | スリングの中間接続・複数スリングの集結 |
| ストレートシャックル(D形) | U字部が直線的。ピンと同じ方向に力がかかる用途 | 一方向の荷重を受ける接続部 |
- シャックルの締め付け:ピン(ボルト)をしっかり締め込み、割りピン(コッタピン)を差し込んで抜け防止をする。割りピンの差し忘れは重大事故の原因になる
- シャックルのWLL確認:シャックル本体に刻印またはタグで表示されているWLLを確認する。クレーンのつり上げ荷重よりシャックルのWLLが小さい場合は、シャックルが破損先になる
- 廃棄基準:変形(特にU字部の開き)・ピンの損傷・ネジ部の摩耗・き裂があれば廃棄
コメント