短期入所はターミナル期(終末期)の利用者を受け入れる場面があります。家族の疲弊・医療機関との中間支援として短期入所を利用するケースで、夜間の急変への対応手順とDNAR(蘇生不要指示)の確認が欠かせません。基準第46条の医療機関連携義務と尊厳保持(第22条・第145条準用)をふまえ、ターミナルケア研修で確認すべき内容をまとめました。
短期入所がターミナルケアに関わる場面は家族疲弊と医療・在宅の中間支援の2つ
ターミナルケアとは、治癒が難しく余命が限られた状態にある方への支援です。短期入所がこの局面に関わる場面は主に次の2つです。
- 家族の疲弊による一時的な預かり:在宅での看取りを選択している家族が、疲弊や体調不良で短期的な支援が必要になった場合。施設での宿泊中に状態が急変するリスクがある
- 入院・在宅療養の中間支援:医療機関から退院したが在宅に戻る前の一時的な場所として使われる場合。医療的ケアが継続している利用者もある
どちらの場合も、施設での対応の限界(医療行為ができる職員配置か否か)と、急変時の連絡・搬送手順を家族と事前に合意しておくことが不可欠です。
基準第46条は「利用者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、協力医療機関を定めておかなければならない」と定めています。ターミナル期の利用者を受け入れる場合は、通常の協力医療機関に加えて、訪問診療医・かかりつけ医との連携体制も確認します。(出典:基準(平成18年厚生労働省令第171号・e-Gov法令検索))
看取りが近い状態を示す身体的サインを職員が把握する
医師が「死期が近い」と判断した利用者には、特徴的な身体的変化が現れることがあります。夜間帯の少人数体制で職員がこれらのサインに気づくためには、研修での事前共有が重要です。
| サインの種類 | 観察のポイント |
|---|---|
| 呼吸の変化 | チェーンストークス呼吸(呼吸が深くなったり浅くなったり周期的に変化する)・下顎呼吸(あごを動かすような呼吸) |
| 循環の変化 | 四肢末梢の冷感・蒼白化・チアノーゼ(爪の色が紫色に) |
| 意識の変化 | 呼びかけへの反応が鈍くなる・開眼しなくなる・表情が乏しくなる |
| 皮膚の変化 | 鼻や口の周りが暗くなる・全身に斑状の変色(死斑の前段階)が出る |
表は一般的な終末期の身体変化を示したものです。個々の状態は医療職の判断を優先してください。
これらのサインを発見した場合は、すぐに管理者・夜間責任者に報告し、家族・かかりつけ医・訪問診療医への連絡を開始します。
夜間の急変時は「管理者→家族→かかりつけ医」の順で連絡する
夜間帯に急変が発生した場合の連絡手順を、事前に全職員で確認しておきます。連絡の順序が決まっていると、一人夜勤でも迷わずに動けます。
夜間急変時の連絡手順(例):
- ① 利用者の状態確認(呼吸・意識・脈拍)
- ② 管理者(夜間責任者)に電話で報告し、対応方針の指示を受ける
- ③ 家族に連絡(状態と現在の対応を伝える)
- ④ かかりつけ医・訪問診療医への連絡(管理者の指示のもとで)
- ⑤ DNAR(蘇生不要指示)が確認されている場合は、その内容に従って対応する
- ⑥ 状況を時系列で記録する
連絡先(家族の携帯・夜間に連絡できるかかりつけ医)は入所時の書類に明記し、夜間担当職員がすぐ参照できる場所に保管します。
DNARの確認と記録は受け入れ前に行い全員で共有する
DNAR(Do Not Attempt Resuscitation:蘇生不要指示)とは、心肺停止時に蘇生処置(胸骨圧迫・AED等)を試みないことを本人・家族・医師が事前に合意した指示です。
短期入所でターミナル期の利用者を受け入れる場合は、入所前に次を確認します。
- DNARの指示書(医師が作成したもの)が存在するか
- 指示書の原本またはコピーを入所時に持参してもらう
- 夜間担当職員を含む全職員にDNARの有無と内容を引継ぐ
- DNARの確認と保管場所を記録に残す
DNARがない利用者に心肺停止が起きた場合は、原則として119番通報と心肺蘇生を行います。「家族が蘇生しないでほしいと言っていた」という口頭の確認だけでは対応できないため、DNARが必要な場合は入所前に書面で確認することを施設のルールにします。
(出典:解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日))
死後の対応手順と記録義務も研修で確認する
施設内で利用者が亡くなった場合の対応手順は、感情的に動揺しやすい場面だからこそ事前に確認しておく必要があります。
死後の基本的な対応手順:
- ① 呼吸・脈拍・瞳孔散大を確認し、医師または救急隊員に死亡確認を依頼する(職員が死亡を確定させることはできない)
- ② 管理者・家族への連絡
- ③ 遺体の処置(エンゼルケア)は家族の意向を確認してから行う
- ④ 基準第49条(第145条準用)に基づき、都道府県・市町村への報告と記録を行う
- ⑤ 関係職員で振り返りの場を設ける
記録には①発見時刻・発見者・発見時の状態、②管理者・家族への連絡時刻と内容、③医師・救急隊員の到着時刻と死亡確認の内容を記載します。記録は5年間保管します。
職員の感情サポート(グリーフケア)も研修に含める
利用者の死は職員に深い影響を与えることがあります。担当職員や夜間対応した職員が感情的な消耗・罪悪感・悲しみを感じることは自然なことであり、組織として支えることが重要です。
- 亡くなった後に管理者が担当職員に声をかけ、感情を話せる場をつくる
- チームで「よくできたこと」「難しかったこと」を振り返る機会を設ける(デブリーフィング)
- 強い精神的影響が続く職員には、産業医や相談窓口への案内を行う
グリーフケアは職員の定着と燃え尽きの防止につながります。ターミナルケアの経験を組織として積み重ねるためにも、振り返りの場を定例化することが有効です。
夜間の急変対応については短期入所の夜間・緊急時対応研修もあわせて確認してください。
研修資料・確認テストは法定研修・訓練キット(短期入所版)でまとめて用意できます。
この記事は、障害者総合支援法に基づく基準(平成18年厚生労働省令第171号)、解釈通知(障発第1206001号・最終改正令和7年3月31日)の原文を確認して書いています(確認日:2026年11月1日)。所在地の指定権者(都道府県・市)の案内もあわせて確認してください。作成:fufumumu_design


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