児童発達支援の法人別収支差率、営利法人15.7%が最高・社会法人-8.0%が最低の理由

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厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)によると、児童発達支援(児発)の収支差率は営利法人15.7%・NPO法人11.3%に対して、社会法人(社協含む)は-8.0%と大幅な赤字です。同じ児発サービスで23.7ポイントの差があり、7サービス中で最大の法人形態別格差です。

児発の法人形態別収支差率

法人形態 事業所数 平均年収入 収支差額 収支差率
営利法人 202件 1,755万円 275万円 15.7%
NPO法人 23件 1,953万円 221万円 11.3%
その他 51件 2,996万円 135万円 4.5%
社会法人(他含む) 44件 3,547万円 -284万円 -8.0%

営利法人が最多(202件・全体の62%)で最高の収支差率(15.7%)です。社会法人は事業所数が最少(44件・14%)でありながら唯一の大幅赤字(-8.0%)です。

放デイとの比較——同じパターンが児発でも拡大

放課後等デイサービス(放デイ)でも同じ逆転パターンがあります(社会法人-2.0%・営利法人12.6%)。児発はその差が拡大した形です。

サービス 社会法人 営利法人 格差
放デイ -2.0% 12.6% 14.6pt
児発 -8.0% 15.7% 23.7pt(7サービス最大)

社会法人の児発が-8.0%(赤字)になる理由

児童発達支援センター型の高コスト構造:社会法人が運営する児発の多くは「児童発達支援センター」(定員20人以上・多職種配置義務)です。平均年収3,547万円(営利法人の約2倍)という規模にもかかわらず赤字なのは、医師・看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・心理士などの専門職を複数常勤で配置しているためです。これらの専門職の給与は支援員(訓練等給付費での標準配置)より大幅に高く、人件費率が80〜90%以上に達するケースがあります。

対応障害種別が重度・重複障害に偏っている:社会法人が運営する児発センターは、医療的ケア児・重症心身障害児・知的障害と身体障害を重複した利用者の受け入れが多い傾向があります。これらの利用者は支援に要する人員が多く、費用が増加します。報酬単価は障害区分に応じてある程度高くなりますが、費用の増加を十分に吸収できないケースがあります。

他の事業(放デイ・相談支援等)の赤字補填も計上:社会法人が法人全体で運営する場合、複数事業間の経費按分により、黒字の事業から赤字の事業へ費用が移動します。児発単体の赤字が、法人全体では他の黒字事業で吸収されているケースがあります。

営利法人の児発が15.7%の高収益を実現できる理由

「通所型・軽度対応」の小規模事業所が多い:営利法人の平均年収1,755万円(社会法人の約半分)は、定員10人前後の小規模事業所が多いことを示しています。軽度・中程度の発達障害(自閉スペクトラム症・ADHD等)に特化した児発は、専門職の最低配置(児童指導員・保育士等)を満たせば運営でき、人件費を抑えた高収益経営が可能です。

稼働率が安定しやすい立地・プログラム設計:営利法人の児発は都市部・住宅地の駅近に立地し、保護者が通わせやすい設計にしているケースが多く、稼働率(WAM参考値80.8%)を維持しやすい環境にあります。

自事業所が社会法人の場合の改善ポイント

社会法人の児発で-8.0%を下回る赤字を抱えている場合、次の点を確認します。

  • 児童発達支援センターとして運営しているか(センター型は非センター型より人件費率が高い構造)
  • 法人内の他事業(放デイ・入所施設・相談支援)との経費按分が合理的かどうか
  • 加算取得状況(強度行動障害支援加算・医療的ケア加算・個別サポート加算等)に漏れがないか

社会法人の-8.0%は「センター型・重度対応」という構造的な費用の高さを反映しており、単純な改善が難しいケースもあります。法人全体の収益バランスで評価することが重要です。

「その他」法人(収支差率4.5%)と児発全体平均7.8%との差

「その他」法人(n=51、収支差率4.5%)には学校法人・医療法人等が含まれます。平均年収2,996万円(営利法人1,755万円の約1.7倍)と規模が大きい一方で、収支差率は4.5%と全体平均7.8%を下回っています。この「規模が大きいのに収支差率が低い」パターンは、社会法人(-8.0%)と同様に「重度対応・専門職配置コストの高さ」が背景にあると考えられます。

児発の収支差率が法人形態によって大きく異なることは、「どのような障害種別・重度区分の利用者を受け入れるか」という事業所の位置づけの違いと密接に連動しています。営利法人の軽度・中程度対応と社会法人の重度・センター型対応では、費用構造が根本的に異なります。自事業所の収支差率を全国平均・中央値と比較する場合は、同じ事業形態(非センター型か、センター型か)・同じ支援対象(軽度か、重度か)の事業所との比較が精度の高い経営診断につながります。

児発の全体平均収支差率7.8%(中央値9.7%)は、大部分を占める営利法人の高収益(15.7%)が引き上げている面があります。社会法人運営のセンター型が多い地域では、中央値9.7%を自事業所の目標水準にすることが難しいケースがあります。同調査の法人形態別データを参照しながら、自事業所と同じ運営形態の全国水準(社会法人-8.0%、NPO11.3%等)と比較することを優先してください。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)。法人形態別の数値は同調査の事業所別集計にもとづきます。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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