就労継続支援B型の地域区分と収入の違い。1単位の単価は地域で変わる。

就労継続支援B型の介護報酬は「単位数×1単位の単価」で計算しますが、この1単位の単価は事業所の所在地によって異なります。最も高い1級地(東京都特別区等)は1単位10.90円、最も低い「その他」は1単位10.00円です。同じサービスを同じ定員・稼働率で提供しても、所在地の地域区分によって年間の収入に数十万円から数百万円の差が生じます。この記事では、地域区分の仕組み、区分ごとの単価、収入への影響の試算、そして開業地を選ぶ際の考え方を整理します。

地域区分とは、所在地によって1単位の単価が変わる仕組み

障害福祉サービスの報酬は「単位」という共通の尺度で設定されています。各サービスの報酬単位数は全国一律ですが、その単位数に掛ける「1単位の単価」は地域によって異なります。これが地域区分の仕組みです。

地域区分が設けられている理由は、地域間の物価・人件費の差を報酬に反映させるためです。都市部では人件費や家賃が高く、地方と同じ単価では採算が合わなくなる場合があります。地域区分による単価の調整は、事業所が全国どこでも一定の質でサービスを提供できる環境を整える目的で設けられています。

根拠法令は、厚生労働大臣が定める一単位の単価(平成12年厚生省告示第24号、令和6年3月改定)です。地域区分の適用は、市区町村ごとに指定されており、事業所の所在する市区町村の区分が適用されます。

地域区分は8区分に分かれており、単価は1単位10.00〜10.90円

令和6年4月改定後の地域区分と1単位の単価は次のとおりです(障害福祉サービスの場合)。

地域区分と1単位の単価(令和6年4月〜)
地域区分 1単位の単価 主な対象地域(例)
1級地 10.90円 東京都特別区・武蔵野市・三鷹市など
2級地 10.72円 横浜市・川崎市・大阪市・名古屋市の一部など
3級地 10.68円 さいたま市・千葉市・大阪市の一部など
4級地 10.54円 京都市・神戸市・北九州市など
5級地 10.45円 仙台市・広島市・福岡市など
6級地 10.27円 札幌市・那覇市など
7級地 10.14円 政令指定都市以外の中核市など
その他 10.00円 上記以外の市区町村

なお、上記の主な対象地域はあくまで例示です。実際の地域区分は市区町村ごとに告示で定められており、同じ市内でも区によって区分が異なる場合があります。開業を検討している市区町村の区分は、都道府県または市区町村の障害福祉担当窓口、あるいは厚生労働省の地域区分一覧表で確認してください。

1単位の単価が違うと、年間収入はどのくらい変わるか

地域区分の違いが収入にどのくらい影響するか、試算で確認します。

就労継続支援B型の基本報酬は、定員の区分と前年度の平均工賃月額の区分によって決まります(告示523号 別表第14)。新規事業所は前年度実績がないため、最も低い工賃月額区分からスタートします。

ここでは仮に「定員20名以下・工賃月額0円(新規開業1年目)」の場合の基本報酬単位数を使って試算します。具体的な単位数は告示で定められていますが、ここでは仮に1日あたりXX単位(告示原文で確認してください)として計算の考え方を示します。

1単位の単価の差(1級地10.90円とその他10.00円の差)は1単位あたり0.90円です。1日の報酬単位数を500単位、月の営業日数を22日、利用者が定員20名・稼働率80%(1日平均16名)とすると:

  • 1日の総単位数:500単位 × 16名 = 8,000単位
  • 1単位0.90円の差 × 8,000単位 × 22日 = 158,400円/月
  • 年間:158,400円 × 12か月 = 約190万円

この試算はあくまで概算ですが、地域区分の差(1級地とその他)によって年間200万円前後の収入差が生じる可能性があります。基本報酬が高い工賃月額区分に上がれば、その差はさらに広がります。

加算も同様に「単位数×1単位の単価」で計算されるため、地域区分が高いほど加算収入も増えます。

自分の事業所の地域区分を確認する方法

地域区分は、厚生労働省が示す「地域区分の適用地域一覧」で確認できます。厚生労働省のウェブサイト(報酬改定の資料)に市区町村ごとの区分一覧が公表されています。

また、都道府県または指定都市・中核市の指定権者に問い合わせることでも確認できます。指定申請の際に、担当窓口が地域区分を案内してくれる場合もあります。

注意点として、地域区分は介護報酬の改定(3年に1度)に合わせて見直されることがあります。開業後も改定のたびに自事業所の地域区分が変わっていないか確認する必要があります。

処遇改善加算・特定処遇改善加算も地域区分の影響を受ける

処遇改善加算(福祉・介護職員処遇改善加算)と特定処遇改善加算(福祉・介護職員等特定処遇改善加算)も、単位数に1単位の単価を掛けて算定されます。そのため、地域区分が高いほど加算額も高くなります。

令和6年改定では、これらの加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化される方向で整理されています。加算率は就労継続支援B型の場合、加算Ⅰ〜Ⅳの区分があります(詳細は告示・厚労省資料で確認してください)。

たとえば基本報酬の月額が100万円の事業所と120万円の事業所では、加算率が同じでも加算額に20万円×加算率の差が生じます。地域区分が高い都市部では、基本報酬の絶対額が大きくなるため、加算の絶対額も高くなる傾向があります。

一方で、都市部は人件費・家賃が高く、加算の取り方や職員配置も差し引きで考える必要があります。地域区分が高い=必ず黒字になる、ということではありません。

地域区分は誰が決めるか・変更される仕組み

地域区分は厚生労働大臣が告示で定めています(厚生労働大臣が定める一単位の単価・平成12年厚生省告示第24号)。改定は原則として介護報酬・障害福祉サービス等報酬の改定(3年ごと)に合わせて実施されます。

市区町村が区分の変更を申し出ることができる制度もありますが、実際に変更されるかは厚生労働省の判断によります。急激な単価の変更による事業所経営への影響を避けるため、区分の変更は慎重に行われる傾向があります。

3年ごとの改定によって、自分の事業所の単価が変わる可能性があることを念頭に置いて、年度ごとの収支計画を立てることが重要です。

開業地と地域区分の考え方

開業地の選定において、地域区分は判断材料の一つになります。ただし、地域区分だけで開業地を決めることは現実的ではありません。以下の点を総合的に考慮することが重要です。

地域区分が高い(都市部)のメリット・デメリット

  • メリット:1単位の単価が高いため、同じサービス提供量でも収入が増える
  • デメリット:家賃・人件費が高く、コストも増える。競合事業所が多く、利用者の確保が難しい場合がある

地域区分が低い(地方・郊外)のメリット・デメリット

  • メリット:家賃・人件費が低く、固定費を抑えられる。競合が少ない地域では利用者を確保しやすい場合がある
  • デメリット:1単位の単価が低く、同じサービス提供量でも収入が少なくなる

地域区分の単価差(10.00円〜10.90円)を純粋な差として見ると、最大9%の収入差が生じます。この差が経営の成否を左右するほど大きいかどうかは、事業規模・コスト構造によって異なります。

実務的には、「どの地域に支援が必要な人が多いか」「法人の拠点がどこにあるか」「開設者が日常的に関与できる距離か」といった要素も、開業地選定の重要な判断軸になります。

地域区分と収支計画書への反映

開業前の収支計画を立てる際、地域区分を正確に反映することが重要です。同じ定員・稼働率でも地域区分が違えば収入額が変わるため、金融機関への事業計画書や補助金申請書にも地域区分を明示することが求められます。

計画書に地域区分と1単位の単価を明記することで、収入の根拠が明確になり、金融機関の審査でも信頼性が高まります。

「地域区分はその他(10.00円)だが、工賃向上に取り組み3年後には工賃月額2万円台に上げることで収入が〇〇万円増加する」といった形で、地域区分の固定要因と工賃向上による可変要因を分けて計画書に記載するとわかりやすくなります。

よくある質問

事業所が複数の市区町村にまたがる場合、地域区分はどう決まるか

基本的に、事業所の所在する市区町村の区分が適用されます。送迎などでサービスを提供する市区町村ではなく、事業所の所在地が基準になります。

同じ市内で地域区分が変わることがあるか

あります。大都市では、区によって地域区分が異なる場合があります。たとえば東京都内でも特別区(1級地)と市部(2〜その他)では区分が違います。開業予定地の市区町村・区単位で確認してください。

地域区分の変更はいつわかるか

報酬改定の時期(通常は改定前年の12月〜2月頃)に厚生労働省から告示案が公表されます。次回の改定は令和9年4月が予定されています(令和9年改定)。

地域区分が上がれば処遇改善加算の原資も増えるか

処遇改善加算は基本報酬を含む報酬額に加算率を掛けて算定されます。地域区分が高ければ基本報酬も増えるため、処遇改善加算の算定額も増えます。ただし、加算は職員の賃金改善に充てる義務があります。単純な「利益」の増加にはなりません。

まとめ

就労継続支援B型の地域区分は、1単位の単価を決める重要な要素です。1級地(10.90円)からその他(10.00円)まで8区分があり、事業所の所在する市区町村の区分が適用されます。

同じサービス提供量でも地域区分によって年間収入に数十万円〜数百万円の差が生じる可能性があります。開業地の選定では地域区分だけでなく、家賃・人件費・競合状況・支援を必要とする利用者数といった要素も合わせて検討することが重要です。

自分の事業所の地域区分は、厚生労働省の地域区分一覧または都道府県の指定担当窓口で確認できます。改定のたびに変更される可能性があるため、次の改定時期にも確認を忘れないようにしてください。

就労継続支援B型の開業前の収支試算をするなら、就労継続支援B型 収支シミュレーターをご活用ください。定員・稼働率・地域区分の単価を入力して、月次・年次の収支の見通しを確認できます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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