小規模多機能型居宅介護は、認知症の方が地域で暮らし続けるために適したサービスとして設計されています。「通い・宿泊・訪問」を1事業所が一体的に担うことで、認知症の行動・心理症状(BPSD)への継続したケアが可能です。この記事では認知症への対応という観点から、小規模多機能の特性・認知症専門の事業所との違い・算定できる加算を整理します。
小規模多機能が認知症ケアに適している理由
認知症の方のケアで課題になりやすいのは「環境の変化への弱さ」です。通い先が変わる・担当者が変わるといった状況がBPSD(徘徊・興奮・不眠等)を悪化させることがあります。
小規模多機能型居宅介護は、通い・宿泊・訪問を同じスタッフチームが担うため、以下の点が認知症ケアに有利です。
| 特性 | 認知症ケアへの効果 |
|---|---|
| 担当スタッフが固定される | 顔なじみのスタッフによる関わりで安心感が生まれやすい |
| 通い・宿泊・訪問が同じ環境 | 場所の変化が少なく、BPSDを悪化させるリスクが低い |
| 1日の様子が事業所で共有される | 訪問時の状態と通い時の状態をつないで情報共有できる |
| 宿泊を柔軟に組み合わせられる | 家族の介護疲れや急なレスパイトに対応しやすい |
認知症専門事業所との違い
認知症ケアに特化した地域密着型サービスとして「認知症対応型通所介護」と「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」があります。小規模多機能との違いを以下に整理します。
| 項目 | 小規模多機能型居宅介護 | 認知症対応型通所介護 | 認知症対応型共同生活介護(GH) |
|---|---|---|---|
| サービスの種類 | 通い+宿泊+訪問(3種類) | 通いのみ | 24時間の生活支援(入居) |
| 認知症の要件 | なし(認知症でない方も利用可) | 認知症の診断が必要 | 認知症の診断が必要 |
| 在宅継続 | 自宅で生活しながら通い・宿泊・訪問を使う | 自宅で生活しながら通う | グループホームに転居して生活する |
| 定員 | 登録29人・通い18人・宿泊9人 | 12人以下(単独型の場合) | 1ユニット9人以下(最大3ユニット) |
小規模多機能は認知症専門ではありませんが、認知症の方が多く利用しているのが実態です。認知症の診断がない軽度認知症(MCI)の方や、複数の慢性疾患を持ちながら在宅生活を続けたい方にも適したサービスです。
算定できる認知症関連の加算
小規模多機能型居宅介護では、認知症ケアに関連する加算を算定できます。
| 加算の種類 | 単位数 | 算定条件の概要 |
|---|---|---|
| 認知症加算Ⅰ | 月920単位(登録者1人あたり) | 認知症介護実践リーダー研修修了者等の専門職員を一定数以上配置している場合 |
| 認知症加算Ⅱ | 月848単位(登録者1人あたり) | 認知症介護基礎研修修了者を含む体制で認知症ケアを提供している場合 |
| 認知症行動・心理症状緊急対応加算 | 200単位/日(7日間限度) | BPSDが急に悪化した場合の短期間の緊急受け入れ |
| 若年性認知症利用者受入加算 | 月920単位(登録者1人あたり) | 65歳未満の若年性認知症利用者を受け入れた場合 |
認知症加算(月920単位)は、登録者の多くが日常生活自立度Ⅲ以上の認知症の方であれば、収入の大きな上乗せになります。認知症加算を算定するためには、日常生活自立度の評価と記録を適切に行うことが必要です。
BPSDへの対応と事業所の体制
認知症の行動・心理症状(BPSD)には、徘徊・異食・暴言・不眠・夕暮れ症候群等があります。小規模多機能での対応で重要な点は以下のとおりです。
- 個別の認知症ケア計画の作成:症状のトリガー・有効なアプローチを個人ごとにまとめた計画
- スタッフ全員での情報共有:通い・宿泊・訪問を通じた状態変化の共有(申し送り・記録)
- 家族への情報提供:日中の様子・薬の変更・症状の変化を家族に定期的に伝える
- かかりつけ医・精神科との連携:BPSDが悪化した場合の受診・薬剤調整の対応
宿泊サービスが認知症ケアに果たす役割
宿泊サービスは、家族の介護疲れを軽減する「レスパイト」としての役割が特に大きいです。認知症の進行度が上がるほど家族の負担が増しますが、宿泊を定期的に使うことで在宅継続の期間が延びることがあります。
宿泊の頻度・パターンは利用者・家族の状況に合わせて柔軟に調整できます。「週末だけ宿泊」「月に数回まとめて宿泊」といった使い方が認知症ケアの現場では一般的です。
認知症ケアに必要な研修体制
小規模多機能型居宅介護の職員が認知症ケアの質を維持するには、以下の研修を組み合わせることが効果的です。
- 認知症介護実践者研修(認知症ケアの基礎を習得)
- 認知症介護実践リーダー研修(チームリーダーとしての指導力)
- 認知症サポーター養成講座(職員全員を対象)
また、BCP(業務継続計画)の中に認知症利用者に特化した緊急時対応(BPSD悪化時・徘徊時等)を盛り込むことで、運営の安全性を高めることができます。
小規模多機能型居宅介護の認知症加算を含めた収支計画の試算は、小規模多機能型居宅介護 収支シミュレーターで確認できます。
参考・出典
- 指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年厚生労働省告示第126号・令和6年改定後)
- 認知症施策推進大綱(令和元年厚生労働省)
- 指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について(通知)
この記事は2026年11月時点の法令・告示に基づいています。
福祉事業の開業・運営に関するツールと記事の一覧は福祉事業の開業と運営(入口ページ)にまとめています。収支シミュレーター・経営診断・法定研修キットを無料で試せます。


コメント