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ボイラーでは燃焼ガスの熱を缶水に伝えるために、物理的な熱移動が起きています。熱の移動には「放射(輻射)」「対流」「伝導」の3形式があり、それぞれがボイラーの各部で異なる割合で働いています。二級ボイラー技士試験では3形式の定義・特徴・ボイラー各部との対応関係が出題されます。
熱伝達の3形式
| 形式 | 英語 | 定義 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 放射(輻射) | Radiation | 熱を持つ物体が電磁波(赤外線・可視光等)として熱エネルギーを放射する現象。媒体がなくても熱が伝わる | 距離に反比例(正確には距離の2乗に反比例)。温度差が大きいほど強い。真空でも伝わる |
| 対流 | Convection | 流体(ガス・液体)が流れることで熱が運ばれる現象。自然対流と強制対流がある | 流体の流速・密度差が大きいほど熱移動が多い。媒体(流体)が必要 |
| 伝導(熱伝導) | Conduction | 固体内または接触した物体間を熱が分子振動で伝わる現象 | 熱伝導率(W/(m·K))が大きい材料ほど熱が伝わりやすい。鋼は水の約30倍の熱伝導率。スケールは鋼の1/30以下 |
ボイラー各部での熱伝達形式
| 部位 | 主な熱伝達形式 | 説明 |
|---|---|---|
| 炉(燃焼室)内の炉壁・炉筒 | 放射(輻射)が主体 | 炎が高温(1000℃超)の輻射体として炉壁に直接放射熱を与える。ガス温度が高いほど放射の寄与が大きい |
| 煙管・水管の管束部 | 対流が主体 | 燃焼ガスが管表面に当たって流れる際の対流熱移動が主体。管内の缶水には対流と伝導が働く |
| 過熱器 | 放射+対流 | 位置によって炉内(放射)か煙道(対流)かで異なる |
| エコノマイザ | 対流が主体 | 低温排ガスが管表面を流れる際の対流熱移動 |
| ボイラー管の管壁(金属) | 伝導 | 管外側の熱を管壁を通して管内の水に伝える。熱伝導率が高い金属ほど伝わりやすい |
放射熱移動の特徴とボイラーへの影響
燃焼炉内では放射熱移動が支配的です。放射熱量は温度の4乗に比例(ステファン-ボルツマンの法則)するため、炉内温度が高い火炎に近い部分ほど急激に熱移動が増えます。
- 炉内温度が高いほど放射が活発になり、炉壁への熱流量が増加する
- 火炎の直撃を受ける部分(特に輻射過熱器)は特に高温になる
- 炉壁に付着したスラグ・灰は輻射熱を遮断して缶水への熱伝達を妨げる
対流熱移動と流速の関係
煙管・水管の管束部では対流熱移動が主体です。燃焼ガスの流速が速いほど、また管表面が清浄(すすの付着が少ない)なほど熱移動効率が高くなります。
- 強制対流:ファン・ポンプで流体を強制的に流す。自然対流より熱移動が大きい
- 管内缶水側の対流:缶水が沸騰・循環することで管内壁との対流が起き、熱を吸収する
- すすの付着:燃焼不良ですすが煙管外面に付くと熱伝達が低下し、管温度が上昇して過熱につながる
熱伝導率と伝熱の関係
| 物質 | 熱伝導率(W/(m·K))の目安 | ボイラーへの影響 |
|---|---|---|
| 鋼(ボイラー管材) | 50〜60 W/(m·K) | 高い→管壁での熱伝達は良好 |
| 水 | 0.6 W/(m·K) | 低い→缶水側は対流熱伝達が支配的 |
| スケール(炭酸カルシウム等) | 約1〜2 W/(m·K) | 鋼の1/30以下→管にスケールが付くと熱が伝わりにくくなり管が過熱する |
| すす(炭素) | 約0.1 W/(m·K) | 鋼の1/600程度→すすが煙管外面に付くと熱伝達が著しく低下 |
スケール・すすが熱効率に与える影響
スケールとすすはいずれも断熱材として働き、燃焼ガスの熱を缶水に伝えることを妨げます。
- スケール:管内面(缶水側)に付着する水垢。炭酸カルシウム・硫酸カルシウムなどが主成分。管壁温度が上昇して過熱・焼損の原因になる。厚さ 1 mm のスケールで熱伝達抵抗は大幅に増加する
- すす:管外面(燃焼ガス側)に付着する未燃炭素。燃焼不良・空気比不足が原因。煙管の伝熱を妨げ、排ガス温度の上昇・熱損失増大につながる
試験で間違えやすいポイント
- 「放射(輻射)は媒体(空気・水)がないと伝わらない」は誤り。放射は電磁波であり真空中でも伝わる
- 「燃焼炉内の熱伝達はほぼすべて対流によるもの」は誤り。炉内は放射が主体。対流が主体なのは煙管・管束部
- 「スケールは熱伝達を促進する」は誤り。スケールは熱伝導率が低く、熱伝達を妨げる(断熱材として働く)
- 「熱伝導率が低い材料ほど管材として優れている」は誤り。管材には熱伝導率が高い材料が必要。熱伝導率が低いと熱が伝わらず過熱する
この記事のまとめ
- 熱伝達の3形式:放射(輻射)=電磁波・真空でも伝わる。対流=流体の流れ。伝導=固体内の分子振動
- 燃焼炉内は放射が主体。煙管・管束部は対流が主体。管壁を通る際は伝導
- スケール(管内面)・すす(管外面)は熱伝達を妨げ、管過熱・熱損失増大の原因
出典:ボイラー及び圧力容器安全規則(e-Gov法令検索)・ボイラー構造規格(昭和47年労働省告示第33号)・安全衛生技術試験協会 公表試験問題
作成:fufumumu_design|更新:2026年11月
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