就労継続支援B型の生産活動の安全と工賃、研修で扱う義務の根拠と現場の問題。

就労継続支援B型の生産活動の安全と工賃、研修で扱う義務の根拠と現場の問題。 福祉事業の開業と運営





就労継続支援B型の生産活動の安全と工賃、研修で扱う義務の根拠と現場の問題。

就労継続支援B型の生産活動の安全と工賃、研修で扱う義務の根拠と現場の問題。

就労継続支援B型には、他の障害福祉サービスにはない固有の義務があります。それが「生産活動の安全管理」と「工賃の適正な支払い」です。指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第84条・第201条に規定されており、これを職員が理解していることを研修で確認する必要があります。

この記事では、就労継続支援B型の生産活動の安全と工賃に関する研修の内容を整理します。

根拠となる条文

指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)では、就労継続支援B型に関して次のことが定められています。

第84条(生産活動)では、指定就労継続支援B型事業者は、利用者に対し、その就労や生産活動の機会の提供を通じ、その知識・能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、その者の生産活動に係る成果物の販売等により得た収益から、必要経費を控除した額を工賃として利用者に支払わなければならないと定められています。

第201条(準用)では、指定就労継続支援B型事業所に関して、上記第84条が準用されます。

工賃とは何か

就労継続支援B型で支払われる「工賃」は、「訓練の対価」でも「補助金」でもありません。利用者が行った生産活動の成果(生産物・サービス)を外部に販売等して得た収益を、必要経費を差し引いた後に利用者に分配するものです。

そのため工賃の計算は「売上から経費を引いた額を利用者で分ける」という構造になります。売上がなければ工賃は発生しません。また、経費として差し引けるのは「生産活動に直接必要な費用」です。事務所の賃料や光熱費など事業所の運営経費は原則として生産活動の経費として工賃から引くことができません。

工賃の計算と支払い

工賃月額の水準

厚生労働省の調査(令和4年度)では、就労継続支援B型の平均工賃月額は17,031円(1日換算:約890円)です。都道府県ごとに工賃目標水準が設定されており、目標を達成するための工賃向上計画の策定も求められています。

この水準は法律で決まった最低賃金とは全く別の仕組みです。就労継続支援B型は「雇用契約に基づかない」サービスであるため、最低賃金法の適用外です。

工賃の帳簿管理

工賃の計算・支払いには帳簿の整備が必要です。研修では次の内容を確認します。

  • 工賃計算の根拠(何の作業で・何を販売して・いくら収益があったか)
  • 経費として差し引いた項目と金額の記録
  • 各利用者への支払い額の計算方法(労働時間・出来高・均等割など事業所によって異なる)
  • 工賃台帳の作成と保管

利用者への説明の方法

工賃の額と計算の根拠は、利用者本人にわかるように説明する義務があります。ただし、利用者の中には書面の内容を理解することが難しい方もいます。研修では「この利用者にはどう説明するか」という視点から説明の方法を確認します。

  • 簡単な言葉での口頭説明(図や写真を使う方法)
  • 保護者・支援者への説明と確認
  • 利用者が「工賃はいつ・いくら・なぜこの額か」を理解している状態をつくること

生産活動の安全管理

作業環境の安全確認

就労継続支援B型で行われる生産活動には、軽作業・手工芸・農作業・清掃・食品加工・印刷など多様なものがあります。作業の内容によっては次のような安全上のリスクがあります。

作業の種類 主な安全上のリスク
軽作業(袋詰め・箱折り等) 繰り返し動作による筋疲労・身体への負担
農作業(野菜の収穫・植え付け等) 熱中症・農薬・土壌からの感染症・農具による怪我
清掃作業 洗剤・消毒液の取り扱い・梯子・高所からの転落
食品加工 刃物・加熱機器の取り扱い・食中毒リスク
木工・手工芸 刃物・接着剤・塗料の取り扱い・粉塵

利用者の体調・能力に合わせた作業割り当て

就労継続支援B型の利用者は、身体的・知的・精神的な障害の種類・程度がそれぞれ異なります。「全員に同じ作業をさせる」ことが安全上の問題になることがあります。

  • 手先の細かい動作が難しい利用者に精密作業を割り当てることのリスク
  • 体力が低下している利用者に重い物の運搬を割り当てることのリスク
  • 精神的に不安定な状態のときに刃物を使う作業に就かせることのリスク

個別支援計画で設定した「この利用者が安全に従事できる作業の種類・量・時間」を現場のスタッフが把握していることが重要です。

事故発生時の対応

生産活動中に事故が発生した場合の対応手順(初期対応・管理者への報告・保護者への連絡・記録)を研修で確認します。「事故報告書の書き方」「再発防止策の立て方」も研修の内容に含めることが有効です。

工賃の経済的虐待との関係

工賃の不当な搾取・不透明な扱いは、障害者虐待防止法の「経済的虐待」に該当する可能性があります。研修では生産活動の安全と工賃の問題を虐待防止と合わせて扱うことで、「工賃は利用者のもの」という意識を職員に持ってもらうことが目的の一つです。

研修・訓練キットを活用する

就労継続支援B型の固有テーマ「生産活動の安全と工賃」を含む研修教材・確認テスト・記録様式をまとめたキットを公開しています。虐待防止テーマはすべての機能を無料で使えます(その他のテーマはProプランの対象です)。

▶ 就労継続支援B型 法定研修・訓練キット


出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第84条・第201条・厚生労働省「就労継続支援B型に係る報酬・基準について」。工賃月額の全国平均(17,031円)は令和4年度の厚生労働省調査に基づきます。都道府県ごとの工賃目標水準は各都道府県の案内で確認してください。


この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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