就労移行支援の事業所数は、令和3年10〜12月の3,063か所をピークに減少に転じ、令和7年1〜3月には2,834か所になっています(国民健康保険団体連合会の請求事業所数)。約2年半で229か所、約7.5%が減少しました。減少の背景として考えられるのは、基本報酬の7段階制による収入の振れ幅の大きさ、特例期間終了後の3年目の収支悪化、および人員確保の難しさです。
出典:国民健康保険団体連合会「障害福祉サービス等情報」(事業所数)、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第12の1
事業所数のピークはR3年末。その後2年半で229か所減少。
就労移行支援の事業所数の推移は次のとおりです(国保連の請求事業所数)。
| 時期 | 事業所数 |
|---|---|
| R3年10〜12月(ピーク) | 3,063 |
| R6年1〜3月(1年前) | 2,919 |
| R7年1〜3月(最新) | 2,834 |
ピークから最新の3期間を比べると229か所の減少です。1年前(R6年1〜3月)と比べると85か所の減少が続いています。
報酬の7段階制が、事業所の収入を大きく変動させる。
就労移行支援の基本報酬は、就労定着者の割合(前年度と前々年度に就職して6か月継続した者の割合)によって7段階に分かれます(告示523第12の1)。定員20人以下の場合、最高単位(50%以上)は1,210単位、最低単位(0%)は479単位と、約2.5倍の差があります。
新規事業所は開業後2年間、「30%以上40%未満」(879単位)とみなされます。3年目からは実際の定着率で区分が決まります。定着者が出ない(または少ない)場合、報酬が一気に下がります。
定員20人・稼働率70%・月22日の事業所で、定着率区分が「30〜40%未満」(879単位)から「10%未満」(519単位)に下がった場合を比較します。
- 30〜40%未満:879×14×22×10円=約271万円/月
- 10%未満:519×14×22×10円=約160万円/月
月収入の差は約111万円です。年換算では約1,340万円の差になります。固定費(人件費・家賃等)はほぼ変わらないため、区分の下落は経営上のダメージが大きく、継続が困難になる事業所が出ます。
3年目の崖が、撤退のタイミングと重なりやすい。
就労移行支援の新規指定事業所は、開業後2年間は就労定着者の割合のみなし規定で報酬が安定していますが、3年目から実績に基づく区分適用が始まります。この時期に:
- 定着率が低く、報酬が大幅に下落する
- 借入金の返済が続き、キャッシュが逼迫する
- スタッフが新しい制度に慣れてきた頃に職員が離職する
という3つの要因が重なりやすいのが、3年目の収支が急激に悪化するパターンです。ビジネスとして参入した事業者が、この段階で採算が取れないと判断して撤退するケースが、事業所数の減少の一因と考えられます。
人員確保の困難が、事業継続を難しくしている。
就労移行支援はサービス管理責任者・職業指導員・生活支援員・就労支援員の4種類の職員が必要です。なかでもサービス管理責任者は、一定の実務経験+研修修了が要件であり、外部から採用するには時間がかかります。
労働市場の逼迫により、福祉職員の採用コストは上昇しています。処遇改善加算を算定することで職員の賃金を引き上げる仕組みはありますが、加算の要件を満たすための就業規則整備・研修実施・計画書作成の負担も大きく、小規模事業所では手が回らない場合があります。
事業所数が減った後も、利用者のニーズは変わっていない。
事業所数の減少は、就労移行支援の利用者数(受給者数)の減少とは必ずしも一致しません。障害者の就労移行支援の需要は引き続き存在しており、厚生労働省の報告では就労移行支援を経て一般就労に移行した者の数は一定水準を維持しています。
事業所数の減少は、収益性の低い事業所や人員確保が難しい事業所の撤退が中心と考えられます。参入するなら「収支計画・人員計画・就職支援の実務力」の3つをそろえてから開業することが、同じ失敗を繰り返さないための前提条件です。
→ 就労移行支援 開業向け収支シミュレーターでは、3年目の定着率変化が収支に与える影響を月単位で確認できます。
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