小規模多機能型居宅介護の全国の事業所数は、2006年の制度創設から増加を続けてきましたが、近年は増加ペースが鈍化し、廃止・休止する事業所も増えています。厚生労働省の「介護サービス施設・事業所調査」をもとに、事業所数の推移と地域差を整理します。
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全国の事業所数の推移
厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査によると、小規模多機能型居宅介護の事業所数は次のように推移しています。
| 調査年 | 事業所数(か所) |
|---|---|
| 2009年 | 2,607 |
| 2012年 | 4,053 |
| 2015年 | 5,340 |
| 2018年 | 5,748 |
| 2021年 | 5,721 |
| 2022年 | 5,680 |
| 2023年 | 5,629 |
2015年ごろまでは年に数百か所のペースで増加していましたが、2018年以降は横ばいから微減の傾向が続いています。2021年からはわずかに減少しており、廃止・休止する事業所が新規開業数を上回る状況になりつつあります。
※ 上記データは公表年によって集計時点が異なる場合があります。最新のデータは厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」で確認してください。
なぜ事業所数の増加が止まったか
小規模多機能の事業所数の伸びが鈍化している背景として、次の要因が挙げられます。
- 公募制と総量規制:市区町村が整備目標数を定めて公募で事業者を選定するため、整備枠がない地域では新規開業ができない
- 人材確保の困難:介護職員・看護職員・計画作成担当者(介護支援専門員)を同時に確保する必要があり、人材不足が開業の障壁になっている
- 稼働率が上がるまでの資金負担:登録者が増えるまでの赤字期間が長く(1〜2年が一般的)、その間の資金調達が難しい
- 定員の制約:登録定員29人の上限があり、小規模なため事業の規模拡大が難しい
廃止・休止が増えている背景
近年、小規模多機能型居宅介護の廃止・休止が増加している背景には次の課題があります。
- 収支改善の難しさ:登録定員が満員(29人)でも人件費・家賃等の固定費が高く、加算を積み重ねないと黒字化しないケースが多い
- 介護報酬改定の影響:報酬改定のたびに算定要件の変化・書類の増加が負担になる
- 介護職員の高齢化と採用難:運営者・職員の高齢化や採用困難により、事業継続が難しくなる小規模事業所がある
- 競合サービスの充実:同一地域内の通所介護・訪問介護の充実により、小規模多機能でなくても利用者のニーズに対応できる環境になっている
都道府県別の事業所数の傾向
事業所数は都道府県によって大きな差があります。都市部(東京都・大阪府・神奈川県など)では事業所数が多い一方、人口の少ない地方では少ない傾向があります。
注目すべき点は、市区町村単位での整備目標の設定の仕方です。整備目標を多く設定している自治体(都市部・高齢化率の高い地域など)では公募枠があり、整備目標に達している自治体では枠がない状態が続いています。
開業を検討する場合は、対象とする市区町村の第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)の小規模多機能型居宅介護の整備目標数と現状の整備数を確認することが最初のステップです。
全国のデータから見える開業の課題
事業所数の推移データから読み取れる課題を整理します。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 整備目標と実態のギャップ | 第7期・第8期の整備目標に対して実際の整備数が下回っていた自治体が多く、事業者の参入障壁が整備計画の実現を妨げていた |
| 廃止後の空白地域 | 事業所が廃止された地域では代替サービスが必要になるが、再指定までに時間がかかる |
| 採算性への懸念 | 新規参入する事業者が限られており、市区町村が公募しても応募者がいないケースもある |
第9期・第10期の整備動向
第9期介護保険事業計画(2024〜2026年度)では、各市区町村が小規模多機能型居宅介護の整備目標数を設定しています。高齢化率の高い地域では引き続き整備の需要が大きく、新規開業の機会が残っています。
2027年度から始まる第10期に向けて、市区町村が整備計画を見直す時期(2025〜2026年)に開業準備・公募への応募をスタートすることが、タイムリーな参入につながります。
事業所数の推移から見える参入機会
事業所数が横ばいまたは微減している状況は、必ずしも「参入機会がない」を意味するわけではありません。次のような要因から、地域によっては新規開業の機会があります。
- 廃止後の空白地域:廃止した事業所の跡地に新規開業の機会がある市区町村では、公募枠が生まれることがあります
- 整備目標に対して整備数が不足している地域:第9期の整備目標数を達成していない市区町村では、新規参入の余地があります
- 高齢化が進む地方都市・郊外:人口は減少していても高齢者の割合が高まる地域では、小規模多機能の需要が維持・増加する場合があります
開業を検討する際は、全国の事業所数の動向だけでなく、対象とする市区町村の第9期介護保険事業計画での小規模多機能の整備目標数・現状の整備数・公募のスケジュールを直接確認することが最重要の作業です。
事業所数の減少がサービスの質に与える影響
事業所数が減少している地域では、利用者が小規模多機能を選べない状況が生まれます。訪問介護・通所介護・ショートステイを組み合わせて在宅生活を支えるニーズは変わらないため、小規模多機能という選択肢がなくなることで、利用者にとっての在宅継続の難しさが増す場合があります。
厚生労働省も小規模多機能の整備推進を方針として掲げており、第10期介護保険事業計画(2027〜2029年度)に向けた政策の方向性に注目が必要です。報酬改定・整備補助等の動向によっては、開業の環境が変化することもあります。
参考・出典
- 厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(各年版)
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画の基本指針」
この記事に掲載したデータは公表時点の数値です。最新の状況は厚生労働省の公表資料でご確認ください。
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