短期入所で医療的ケア(たん吸引・経管栄養)が必要な利用者を受け入れるには、社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2に基づく研修を修了した職員と、登録特定行為事業者としての届出が必要です。医師の指示書・家族からの引継ぎ・緊急時の連絡先を事前に確認してから受け入れを行います。
医療的ケアを介護職員が実施できる根拠は社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2にある
平成23年の法改正により、社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2が新設され、一定の研修を修了した介護職員が「喀痰吸引等」を業として行えるようになりました。これ以前は医行為として医師・看護師のみが実施できるとされていた行為です。(出典:社会福祉士及び介護福祉士法(e-Gov法令検索))
この法改正によって実施できる行為は次のとおりです。
| 行為の種類 | 実施できる範囲 |
|---|---|
| たん吸引(口腔内) | 咽頭の手前まで(通常の手技で届く範囲) |
| たん吸引(鼻腔内) | 咽頭の手前まで |
| たん吸引(気管カニューレ内部) | 気管カニューレ内部に限る |
| 経管栄養(胃ろう・腸ろう) | 栄養剤の注入(胃ろう・腸ろうの状態確認を含む) |
| 経管栄養(経鼻経管) | 栄養剤の注入(チューブの位置確認を含む) |
表は社会福祉士及び介護福祉士法第48条の2の規定をもとに整理したものです。
上記の行為を実施するためには、研修修了と事業者登録の両方が必要です。研修修了なしに実施することは法律違反になります。
介護職員が医療的ケアを実施するには研修修了と事業者登録の2つが必要である
介護職員が医療的ケアを実施するための要件は次の2点です。
1. 喀痰吸引等研修の修了
研修には第1号・第2号・第3号の3種類があります。
| 研修種別 | 実施できる行為の範囲 | 対象 |
|---|---|---|
| 第1号研修 | たん吸引(3種)・経管栄養(3種)すべて | 不特定多数の利用者 |
| 第2号研修 | たん吸引(口腔内・鼻腔内)・経管栄養(胃ろう・腸ろう) | 不特定多数の利用者 |
| 第3号研修 | 特定の利用者が必要とする行為のみ | 特定の利用者のみ |
表は厚生労働省の喀痰吸引等研修の制度概要をもとに整理したものです。
短期入所では宿泊利用者が都度変わるため、第1号または第2号研修修了者を配置することが実務上必要になります。
2. 登録特定行為事業者としての登録
事業者(施設)は都道府県に「登録特定行為事業者」として登録する必要があります。職員が研修を修了していても、事業者が未登録の場合は実施できません。登録には安全管理体制(指示書の管理・ヒヤリハット報告・医師・看護師との連携体制)の整備が必要です。
医療的ケアが必要な利用者の受け入れ前に医師の指示書と引継ぎ情報を確認する
短期入所で医療的ケアが必要な利用者を受け入れる前に、以下の確認を行います。
- 医師の指示書:たん吸引または経管栄養の指示書が有効期間内であることを確認する。指示書のない状態での実施は認められない
- 家族(保護者)からの引継ぎ情報:吸引の頻度・吸引圧の目安・注入の量・速度・注入時の体位・過去のトラブル歴
- 緊急時の連絡先:かかりつけ医・訪問看護ステーション・救急受診先の病院
- 介護記録への反映:受け入れ時に確認した情報を支援記録に記載し、全職員が参照できる状態にする
短期入所は通所サービスと異なり宿泊を伴うため、深夜の吸引対応が発生することがあります。夜間担当職員が医療的ケアの資格を持っているか、あるいは看護職に連絡できる体制があるかを事前に確認しておくことが重要です。
基準第46条(第145条準用)は「事業者は、利用者の病状の急変が生じた場合その他必要な場合のために、あらかじめ、協力医療機関を定めておかなければならない」としており、医療的ケアの緊急時対応はこの義務と一体で整備します。(出典:基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索))
たん吸引は実施前の確認・吸引中の観察・実施後の記録の3段階で手順を確認する
たん吸引の手順は、研修で習得した内容を施設のマニュアルに落とし込んで全職員で共有します。
実施前の確認
- 医師の指示書が有効であることを確認する
- 利用者の状態(意識・呼吸・顔色)を確認し、吸引が必要な状態かを判断する
- 吸引器・吸引カテーテル・洗浄水・手袋を準備する
- 吸引圧を医師の指示値(一般的に80〜120mmHg)に設定する
- 利用者に吸引の実施を説明し同意を得る(言語表現が難しい利用者は表情・うなずきで確認)
吸引中の観察
- カテーテルの挿入は指定された深さまでとし、無理に押し込まない
- 吸引は1回10〜15秒以内を目安とし、連続吸引は避ける
- 吸引中に顔色・SpO2・苦痛表情を観察する
- 異常(出血・強い抵抗・チアノーゼ)が見られた場合はすぐに中止して看護師・医師に報告する
実施後の記録
- 実施日時・実施者・吸引した部位・吸引物の量と性状(色・粘度)を記録する
- 実施後の利用者の状態(呼吸・顔色・意識)を記録する
- 異常があった場合は経過記録に詳細を残し、報告先と対応内容も記録する
経管栄養は注入前の位置確認と体位保持が誤嚥予防の基本である
経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管)の注入は、栄養剤の逆流による誤嚥性肺炎リスクを最小化する手順で実施します。
注入前の確認
- 医師の指示書に記載された栄養剤の種類・量・速度を確認する
- 胃ろうの場合:ろう孔周囲の皮膚状態(発赤・浸出液・肉芽形成)を確認する
- 経鼻経管の場合:チューブが胃内にあることを確認する(気泡音の確認・pH試験紙の使用)
- 注入前に体位を30〜45度の半座位に整える(逆流防止のため)
注入中の観察
- 注入速度は医師の指示に従い、急速注入を避ける(一般的には200〜300mL/時)
- 注入中に嘔気・腹部膨満・顔色変化・咳が見られた場合は注入を中止して看護師に報告する
- 注入中は利用者のそばを離れない(誤嚥・チューブ抜去に気づけない)
注入後の管理
- 注入後もしばらく(30分〜1時間)半座位を保つ
- チューブのフラッシュ(白湯での洗浄)を行い、チューブ内の残留物を除去する
- 実施日時・注入量・注入時間・利用者の状態を記録する
医療的ケアの実施後記録と異常時の報告は基準第49条の事故防止義務の一部である
医療的ケアの実施記録は、安全管理の観点から保管義務があります。基準第49条(第145条準用)の事故防止・事故報告義務に基づき、医療的ケア実施中に異常が発生した場合は次の手順で対応します。
- 実施を中止し、利用者の安全を確保する
- 看護師または医師(協力医療機関)に状況を報告する
- 管理者に報告し、家族への連絡要否を判断する
- 事故または重大なヒヤリハットとして記録する
- 都道府県・市町村への報告要否を確認する(入院が必要な事態の場合は報告対象)
(出典:解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日))
記録は事故・ヒヤリハットを問わず、実施のたびに残します。記録が途切れていると、指導監査で「安全管理が機能していない」と判断される可能性があります。
医療的ケア研修は資格取得後も年1回以上の継続研修が望ましい
喀痰吸引等研修は取得時の研修だけで終わりではなく、技術の維持と安全管理体制の確認のために継続的な研修が求められます。厚生労働省の通知では登録特定行為事業者に対して安全委員会の設置・ヒヤリハット情報の収集・職員研修の実施を求めています。
継続研修の内容として、次の項目を年1回以上確認することが適切です。
- 吸引・注入手順の確認(実技を含む)
- 過去1年間のヒヤリハット事例の共有と再発防止策の確認
- 医師の指示書・記録様式の最新版の確認
- 緊急時の連絡手順の確認
新たに医療的ケアが必要な利用者を受け入れる際は、その都度担当職員への個別確認(引継ぎ情報・指示書の内容)を行います。
服薬管理と医療的ケアの連携については短期入所の服薬管理研修もあわせて確認してください。
研修資料・記録様式・確認テストは法定研修・訓練キット(短期入所版)でまとめて用意できます。
この記事は、社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号・平成23年改正)、障害者総合支援法に基づく基準(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日)の内容を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。喀痰吸引等研修の実施機関・登録手続きの詳細は所在地の都道府県の担当窓口に確認してください。作成:fufumumu_design


コメント