保育所の避難訓練は、毎月1回以上の実施が法令で義務づけられています。これは努力義務ではなく、根拠条文(第6条第2項)に「少なくとも毎月一回は行わなければならない」と明記されています。
この記事では、義務の根拠・訓練の想定パターン・年間計画の立て方・記録の残し方を整理します。運営指導で「記録が12回に達していない」「消火訓練の記録がない」と指摘されやすい点もあわせて確認してください。
月1回以上の義務は、避難と消火の両方が対象
根拠は児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和23年厚生省令第63号)第6条第2項です。条文は次のように定めています。
「前項の訓練のうち、避難及び消火に関する訓練は、少なくとも毎月一回は、これを行わなければならない。」
「避難」だけでなく「消火」も月1回以上の義務があります。2つをまとめて1回と数えることができますが、実施記録には両方の実施を確認できる内容が必要です。
訓練に関する義務を条文ごとに整理すると次のとおりです。
| 根拠条文 | 内容 | 最低頻度 |
|---|---|---|
| 第6条第2項 | 避難・消火訓練 | 月1回以上(年12回以上) |
| 第6条の3(安全計画) | 安全計画に基づく研修・訓練 | 年1回以上 |
| 第6条の4(BCP) | BCPに基づく研修・訓練 | 年1回以上 |
安全計画の訓練(第6条の3)やBCP訓練(第6条の4)は、第6条第2項の月1回の訓練と組み合わせて実施することができます。同じ訓練日を「避難訓練+安全計画訓練」として記録する施設が多いです。
訓練の想定は、年間で複数のパターンを組み合わせる
月1回の訓練を年12回実施するにあたって、想定の種類を変えることが重要です。毎月「地震→校庭に避難」の同じ想定を繰り返すだけでは、「訓練の内容が画一的」として運営指導で指摘されることがあります。
一般的に組み合わせる想定のパターンは次のとおりです。
| 想定の種類 | 主な訓練内容 |
|---|---|
| 地震 | 揺れを感じたらダンゴムシの姿勢→揺れが収まってから避難誘導→点呼 |
| 火災(調理室・保育室・電気系統) | 発見→119番通報→初期消火(消火器操作)→避難誘導→点呼 |
| 水害・土砂災害 | ハザードマップ確認→垂直避難または広域避難の手順確認 |
| 不審者侵入 | 発見→施錠→110番通報→子どもを安全な部屋へ誘導→さすまたの使い方 |
| 散歩中の急変・事故 | 引率中の連絡手順・施設への報告・保護者への連絡手順 |
| 延長保育時(少人数・夜間) | 少人数体制での避難誘導・連絡先の確認 |
1年間で地震・火災・水害・不審者・散歩中・延長保育時など複数の想定を組み合わせると、訓練の幅が広がり、運営指導でも説明しやすくなります。
年間計画に盛り込む6つの項目
年間計画を文書として作成しておくと、「計画通りに実施している」ことを運営指導で示せます。盛り込む項目は次のとおりです。
- 実施月(1月〜12月の各回):「○月第○週の火曜日」など具体的な予定
- 想定の種類:何を想定した訓練か(地震・火災・水害など)
- 主な訓練内容:避難経路・消火手順・担当者の役割
- 消火訓練の実施予定:消火器操作の実践は年1〜2回程度が多い
- 安全計画・BCP訓練との組み合わせ:どの月に兼ねるか
- 担当者:企画・進行・記録の担当者名
年間計画は年度初めに作成し、施設長が承認した上で全職員に周知することが望ましいです。計画を途中で変更した場合も、変更の理由と変更後の内容を記録しておいてください。
訓練記録に残すべき5つの項目
訓練を実施したら、その都度記録を作成します。記録に残すべき最低限の内容は次の5つです。
- 実施日時:年月日と実施時刻(午前○時○分など)
- 想定の種類:地震・火災・水害など
- 参加者数(職員・子ども):当日の在園児数と参加した職員の人数
- 訓練の内容:実施した手順・避難にかかった時間・消火器操作の有無
- 振り返り(反省と改善点):うまくいった点・次回の改善点
「実施した」という事実だけを記録するのではなく、振り返りの内容まで書くことが重要です。運営指導では、記録の内容から「実際に訓練をしているか」を判断されます。「特になし」だけが並ぶ記録は、訓練の質を疑われることがあります。
消火訓練の運用、毎月の記録に消火確認を含める
「消火訓練も月1回の義務がある」と聞くと、毎月消火器を実際に噴射する必要があるように感じるかもしれません。ただし、消火器の中身を毎月使い切ることは現実的ではありません。実際の運用では次のように対応している施設が多いです。
- 消火器の実際の操作(粉末の噴射):年1〜2回、水消火器(練習用)を使って操作体験
- 毎月の訓練:消火器の設置場所の確認・初期消火の手順の確認・実際に消火器を手に持つ動作確認
毎月の記録には「消火器の設置場所と使い方を確認した」「担当者が初期消火の手順を説明した」など、消火に関する内容を含めてください。これにより「消火訓練を実施した」という記録として成立します。
なお、消防法に基づく消防計画を作成している施設では、消防署への訓練結果の報告が必要な場合があります。自治体・管轄消防署のルールを確認してください。
運営指導でよく指摘される5つの不備
保育所の避難訓練に関して、運営指導でよく確認される不備を整理します。
- 年間12回の記録が揃っていない:年度の途中から記録を始めた、夏季や繁忙期に実施を忘れたなど。3月末の時点で12回に達していない施設は珍しくありません。月初に「今月の訓練日」を決めておくと抜け防止になります
- 消火訓練の記録が別途存在しない:避難訓練の記録しかなく、消火に関する確認が記録に含まれていないケース。毎月の記録に消火確認の欄を設けておくと漏れを防げます
- 想定が毎回同じ:12回すべてが「地震→校庭に避難」という施設があります。想定のバリエーションが乏しいと、実際の緊急時に対応できないリスクがあります
- 延長保育時・夜間帯の訓練がない:通常保育時間だけでなく、少人数体制になる延長保育時の訓練も年1回以上は実施することが望ましいです
- 振り返りの記録がない・「特になし」だけ:形式的な記録では、実際に訓練が行われたかどうかを確認できません。改善点が見つからなかった場合も「避難時間は○分○秒で前回より短縮」など具体的な内容を書いてください
まとめ
保育所の避難訓練は、避難と消火の両方を対象に月1回以上の実施が義務(第6条第2項)です。
年間計画を立てて複数の想定パターンを組み合わせること、訓練記録には実施日時・想定・参加者数・内容・振り返りの5項目を残すことが基本です。消火訓練は毎月の記録に消火確認を含めておくと、年間通じて「消火訓練も実施済み」の状態を保てます。
年間計画様式・訓練記録様式・振り返りシートをまとめたツールを用意しています。ぜひ活用してください。


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