ITパスポートと基本情報技術者試験の違い。難易度・費用・使い道を比較する

ITパスポートと基本情報技術者試験の違い|難易度・費用・使い道の比較 資格

ITパスポートと基本情報技術者試験は、どちらもIPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施するIT系国家試験です。違いを一言で言えば、ITパスポートは「ITを使う全ての人のリテラシー証明(レベル1)」、基本情報技術者試験は「IT系職種に就く人のための技術基礎(レベル2)」です。目的が異なるため、どちらを取るかは今後のキャリアの方向性で判断します。

この記事では、2つの試験を一次資料をもとに比較し、どちらを先に受けるべきかの考え方を整理します。

2つの試験はITスキルのレベルが1段階違う

IPAは「ITスキル標準(ITSS)」と呼ばれる体系でIT人材のスキルをレベル1〜7に区分しています。情報処理技術者試験は、そのレベルに対応して設計されています。

試験名 ITスキル標準レベル 想定対象
ITパスポート試験 レベル1 ITを活用するすべての社会人・学生
基本情報技術者試験 レベル2 IT系職種への就職・転職を目指す人
応用情報技術者試験(※) レベル3 中堅エンジニア・チームリーダー候補

(※)応用情報技術者試験は2027年度にプロフェッショナルデジタル試験(PD試験)へ再編される予定です。

レベル1のITパスポートは「ITを使いこなす」力の証明、レベル2の基本情報は「ITを作る・管理する」ための基礎力の証明です。同じIT系国家試験でも、問われる内容は大きく異なります。

試験の形式・出題内容の違い

試験の仕組みを並べると、具体的な違いがわかります。

項目 ITパスポート試験 基本情報技術者試験
試験方式 CBT(随時実施) CBT(随時実施)
構成 1科目 科目A・科目B の2部構成
時間・問題数 120分・100問(採点92問) 科目A:90分・60問
科目B:100分・20問
出題形式 四肢択一(すべて選択式) 科目A:四肢択一
科目B:選択式(プログラムの読み取り等)
合格基準 総合600点以上かつ分野別各300点以上(1,000点満点) 科目A・科目Bそれぞれ600点以上(1,000点満点)

(出典:IPA 基本情報技術者試験ページ・ITパスポート試験ページ 2026年確認)

ITパスポートはストラテジ系・マネジメント系・テクノロジ系の3分野を幅広く問う構成です。基本情報の科目Bはプログラムの読み取りや擬似言語の問題が含まれており、コードを読む感覚が必要になります。「プログラミングは触ったことがない」という人が基本情報に挑戦すると、科目Bでつまずくケースが多いです。

難易度・合格率の違い

ITパスポートの合格率は令和7年度48.6%(受験者271,352人・合格者132,012人)、令和8年度4〜8月49.3%(IPA統計情報)です。おおむね2人に1人が合格する試験です。

基本情報技術者試験の合格率は、IPA統計情報によると例年30〜40%程度で推移しています。ITパスポートより合格率が低い理由は、科目Bのプログラム問題の難しさにあります。四肢択一で解ける科目Aと異なり、科目Bはコードの流れを追って正解を導く必要があり、対策なしでは得点しにくい出題です。

勉強時間の目安についても差があります。ITパスポートはIT未経験者でも100〜200時間程度が目安とされています(勉強時間の詳細はこちら)。基本情報は科目Bの対策が加わるため、200〜300時間以上を見込む人が多いとされています。

難易度の違いを一言で言えば、ITパスポートは「知識の広さ」が問われ、基本情報は「知識の広さ+技術の深さ」が問われます。

取得後の使い道・キャリアへの影響の違い

2つの試験は、誰のために、何のために取る資格かがはっきり異なります。

取得する目的 向いている試験
ITリテラシーがあることを証明したい(非IT職含む) ITパスポート
IT系の仕事に就きたい・転職したい 基本情報技術者試験
企業内で昇進・評価の材料にしたい 基本情報技術者試験(ITパスポートより評価されやすい)
就活の書類選考で差をつけたい(理系・情報系学生) 基本情報技術者試験
就活の書類選考で差をつけたい(文系・非IT学生) ITパスポートでも有効
公務員・事務系で「ITの基礎がある」と示したい ITパスポート

ITパスポートは、営業・事務・医療・教育など、IT職種以外の人が「ITを使える人材」として評価を高めるために取ることが多い資格です。一方、基本情報技術者試験はSEやプログラマーへの就職・転職を目指す人が取るもので、IT企業の採用・昇格の評価基準として使われることがあります。

両者で共通しているのは、どちらも「資格があれば仕事ができる」ことを保証するものではなく、「基礎的な知識を持っていることの証明」という点です。

どちらを先に取るかの考え方

よくある4つのケースで整理します。

ケース1:IT職種に就きたい学生・社会人

基本情報技術者試験を目標にしつつ、勉強の入口としてITパスポートを先に取るのが王道です。ITパスポートで出るストラテジ・マネジメントの知識は基本情報の科目Aにも重なります。ITパスポートを取ってから基本情報に進むと、知識の積み上げとして効率的です。

ケース2:IT職種以外の社会人・学生

ITパスポートだけで十分なケースが多いです。基本情報のプログラミング科目は業務で使う場面が限られるため、費用対効果を考えるとITパスポートの取得・スコアアップに集中する方向が合理的です。

ケース3:すでにIT職種で働いている人

ITパスポートをスキップして基本情報から受験しても構いません。現場でプログラミングや設計の経験があるなら、基本情報の難所である科目Bも取り組みやすくなります。

ケース4:高度試験(システムアーキスト・ネットワークスペシャリスト等)を目指す人

高度試験はレベル4以上に相当します。レベル1(ITパスポート)・レベル2(基本情報)・レベル3(応用情報技術者試験)の順に段階を踏むのが一般的な道筋です。基礎を固める意味でITパスポートも通過点として有効です。

両方取る意味はあるか

ITパスポートを取得してから基本情報を取ることは、時間のムダにはなりません。ITパスポートの勉強で身につけたIT用語・セキュリティ・経営・プロジェクト管理の知識は、基本情報科目Aの土台になります。ただし、すでに基本情報を持っている人がITパスポートも取り直す必要はありません。上位資格の取得者に対してITパスポートが追加評価されるケースは限られるためです。

ITパスポートについてもっと知りたい方へ

ITパスポートの試験概要・勉強法・合格率をまとめたガイドがあります。

よくある質問

ITパスポート取得でも、基本情報の科目免除はない。

なりません。2つの試験の間に免除制度はなく、基本情報を受験する際はITパスポートの有無に関係なく科目A・科目Bを全て受験する必要があります。(出典:IPA公式 2026年確認)

基本情報があれば、ITパスポートを改めて取る必要はほぼない。

基本情報技術者試験の合格証明があれば、ITパスポートを改めて取得する必要はほぼありません。ただし、一部の企業や公共機関ではITパスポートを「必要なIT研修の修了要件」として別途求めるケースがあります。勤務先の規定を確認するのが確実です。

基本情報技術者試験の受験料は、IPA公式サイトで確認する。

IPAの公式サイト(ipa.go.jp/shiken/)の「スケジュール、手数料など」ページに記載されています。ITパスポートは7,500円(税込)ですが、基本情報の受験料は最新の案内でご確認ください。

どちらもCBTで随時受験できる。

どちらもCBT方式で、全国の試験会場で随時受験できます。ただしITパスポートは2026年12月28日以降2027年1月以降まで一時休止する予定です。基本情報には同様の休止予定はIPA公式に掲載されていません(2026年11月時点)。

まとめ

ITパスポートと基本情報技術者試験は、同じIPA主催の国家試験でもレベル・対象・出題内容が異なります。IT職種以外の人には、まずITパスポートで十分なケースが多く、IT系の仕事を目指す人には基本情報まで取ることをおすすめします。

  • ITパスポート:レベル1・2人に1人が合格・IT全般のリテラシー証明
  • 基本情報技術者試験:レベル2・プログラム問題あり・IT職種向け
  • 両方取る場合:ITパスポート→基本情報の順が自然な流れ

ITパスポートの詳細はITパスポート試験ガイドでまとめています。

どちらを先に取るべきか:判断の基準

ITパスポートと基本情報技術者試験、どちらを先に取るかは、現在の知識量と目的によって変わります。

状況 おすすめの順番
IT未経験・文系出身 ITパスポート → 基本情報
情報系の学生・IT職種の経験あり 基本情報から直接挑戦
転職活動中・すぐに実績が欲しい ITパスポートを先に取得してから基本情報へ
エンジニア職を目指す学生 基本情報を優先(就活での評価が高い)

試験の難易度の違い

両試験の難易度には大きな差があります。

  • ITパスポート:合格率約48〜49%。100問中60問以上正解+分野別足切りクリアが基準
  • 基本情報技術者試験:合格率約50%前後(科目A・科目B合計)。アルゴリズム・プログラミングの知識が必須

合格率だけ見ると差が小さく見えますが、基本情報はアルゴリズムの問題(科目B)が難関で、プログラミング経験がないと特に苦労します。

学習時間の目安の違い

試験 IT未経験者 IT経験者
ITパスポート 100〜200時間 50〜80時間
基本情報技術者試験 300〜500時間 150〜250時間

職場・就職での評価の違い

両試験の職場での評価は、業種・職種によって大きく異なります。

  • ITパスポート:ITリテラシーの証明として幅広い職種で評価される。特に非IT職種の社会人が取得すると評価されやすい
  • 基本情報技術者試験:エンジニア・SE職では重視される。国家資格として基礎技術力の証明になる

SE・プログラマーを目指す場合は基本情報が実質的な必須資格になっています。一方、営業・経理・人事などの職種では、ITパスポートで十分な場合がほとんどです。

試験形式の違い

項目 ITパスポート 基本情報技術者試験
試験形式 CBT(コンピュータ) CBT(科目A・科目B)
試験時間 120分 科目A:90分 / 科目B:100分
問題数 100問(採点92問) 科目A:60問 / 科目B:20問
受験日程 毎月実施(全都道府県) 通年(随時)

両方取る場合のスケジュール案

両方の取得を目指す場合、ITパスポートを先に取得してから基本情報に挑む順番が無理のないステップです。ITパスポートで学んだストラテジ系・マネジメント系の知識は基本情報の科目Aにも活きます。

  • 1〜2ヶ月目:ITパスポートの学習・受験
  • 3ヶ月目:基本情報のアルゴリズム・科目Bに集中
  • 4〜6ヶ月目:基本情報の受験

各情報処理技術者試験との具体的な違い

ITパスポート(IP)・基本情報技術者試験(FE)・応用情報技術者試験(AP)は、同じITの知識を問う試験ですが、求められるレベルと使い方が異なります。

項目 ITパスポート(IP) 基本情報技術者(FE) 応用情報技術者(AP)
ITSSレベル 1 2 3
問題形式 多肢選択100問 科目A多肢選択60問+科目B疑似言語20問 午前多肢選択80問+午後記述式
プログラミング問題 なし あり(疑似言語) あり(午後でアルゴリズム必須)
合格率 約48〜49% 約35〜40% 約20〜25%
年間受験可能回数 年中(CBT) 年中(CBT) 年2回(春・秋)
主な対象者 社会人全般・学生・ITの基礎知識の確認 IT職種への転職・SEを目指す人 IT中上級者・シニアエンジニア

情報セキュリティマネジメント試験(SG)との違い

プログラミングが苦手な方は、基本情報技術者の代わりに情報セキュリティマネジメント試験(SG)を次の目標にする選択肢もあります。

項目 ITパスポート(IP) 情報セキュリティマネジメント(SG)
ITSSレベル 1 2
プログラミング問題 なし なし(事例問題・読解形式)
対象分野 IT全般(ストラテジ・マネジメント・テクノロジ) 情報セキュリティに特化
主な対象者 ITの基礎知識確認・全職種 情報管理担当・リスク管理・内部統制

MOSや簿記との違い:同じ「就職・転職に使える資格」の位置づけ

資格 証明できる能力 IT関連度 主な活用場面
ITパスポート ITの基礎知識・情報リテラシー 高(IT全般) IT業界への就職・社内IT担当・DX推進
MOS Officeソフトの操作スキル 中(PC操作) 事務職・一般職のPC操作のアピール
簿記3級 基礎的な会計・経理知識 低(会計) 経理・財務・会計事務所
FP3級 個人のお金・保険・税金の知識 低(金融) 金融・保険・不動産業

「これだけ持っている人」に対する評価の違い

転職・就職市場では「ITパスポートだけ持っている」と「ITパスポート+基本情報を持っている」では評価が大きく異なります。

  • ITパスポートのみ:「ITに興味がある・基礎知識がある」という証明。IT職種へのアピールとしては弱いが、非IT職種(営業・経理・医療など)では十分評価される
  • 基本情報技術者(FE)以上:SE・プログラマー・インフラエンジニアなどIT職種への就職・転職でアピール力がある

どちらから先に受けるべきか

IT職種を目指す場合でも、ITパスポートから始めてFEに進むルートは有効です。ITパスポートで試験の形式と基礎用語に慣れてから、FEに進むことでスムーズに学習できます。

すでにIT業務の経験がある場合は、ITパスポートをスキップしてFEから受験することも選択肢です。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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