就労移行支援の減算。算定できなくなる条件と金額を整理する。

就労移行支援の減算は、大きく3つに分かれます。一つは定員超過・人員欠如などの運営上の基準違反による減算(所定単位数に70%または50%を乗じる)。一つは就労移行支援計画の未作成による減算(70%または50%)。もう一つは情報公表・身体拘束廃止・虐待防止・業務継続計画に関するコンプライアンス減算(1〜5%を減じる)です。これらは同時に複数が適用されることもあります。

出典:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第523号)別表第12の注5〜9、厚生労働大臣が定める利用者の数の基準、従業者の員数の基準及び所定単位数に乗じる割合(平成18年厚生労働省告示第550号)第7

就労移行支援の減算は3系統。種類と金額の一覧。

告示523の別表第12の1は、就労移行支援サービス費を算定する際の注5〜9に、次の減算を定めています。

就労移行支援の減算一覧
種類 条件 乗じる割合 根拠
定員超過 過去3月平均が定員×125%超(定員12人以上)または1日の利用者が定員×150%超(定員50人以下) 所定単位数の70% 注5(1)・告示550第7イ
人員欠如(職業指導員等) 職業指導員・生活支援員・就労支援員の員数を満たさない 所定単位数の70%(3月以上継続は50%) 注5(1)・告示550第7ロ
人員欠如(サビ管) サービス管理責任者の員数を満たさない(5月以上継続) 所定単位数の50% 注5(1)・告示550第7ロ
就労移行支援計画の未作成 作成されていない期間が3月未満 所定単位数の70% 注5(2)(一)
就労移行支援計画の未作成 作成されていない期間が3月以上 所定単位数の50% 注5(2)(二)
サービス利用期間の長期化 利用期間の平均が標準利用期間(2年)+6月を超える 所定単位数の95% 注5(3)
情報公表未報告 障害福祉サービス等情報の報告を行っていない 所定単位数から5%減算(支援施設は10%減算) 注6
身体拘束廃止未実施 身体拘束廃止の基準を満たしていない 所定単位数から1%減算(支援施設は3%減算) 注7
虐待防止措置未実施 虐待防止のための措置に関する基準を満たしていない 所定単位数から1%減算(支援施設は10%減算) 注8
業務継続計画未策定 業務継続計画の策定等に関する基準を満たしていない 所定単位数から1%減算 注9

「所定単位数の70%を乗じる」と「所定単位数から5%減算」は計算の仕方が異なります。前者は基本報酬と加算の合計に70%を掛けます。後者は基本報酬と加算の合計から5%分を引いた単位数を算定します。いずれも処遇改善加算を算定した後に乗じるのではなく、処遇改善加算を除いた「所定単位数」が対象です。

定員超過の減算。定員の125%を過去3月の平均値が超えた場合に適用。

定員超過の減算が適用されるのは、次の2つのいずれかに該当する場合です(告示550第7イ)。

一つ目は、過去3月間の利用者の数の平均値が、利用定員の125%を超えた場合です(定員12人以上の事業所)。定員11人以下の事業所は「定員+3人を超えた場合」となります。

二つ目は、1日の利用者の数が利用定員の150%を超えた日がある場合です(定員50人以下の事業所)。定員51人以上は「定員+(定員−50)×25%+25人を超えた場合」という計算式になります。

定員超過の減算は、上記の基準に該当した場合に所定単位数に70%を乗じます。告示550には「基準に該当する場合は所定単位数に乗じる割合を下欄のとおりとする」と定められており、百分の七十が該当します。

定員20人の事業所で過去3か月間の平均利用者数が25人(125%)を超えた場合、その基準に「該当する」状態として所定単位数の70%を算定することになります。1日の利用者数が30人(150%の30人)を超えた日があれば、その月は減算の対象です。

開業後に利用者が想定以上に増えた場合、定員を超えて受け入れることは短期的には収入が増えますが、減算で逆に報酬が下がる可能性があります。定員変更の手続きを早めに行うことが重要です。

人員欠如の減算。職種ごとに基準が異なり、継続期間で割合が変わる。

人員欠如の減算は、職業指導員・生活支援員・就労支援員(まとめて「職業指導員等」)と、サービス管理責任者(サビ管)の2種類に分かれます(告示550第7ロ)。

職業指導員等の員数を満たしていない場合は、所定単位数の70%を算定します。この状態が3月以上継続している場合は、50%まで下がります。

サービス管理責任者については、員数を満たしていない状態が5月以上継続した場合に、所定単位数の50%となります(5月未満は70%)。サビ管は担当できる職員の要件が厳しく(実務経験+研修修了)、欠員が生じると補充まで時間がかかります。採用計画の中でサビ管の育成・確保を最優先に置く理由の一つです。

人員欠如の減算は、月の途中から基準を下回った場合でも、その月の全日分に適用されます。月の初日から欠如が確定していなくても、報告義務と届出義務を速やかに果たす必要があります。

就労移行支援計画の未作成。3月を超えると50%の減算が適用される。

就労移行支援計画(いわゆる個別支援計画)は、サービス管理責任者が作成し、利用者の同意を得て交付する書類です。この計画が作成されていない場合、所定単位数に一定の割合を乗じる減算が適用されます(告示523第12の注5(2))。

作成されていない期間が3月未満の場合は所定単位数の70%、3月以上の場合は50%となります。就労移行支援の利用を開始した日から起算して、計画が未作成のまま3月が経過すると、より厳しい減算に切り替わります。

告示523の根拠条文は次のとおりです。

(2)指定就労移行支援等の提供に当たって、指定障害福祉サービス基準第184条において準用する指定障害福祉サービス基準第58条又は指定障害者支援施設基準第23条の規定に従い、就労移行支援計画(中略)が作成されていない場合 次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる割合
(一)作成されていない期間が3月未満の場合 100分の70
(二)作成されていない期間が3月以上の場合 100分の50

就労移行支援計画の作成は「利用開始から60日以内に作成し、少なくとも6月に1回以上見直す」という義務が省令に定められています(省令171第184条において準用する第58条)。開業直後に利用者が増えた場合でも、この期限を守ることが報酬の確保につながります。

サービス利用期間の長期化。平均が2年6月を超えると5%の減算。

就労移行支援の標準利用期間は2年間です(施行規則第6条の8)。告示523の注5(3)は、「利用期間の平均値が標準利用期間に6月間を加えて得た期間(2年6月)を超えている場合」に、所定単位数の95%を算定すると定めています。

ただし、計算対象は「当該指定就労移行支援等の利用を開始した日から各月ごとの当該月の末日までの期間が1年に満たない者を除く」とされているため、利用開始から1年未満の利用者は分子にも分母にも入りません。新規の利用者が多い事業所では、この減算の影響は小さくなります。

減算が適用されると所定単位数の95%(5%減算)です。定員20人・定着率30〜40%未満(719単位)・稼働率70%・月22日換算で計算すると、月収入のおおよその5%は約16万円になります。長期利用者の多い事業所では注意が必要です。

標準利用期間の2年を超えた場合、市町村の特例として延長を認めることはできますが(最長1年の延長が可能)、その期間中も利用者の就職に向けた支援を継続することが求められます。延長を繰り返すことで利用期間の平均が伸び、この減算の適用につながります。

情報公表未報告の減算。5%を所定単位数から減じる。

就労移行支援の情報公表制度に基づく報告を行っていない場合、所定単位数の5%に相当する単位数を所定単位数から減算します(注6)。指定障害者支援施設では10%です。

情報公表制度は、障害者総合支援法第76条の3に基づくもので、指定事業者は障害福祉サービス等情報公表システムに毎年度、事業所情報の報告を行う義務があります。就労移行支援は対象サービスのため、報告を怠ると減算の対象となります。

この減算は令和3年度改定で導入され、令和6年度改定でほぼすべての事業所が対象となりました。開業初年度から報告スケジュールを管理者が把握しておくことが求められます。

身体拘束・虐待防止・業務継続計画の3つ。それぞれ1%の減算。

次の3つのコンプライアンス減算は、それぞれ所定単位数から1%を減算します(注7〜9)。

  • 身体拘束廃止未実施(注7):指定障害福祉サービス基準第33条の2第1項に規定する身体拘束廃止のための措置を講じていない場合。指定障害者支援施設では3%。
  • 虐待防止措置未実施(注8):指定障害福祉サービス基準第35条の2第2項または第3項に規定する虐待防止のための措置を講じていない場合。指定障害者支援施設では10%。
  • 業務継続計画未策定(注9):指定障害福祉サービス基準第40条の2に規定する業務継続計画(BCP)の策定等に関する基準を満たしていない場合。

これらは1%ずつではありますが、3つ同時に未実施の場合は3%が合計で減算されます。また身体拘束廃止・虐待防止は、減算とは別に行政指導・指定取り消しのリスクもあります。

業務継続計画(BCP)は令和6年度改定から義務化されました。感染症対策・自然災害対応の2種類を策定・研修・訓練し、定期的に見直す義務があります(省令174第37条)。

複数の減算が重なった場合の計算。掛け算と引き算が混在する。

就労移行支援の減算には、所定単位数に割合を「乗じる」もの(注5)と、所定単位数から一定割合を「減じる」もの(注6〜9)があります。両方が同時に適用されることがあります。

告示の構造では、注5の割合を乗じた後の単位数に、さらに注6〜9の減算を適用します。ただし、実務上は都道府県や自治体の指導担当窓口に計算方法を確認することが望ましいです。

たとえば定員20人(定着率30〜40%、719単位)で人員欠如が3月以上継続(×50%)かつ身体拘束廃止未実施(−1%)が重なった場合:

  • 719単位×50%=360単位(人員欠如の乗算)
  • 719単位×1%≒7単位(身体拘束の引き算)
  • 360単位−7単位=353単位(概算)

このような状態が続けば、本来の報酬の半分程度しか算定できなくなります。人員欠如の場合は欠員が生じた時点で迅速に対応し、3月を超えないようにすることが重要です。

開業時から意識すべき減算のリスク。3つの場面で確認する。

就労移行支援の開業後に減算リスクが高まる場面は、主に3つです。

一つ目は開業直後の利用者受け入れ段階です。利用者が増えると人員基準の充足が求められます。採用が遅れると人員欠如の減算が発生します。就労移行支援計画の作成も「利用開始から60日以内」が求められるため、サービス管理責任者の業務量が集中します。

二つ目は2〜3年目の過渡期です。標準利用期間の2年を超えた利用者が出てくる時期です。長期利用者が増えると利用期間の平均値が上がり、注5(3)の減算の対象になります。就職先を決めずに在籍し続ける利用者への支援計画を見直すきっかけになります。

三つ目は職員の退職・急な離職です。特にサービス管理責任者が退職した場合、後任を確保するまでの間に人員欠如の減算が発生します。サビ管の要件(実務経験+研修修了)には時間がかかるため、複数人を計画的に育成しておくことが重要です。

就労移行支援の収支計画を立てる場合は、これらの減算リスクを「ゼロになるシナリオ」だけでなく「実際に発生したときのシナリオ」も想定しておくことが堅実な経営判断につながります。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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