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ボイラーの煙道末端・空気予熱器・エコノマイザ(節炭器)などの低温部品では「低温腐食」が発生します。排気ガス中の硫黄酸化物が露点以下の金属面で硫酸となり、金属を腐食させる現象です。二級ボイラー技士試験では低温腐食の発生メカニズム・露点温度・防止策が出題されます。
低温腐食のメカニズム
低温腐食は次のステップで発生します。
- 燃料(重油・石炭・灰分のある燃料)に含まれる硫黄(S)が燃焼して二酸化硫黄(SO₂)が生じる
- 一部の SO₂ がさらに酸化されて三酸化硫黄(SO₃)になる
- 排気ガスが冷えてくると SO₃ と水蒸気(H₂O)が結合し、硫酸(H₂SO₄)の蒸気が生じる
- 金属面の温度が硫酸の露点以下になると、硫酸が金属面に凝縮して腐食が起きる
この腐食を「低温腐食(硫酸腐食)」と呼びます。水蒸気だけの露点(60〜70℃程度)よりも硫酸の露点は高く(120〜160℃程度。燃料の硫黄含有量による)、エコノマイザや空気予熱器の出口温度がこれを下回ると腐食が始まります。
低温腐食が起きやすい場所
| 場所 | 低温腐食のリスクが高い理由 |
|---|---|
| エコノマイザ(節炭器) | 給水を予熱するため管内を低温の給水が流れる。管表面温度が排ガス温度より低くなる |
| 空気予熱器(エアプレヒーター) | 外気を燃焼用空気として加熱する際、入口側の空気温度が低い。金属面が露点以下になりやすい |
| 煙道末端・煙突根元 | 燃焼ガスが大量の外気と混合して温度が急落する場所 |
| ボイラー停止中の缶内外面 | 停止後に金属面が外気温まで冷える過程でも硫酸が凝縮して腐食が進む |
露点温度とは
露点温度とは、気体(排ガス)中に含まれる凝縮性蒸気(水蒸気・硫酸蒸気)が金属面に液体として凝縮し始める温度です。
- 水蒸気の露点:燃焼排ガスの場合、概ね 60〜70℃。この温度以下で管表面に水が凝縮する
- 硫酸(H₂SO₄)の露点:SO₃ 濃度(燃料の硫黄分)によって変わるが、概ね 120〜160℃。水の露点よりはるかに高い
硫酸の露点が高いため、「エコノマイザ出口の金属温度を硫酸露点より高く保つ」ことが低温腐食防止の基本的な管理指針です。
低温腐食の防止策
| 防止策 | 内容 |
|---|---|
| 排ガス温度を露点以上に保つ | 煙道末端の排ガス温度が硫酸露点(120〜160℃)を下回らないよう、燃焼量・空気比を管理する。ただし排ガス温度を上げすぎると熱損失が増える |
| 給水予熱でエコノマイザ管温度を上げる | 給水脱気・予熱でエコノマイザ入口の給水温度を上げ、管表面温度を露点以上に保つ |
| 低硫黄燃料への切り替え | 硫黄含有量が少ない燃料(低硫黄重油・天然ガス)を使えば SO₃ の発生量が減り、硫酸露点が下がる |
| 耐腐食性材料の使用 | 低温部品の材料にステンレス・特殊耐食鋼・コーティングを施した材料を使う |
| 停止時の乾燥管理 | 停止後は速やかに残熱・換気で缶内を乾燥させ、硫酸凝縮の機会を減らす |
燃料の硫黄分と低温腐食の関係
| 燃料 | 硫黄含有量 | 低温腐食リスク |
|---|---|---|
| 天然ガス | 極めて少ない(0.01%以下) | ほぼなし |
| 都市ガス(LNG主体) | 硫黄分なし | なし |
| A重油 | 0.5%以下(JIS規格) | 低い |
| C重油 | 3%以下(JIS規格) | 高い |
| 石炭 | 種類により1〜5%程度 | 高い(フライアッシュとの複合腐食も起きる) |
高温腐食との違い
ボイラーには低温腐食以外に「高温腐食」もあります。燃焼炉内の高温部で発生する腐食で、バナジウム・ナトリウム成分(重油に含まれる)が溶融スラグ状になって過熱器管・炉壁を侵す現象です。低温腐食と混同しないよう整理します。
| 低温腐食 | 高温腐食 | |
|---|---|---|
| 発生場所 | 煙道末端・エコノマイザ・空気予熱器など低温部 | 過熱器・炉壁など高温部 |
| 原因物質 | 硫酸(SO₃ + H₂O)の凝縮 | バナジウム(V₂O₅)・ナトリウム(Na₂SO₄)の溶融攻撃 |
| 対象燃料 | 硫黄を含む燃料全般 | バナジウム・ナトリウムを含む重油(特にC重油) |
| 防止策 | 排ガス温度管理・低硫黄燃料 | 低バナジウム燃料・管材料の選定・添加剤(コンバスチョンアジタント) |
試験で間違えやすいポイント
- 「低温腐食は煙道の高温部で起きる」は誤り。低温部(露点以下)で発生する
- 「低温腐食の原因物質は水だけ」は誤り。硫酸(SO₃と水の結合)が主因
- 「硫酸の露点は水蒸気の露点より低い」は誤り。硫酸の露点の方が高い(120〜160℃ vs 60〜70℃)
- 「天然ガスを燃料に使えば低温腐食のリスクは高くなる」は誤り。天然ガスは硫黄分が極めて少なくリスクは低い
この記事のまとめ
- 低温腐食=硫黄含有燃料の排ガス中のSO₃が水と結合して硫酸になり、露点以下の金属面を腐食する現象
- 硫酸の露点は120〜160℃(水蒸気の露点60〜70℃より高い)。エコノマイザ・空気予熱器が最もリスクが高い
- 防止策:排ガス温度を露点以上に管理・低硫黄燃料を使用・給水予熱で管温度を上げる
出典:ボイラー及び圧力容器安全規則(e-Gov法令検索)・ボイラー構造規格(昭和47年労働省告示第33号)・安全衛生技術試験協会 公表試験問題
作成:fufumumu_design|更新:2026年11月
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