就労継続支援B型の医療的ケア研修、職員ができる行為とできない行為の確認。

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就労継続支援B型の利用者の中には、持病の管理や身体的なケアが必要な方が多くいます。職員が「どこまで対応できるか」を正確に把握していないと、医療行為に当たる行為を誤って行うリスクと、本来できる対応を過度に遠慮して利用者を放置するリスクの両方が生じます。

この記事では、医療行為と医療行為でない行為の線引き、職員ができる具体的な行為、インスリン補助や喀痰吸引の取り扱い、主治医・看護師との連携体制について整理します。

医療行為と医療行為でない行為の線引きは厚生労働省の通知が基準

医師法第17条は、医師でない者が医業(医療行為)を行うことを禁じています。一方、厚生労働省は平成17年の医政局長通知で、「原則として医師法第17条等に規定する医業等に該当しない行為」を明示し、介護・福祉の現場での取り扱いを整理しています。

この通知に基づき、B型の職員が対応できる行為とできない行為は次のとおりです。

区分 行為の例 根拠・条件
職員ができる行為(医療行為に当たらない) 体温測定・血圧測定・酸素飽和度の測定(パルスオキシメーター)
軟膏の塗布(褥瘡を除く)
湿布の貼り付け
目薬の点眼
市販薬の手渡し(本人が自分で服用できる場合)
耳垢の除去(耳かき程度)
鼻腔粘膜への薬剤噴霧(本人またはその補助)
平成17年医政局長通知に列挙された「医業に該当しない行為」
医療行為に当たり職員ではできない行為 注射(インスリン注射・点滴の操作)
褥瘡の処置(消毒・ガーゼ交換)
浣腸・摘便
導尿(カテーテル挿入)
喀痰吸引(資格なし職員による実施)
医師法第17条。資格なく行った場合は違法

「軽いケアだから大丈夫」という感覚で行為の線引きを判断するのは危険です。「この行為は通知に明記されているか」を研修で確認し、判断に迷う行為は主治医に事前に確認しておくことが安全な運営の基本です。

インスリン自己注射の補助は本人の意思に基づく場合に認められる

糖尿病の利用者が自分でインスリン注射を行う場面で、手が震えてペンが持てないなど、本人だけでは実施が難しい状況があります。このとき、職員が「注射する行為そのものを代わりに行う」ことは医療行為に当たります。

一方、本人がインスリンを自己注射するにあたって、職員が次のような補助を行うことは医療行為に当たらないとされています。

  • 注射部位(太もも・腹部等)に消毒綿を当てる補助
  • 本人が注射するペンを持つ手を支える補助
  • 使用済みの注射針を専用容器に捨てる補助

いずれも「本人の処方に基づく自己注射」であり、「本人の意思に基づいて職員が補助する」行為です。「代わりに注射する」ではなく「本人が注射する行為を支える」という範囲に限られます。

インスリンの単位数の確認・ペンのダイヤル操作は「本人の処方通りに本人が行う」行為のため、職員が勝手に変更したり操作したりすることは認められません。補助の範囲は利用者・家族・主治医と事前に確認し、個別支援計画に記載します。

喀痰吸引は第3号研修修了者のみ実施できる

喀痰吸引(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部への吸引)は、社会福祉士及び介護福祉士法附則第3条の規定により、一定の研修(喀痰吸引等研修)を修了した職員のみが実施できます。

資格の種類と実施できる行為の範囲は次のとおりです。

研修の種類 実施できる喀痰吸引の範囲
第1号研修・第2号研修 不特定多数の対象者(口腔内・鼻腔内・気管カニューレ内部)
第3号研修 特定の利用者(特定の対象者のみ。事業所内での医師の指示のもと)
研修未修了の職員 実施不可。緊急時でも「喀痰吸引を行う」ことはできない

B型で喀痰吸引が必要な利用者を受け入れる場合は、事前に実施可能な職員の有無を確認します。研修修了者がいない状態で受け入れることは、緊急時に適切な対応ができないリスクを生みます。喀痰吸引が必要な利用者のアセスメントでは、訪問看護師や医療機関との連携体制を個別支援計画に明記します。

判断に迷う行為は主治医に事前に確認する

通知に明記された行為以外で、「これはできるのか」と判断に迷う場面は実際の支援で多く発生します。その場での判断で対応するのではなく、次の方法で事前に確認します。

  • 利用開始時のアセスメントで医療ケアの状況を確認する:通院先・処方薬・日常的に必要なケア(軟膏塗布・点眼等)を把握し、個別支援計画に記載する
  • 主治医に「事業所として対応できる範囲」を確認する:「〇〇(行為名)は職員が対応してよいか」を直接確認し、その回答を記録する
  • 訪問看護師との連携体制を整える:医療的ケアが日常的に必要な利用者については、訪問看護師が定期的に関与する体制をつくる

「よく分からないが必要そうだから行った」という状況が最もリスクが高くなります。事前確認と記録が、職員と事業所を守る手順です。

研修で確認する3つのこと

  1. できる行為・できない行為の一覧を全員で確認する:厚生労働省通知に基づく「医療行為に当たらない行為」の一覧表を読み合わせ、判断に迷うケースを挙げて議論する
  2. 現在の利用者で医療的ケアが必要な方の状況を確認する:担当職員が各利用者の通院先・処方薬・日常ケアの内容を把握しているかを確認する
  3. 判断に迷う場面の連絡先を確認する:「分からない行為が出たときに誰に確認するか」(主治医・サービス管理責任者・管理者)の手順を全員で共有する

まとめ

就労継続支援B型の医療的ケア研修では、医師法第17条と厚生労働省の通知に基づき、職員ができる行為とできない行為の線引きを全員で確認します。体温測定・軟膏塗布・点眼・湿布貼り付けなどは医療行為に当たらず職員が対応できる行為ですが、注射・浣腸・褥瘡処置は職員にはできません。インスリン補助は本人の自己注射を「支える」範囲に限られ、喀痰吸引は第3号研修修了者のみ実施できます。判断に迷う行為は主治医に事前確認し、個別支援計画に記録することが適切なサービス提供(指定基準第198条・第202条)の実践です。

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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第198条・第202条。医師法第17条。社会福祉士及び介護福祉士法附則第3条。厚生労働省医政局長通知(平成17年)。作成日:2026年10月。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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