児童発達支援の収支差率、令和6年度は中央値9.7%と7サービスで最高水準

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児童発達支援の収支差率を、厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算)から整理しました。7サービスの中で収支差率の中央値が最も高く、特に経営主体別の差が大きいサービスです。

令和6年度決算の全体の数字

指標 令和6年度(R6) 令和5年度(R5)
収支差率(表の平均) 7.8% 8.1%
収支差率(中央値) 9.7% 4.6%
調査事業所数 320 —
給与費率(人件費率) 68.0% —
赤字割合(収支差率<0%) 28.1% —

中央値9.7%は令和5年度の4.6%から大幅改善

令和5年度の中央値4.6%から令和6年度の9.7%へ、5.1ポイントの大幅な改善が見られます。これは調査した7サービスの中で最大の改善幅です。

令和6年4月の報酬改定で、児童発達支援の基本報酬が見直されました。改定前は「機能強化型」「機能強化型以外」という区分でしたが、改定後は「専門的支援実施加算」や「特定プログラム実施加算」などの加算体系に再編されました。この改定が収益改善の要因のひとつと考えられますが、調査データからは因果関係を特定できません。

中央値が平均を上回るパターン

令和6年度の児童発達支援は、平均7.8%・中央値9.7%で「中央値>平均」というパターンです。これは7サービスの中で生活介護(中央値7.9%・平均6.3%)とともに、このパターンを示す2サービスのひとつです。

「中央値>平均」は、収入規模の大きな(大型・多機能の)事業所の収支差率が相対的に低く、平均を引き下げていることを意味します。社会福祉法人(平均規模が大きく、収支差率が-8.0%)の存在が、全体平均を押し下げている構造と整合しています。

経営主体別の格差が際立つ

以下は当方が調査データから計算したものです(収支差 ÷ 収入)。

経営主体 収支差率 事業所数 定員(平均)
営利法人 15.7% 202 12人
NPO法人 11.3% 23 10人
その他 4.5% 51 19人
社会福祉法人(社協を含む) -8.0% 44 14人

注目すべきは社会福祉法人44事業所の収支差率が-8.0%と赤字であることです。これは7サービス・全経営主体の中で最も低い水準のひとつです。

社会福祉法人の児童発達支援の平均収入は3,547万円(35,467千円)で、営利法人の平均1,755万円(17,546千円)の2倍以上の規模です。大型施設型の運営で、多職種の専門職(看護職員・リハビリ職員等)を多く配置するケースが多く、人件費率が高くなり(4,270千円/人)、収支が悪化していると考えられます。

一方、営利法人(202事業所・定員12人)は小規模でシンプルな運営で収支差率15.7%という高い水準を実現しています。件数が多い(全体の63%)ため、全体の中央値を引き上げています。

区分別の中央値は原典に掲載されておらず、上記は表の値(金額加重の平均)です。

稼働率80.8%、年間265.7日の営業

福祉医療機構(WAM)の経営分析参考指標(2023年度決算)では、児童発達支援(児童発達支援センター以外)の稼働率参考値は80.8%、年間営業日数265.7日です。

調査事業所の平均は定員13人・年収2,213万円(22,131千円)です。定員1人あたりの年間収入は169万円(1,689千円)で、月約14万円の収入が定員1人あたりに発生する計算です。

社会福祉法人の児童発達支援が赤字の背景

社会福祉法人の児童発達支援が収支差率-8.0%と赤字になっている背景は、調査データからは次のような構造が読み取れます。

社会福祉法人の事業所(44件)は、平均収入3,547万円と営利法人(1,755万円)の2倍以上の規模です。定員も14人(vs 営利12人)とやや大きく、医療的ケア・重度支援に対応した多職種スタッフ(看護師・リハビリ職等)を配置していると考えられます。その結果、職員1人あたり人件費4,270千円/年(427万円/年)は営利法人1,971千円(197万円)の2倍以上と高くなっています。

福祉の社会福祉法人はミッション型の運営が多く、収支より利用者への専門的支援を優先することがあります。大型・多機能・重度対応の施設は、報酬単価が高くても費用も高く、結果として収支差率が低くなりやすい傾向があります。

ただし、44件という少ない件数のため、特定の大型施設の数字が全体を引き下げている可能性もあります。社会福祉法人の全事業所が赤字という意味ではなく、調査に回答した44事業所の集計であることに注意が必要です。

職種別月給(児童発達支援・全国平均)

職種 常勤月給(全国平均) 非常勤月給(全国平均)
施設長・管理者 323,506円 —
児童発達支援管理責任者 298,826円 —
看護職員 274,942円 139,637円
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 269,046円 118,931円
児童指導員 238,741円 101,217円
保育士 245,319円 104,866円

出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和7年4月分の給与)

児童発達支援の経営診断のポイント

児童発達支援は7サービスの中で収支差率の中央値が最も高いサービスですが、それは全事業所が黒字であることを意味しません。赤字割合は28.1%で、10事業所のうち3事業所近くが赤字です。

経営診断では、稼働率(WAM参考値80.8%)を基準に現在の稼働率を比較することが出発点です。稼働率が80%を下回っている場合は、新規利用者の流入を増やすことが最優先になります。稼働率が標準的であるにもかかわらず収支差率が低い場合は、加算の取得状況・職員構成・委託費の確認が必要です。

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出典:厚生労働省「令和7年障害福祉サービス等経営概況調査結果」(令和6年度決算・令和5年度決算・令和7年4月分給与)、福祉医療機構(WAM)経営分析参考指標 2023年度決算分。経営主体別の収支差率は当方が原典データから計算したものです。各機関が作成したものではありません。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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