データマネジメント試験(仮称)は2027年度に始まる新設試験のため、本番の過去問はまだ存在しません。その代わりにIPAが公表しているのが、科目A3問・科目B2問、合計5問の公式サンプル問題です。この5問は、今のところこの試験について公式に確認できる「実際の問題」のすべてです。
試験ガイドの記事では出題範囲やITパスポートとの違いを中心にまとめたので、科目Aの3問しか簡単にしか紹介できませんでした。このページでは、科目Bの長文ケース問題2問も含めて、5問すべてを問題文・選択肢・正解・解説まで通しで見ていきます。
▶ 試験全体の位置づけ・出題範囲はこちら:データマネジメント試験(仮称)ガイド
科目A(知識):3問
科目Aは、用語や考え方の理解を四肢択一で問う問題です。3問とも「専門用語を知っているか」ではなく「データを組織でどう扱うのが適切か」という考え方を問う作りになっています。
問1:データガバナンスを確保する目的
問題
組織においてデータガバナンスを確保することが重要である背景及び理由として,最も適切なものはどれか。
- データの活用が広がる中で,組織内のデータの品質やセキュリティを維持し,意思決定の精度向上,法令遵守などを実現することによって,組織の価値と信頼を高めるため。
- データの活用が広がる中で,組織内のデータを部門ごとに分断(サイロ化)し,保有するデータの内容を秘匿にすることによって,部門を越えたデータアクセスを統制するため。
- デジタル技術が高度化する中で,データ基盤を導入する際の評価基準及びプロセスを組織内で確立することによって,情報システム部によるITコントロールを強化するため。
- デジタル技術が高度化する中で,データを処理する人手の業務を自動化ツールに置き換えるデジタル化を推進することによって,データ処理に関わる人的コストを最適化するため。
正解:1
データガバナンスの目的は、組織全体でデータの品質・セキュリティ・法令遵守を確保し、データにもとづく意思決定の精度を高めることで、組織の価値と信頼を高めることにあります。選択肢2の「サイロ化」は、データガバナンスが解消すべきリスクとして出題範囲にも明記されている状態で、目的にはなり得ません。選択肢3・4は、それぞれITコントロールの強化や人的コストの最適化の話で、データガバナンス本来の目的からは外れています。
問2:データ品質を劣化させる「望ましくない対応」
問題
AIやBIツールの処理対象となるデータは,そのデータ品質を適切に維持することが重要である。データ品質の劣化につながる望ましくない対応だけを全て挙げた組合せはどれか。
- a 事業部門のデータ品質管理の実務を,データオーナーから任命を受けたデータスチュワードが,情報システム部門,DX推進部門及びDMO(データマネジメント推進組織)と連携して担う。
- b データの入力規則やシステムによるチェック(バリデーション)を設けると,データ登録の即時性や柔軟性が低下するので,入力の形式や表現はデータ登録担当者が都度判断する。
- c 複数の情報システムに分散して保存されているデータを統合する際に,マスターデータの整合性及び一貫性を確保するための名寄せや重複排除を,対応ルールに沿って実施する。
- a,b
- a,c
- b
- なし(全て望ましい対応)
正解:3
bは、入力規則やバリデーションを設けずに登録担当者の判断任せにすると、表記ゆれや欠損が生じてデータ品質が劣化するため、望ましくない対応です。aはデータスチュワードが関係組織と連携して品質管理を担う正しい体制、cは名寄せ・重複排除をルールに沿って行う正しいデータ統合の手順で、どちらも望ましい対応にあたります。「入力チェックを外して人任せにする」がデータ品質劣化の典型パターンだと分かる問題です。
問3:ビジネスメタデータの整備という課題
問題
メタデータを次のa〜cの三つに分類したとき,特にa(ビジネス及び業務に関するメタデータ)の整備が組織にとって課題となることが多い。この課題を解決する方法として,最も適切なものはどれか。
〔メタデータの分類と項目の例〕
a ビジネス及び業務に関するメタデータ:データの意味,利用ルールの説明など
b ITに関するメタデータ:テーブル名,カラムの型・桁の説明など
c システム運用に関するメタデータ:データの作成日時,データ容量の説明など
(注記:aはビジネスメタデータ,bはテクニカルメタデータ,cはオペレーショナルメタデータと呼称されることがある)
- “業務とデータの関係の説明”は事業部門の内部的な情報であり,データサイエンティストによる分析の妨げになるので,aのメタデータには記さないでおく。
- aのメタデータを情報システム構築時に一度整備した後は,更新誤りを避けるために,内容の追加や変更は事業部門では行わないでおく。
- データカタログツールを情報システム部門が中心となって各事業部門向けに個別に導入し,その運用を各事業部門に依頼する。
- ビジネス及び業務に関する用語集(ビジネスグロッサリー)を各事業部門が参画して組織全体向けに整備し,aのメタデータの整備と併せて継続的に管理する。
正解:4
ビジネスメタデータ(データの意味や利用ルール)は、業務を知る事業部門でなければ正しく記述できません。各事業部門が参画して組織全体向けのビジネスグロッサリーを整備し、継続的に管理することが適切な進め方です。業務情報を記さない、構築時以降は更新しない、部門ごとにバラバラにツールを入れる、という選択肢1・2・3は、いずれも整備を妨げる対応です。「事業部門が参画して」「組織全体向けに」「継続的に」の3つがそろっているのが正解の条件になっています。
科目B(技能):2問
科目Bは、架空の会社を舞台にした長文のケースを読み、その状況で「誰が何をするのが適切か」を判断させる問題です。知識の暗記だけでは解けず、出題範囲にある「データオーナーシップ」「派生データの責任」といった考え方を、具体的な場面に当てはめる力が問われます。
問1:品質改善アクションプランの責任の所在
問題文
A社は,事務機器・オフィス用品販売会社である。データドリブン経営を推進するために,全社のデータを集約したデータ基盤を構築し,各部門による自律的なデータ活用を推進している。その実現のために,A社では,“データは生成した部門の資産であり,同時に全社の資産でもある”という考えの下,次のデータ活用ルールを定めている。
〔データ活用ルール〕
1 データオーナーシップ:業務システムなどで最初にデータを生成した部門をデータオーナーとする。値の加工を行わずにデータを連携・活用する場合,データ基盤上でもデータを生成した部門が,品質・意味に対する責任を負う。
2 派生データの責任:データ基盤のデータに対して,値の変換,クレンジング,統合などの加工を行って新たなデータを生成した場合,又は独自の修正を加えてレポートを作成した場合,実施した部門が成果物である当該データのデータオーナーとなり,その品質や内容に対する責任を負う。
3 カタログの管理責任:データカタログシステムの稼働維持はデータ基盤チームが行う。各データの意味の記述内容の登録・更新・削除は,各データのデータオーナーが行う。
4 品質保証の原則:データの活用者は,活用するデータの品質に疑義がある場合,データカタログを参照し,データオーナーに問合せや改善要望を行う。
A社のマーケティング部のBさんは,来期のキャンペーン戦略立案のために,データ基盤にあるデータで分析することを考え,データカタログを検索した。分析対象とするデータ項目に関する情報は次のとおりである。
〔分析対象とするデータ項目に関する情報〕
・商談確度:連携元部門=営業部,データ基盤での加工仕様=なし,意味=S:受注目前/A:提案中
・名寄せ後取引先名:連携元部門=営業部,データ基盤での加工仕様=あり(ルールベース処理で表記を統一),意味=分析用に表記ゆれを吸収した取引先名称
Bさんは,商談確度のデータを確認したところ,データカタログの意味にはない“C”や“引合中”といった値が多数存在し,一部のデータが未入力であることも判明した。このままでは正確な分析ができず,キャンペーンのターゲット選定を誤るリスクがある。そこで,Bさんは,A社のデータ活用ルールに照らして,次の四つのアクションを計画し,品質改善と責任の所在を明確にすることにした。
〔品質改善アクションプラン〕
1 意味欄に該当しない値,未入力などのデータ品質の問題を,【a】に報告する。
2 恒久対策には時間が掛かることから,来週の戦略会議に間に合わせる目的で,Bさんがやむを得ず,分析用データに対して独自の修正ルールを適用してレポートを作成する。この場合,レポートの数値に関する説明責任は【b】が負う。
3 今後,意味欄に該当しない値が発生しないよう,【c】が業務ルールの徹底などの恒久対策を主導する。
4 データの実態と意味欄の登録内容がかい離していることから,データカタログの意味欄を正しい状態に【d】が更新する。
設問 表中の【a】〜【d】に入れる字句の組合せはどれか。解答群のうち,適切なものを選べ。
- a=営業部,b=営業部,c=営業部,d=営業部
- a=営業部,b=営業部,c=データ基盤チーム,d=データ基盤チーム
- a=営業部,b=マーケティング部,c=営業部,d=営業部
- a=営業部,b=マーケティング部,c=営業部,d=データ基盤チーム
- a=営業部,b=マーケティング部,c=データ基盤チーム,d=営業部
- a=営業部,b=マーケティング部,c=データ基盤チーム,d=データ基盤チーム
- a=データ基盤チーム,b=営業部,c=営業部,d=データ基盤チーム
- a=データ基盤チーム,b=データ基盤チーム,c=営業部,d=営業部
- a=データ基盤チーム,b=マーケティング部,c=データ基盤チーム,d=データ基盤チーム
正解:3(a=営業部,b=マーケティング部,c=営業部,d=営業部)
ルール1より、商談確度は加工なしで連携されているため、データオーナーは生成部門である営業部です。したがって品質問題の報告先【a】は営業部になります。ルール2より、Bさんが独自の修正を加えてレポートを作成した場合、その成果物の責任はBさんの所属するマーケティング部が負うので【b】はマーケティング部です。恒久対策としての業務ルールの徹底はデータオーナーである営業部が主導するので【c】は営業部、ルール3より、カタログの意味欄の登録・更新もデータオーナーが行うので【d】も営業部です。データ基盤チームはカタログシステムの稼働維持を担うだけで、データの意味の記述内容そのものには責任をもちません。
この問題から読み取れるのは、「加工していないデータの責任は生成部門」「加工・修正した人の責任はその人の所属部門」「カタログという箱の管理と、カタログの中身の管理は別の役割」という3つの原則です。
問2:販売チャネル横断の顧客データ統合
問題文
C社は,一般消費者向けのECサイトと実店舗の両方で商品を販売しており,それぞれで管理している顧客データを,データ基盤を使って統合し,分析することを目指している。当該分析はDさんが担当することになった。統合対象は,ECサイト顧客データと店舗会員データである。
Dさんはまず,両データの仕様を理解するために,データカタログで関連データの定義を確認した。
〔データカタログの検索結果〕
・データオーナー:ECサイト顧客データ=EC事業部/店舗会員データ=店舗運営部
・顧客ID:ECサイト=数値型,顧客を一意に特定するキー,主キー(一意性制約あり,NULL不可)/店舗=文字列型,顧客を一意に特定するキー,主キー(一意性制約あり,NULL不可)
・電話番号:ECサイト=文字列型,配送連絡用の本人認証済み携帯電話番号,形式999-9999-9999,一意性制約あり,NULL不可/店舗=文字列型,会員カード申込時の本人認証済み携帯電話番号,形式99999999999,一意性制約あり,NULL不可
・メールアドレス:ECサイト=文字列型,会員登録時のメールアドレス,一意性制約あり,NULL不可/店舗=文字列型,会員カード申込時のメールアドレス,一意性制約あり,NULL許容
Dさんは,個人情報を取り扱うために必要なC社内の申請を提出し,実データを参照することの許可を得た。その上で,データプロファイリングを行い,両データの全件を対象に,各項目の未入力(NULL)の有無や値の傾向を確認した。その結果,ECサイト顧客データはいずれの項目も未入力はなかった。一方で,店舗会員データは,電話番号は全てのレコードについて入力されていたものの,メールアドレスは一部のレコードが未入力となっていた。
その後,具体的なデータ形式の確認のために,同一顧客と推測される実データを抽出し,突き合わせた。
〔実データのサンプルの調査結果(抜粋)〕
・情報 一郎:EC顧客ID=10234,EC電話番号=090-0000-0001,ECメール=i.jouhou@example.jp/店舗顧客ID=S0010588,店舗電話番号=09000000001,店舗メール=i.jouhou@example.jp
・基本 花子:EC顧客ID=25811,EC電話番号=090-0000-0002,ECメール=kihon.h@example.jp/店舗顧客ID=S0023145,店舗電話番号=09000000002,店舗メール=kihon.h@example.jp
・経済 次郎:EC顧客ID=31105,EC電話番号=090-0000-0003,ECメール=j.keizai@example.jp/店舗顧客ID=S0009872,店舗電話番号=09000000003,店舗メール=(NULL)
(注記:電話番号のハイフンの有無やメールアドレスの記述形式については,実データの全てにおいて同様の傾向であることが確認されている。顧客名は確認のために各IDにひも付く氏名情報を示したものであり,同姓同名の存在や手書き申込時の入力精度のばらつきなどがあることから,データ結合のキーとしては使用できない)
経営陣から,優良顧客の特定のために,販売チャネル横断での顧客分析のレポートを至急作成するよう要求があった。Dさんは,この要求に対して,このままでは同一顧客のECサイトと店舗の購買実績をひも付けることができず,正確な優良顧客の特定ができないという根本的な課題が存在すると考えた。
Dさんは,この状況における最も根本的な課題は【a】であると特定した。そして,経営陣からの緊急の要求に応えるための現実的な暫定対応として,【b】を検討した。
〔字句〕
(一)ECサイト顧客データと店舗会員データにおいて,電話番号のデータ形式が統一されていないこと
(二)ECサイトと実店舗それぞれで顧客を一意に識別する顧客IDが,販売チャネル横断の顧客識別子として機能しないこと
(三)店舗会員データのメールアドレスは,データカタログ上でNULL許容とされており,実データにも未入力が含まれていること
(四)ECサイトと実店舗それぞれで一意性が保証されている顧客IDをそのまま結合キーとし,暫定的なレポートを作成すること
(五)一意性のある電話番号のデータ形式を整形し,電話番号をキーとして両データを結合して暫定的なレポートを作成すること
(六)一意性のあるメールアドレスをキーとして両データを結合し,暫定的なレポートを作成すること
設問 本文中の【a】,【b】に入れる字句の組合せはどれか。解答群のうち,最も適切なものを選べ。
- a=(一),b=(四)
- a=(一),b=(五)
- a=(一),b=(六)
- a=(二),b=(四)
- a=(二),b=(五)
- a=(二),b=(六)
- a=(三),b=(四)
- a=(三),b=(五)
- a=(三),b=(六)
正解:5(a=(二),b=(五))
根本的な課題【a】は、ECと店舗でそれぞれ別々に採番された顧客IDが、販売チャネルをまたいで同一顧客を識別するキーとして機能しないこと(二)です。電話番号の形式不統一(一)やメールアドレスの未入力(三)は、確かに存在する問題ではありますが、表面的な技術課題にとどまります。暫定対応【b】は、両データで一意性制約ありかつNULL不可で全件入力されている電話番号を、ハイフンの有無を整形したうえで結合キーに使うこと(五)が現実的です。顧客IDは体系が異なるためそのまま結合できず(四は不可)、メールアドレスは店舗側にNULLがあるため全件を結合できません(六は不適切)。
この問題のポイントは、「根本的な課題」と「今すぐ使える暫定対応」を分けて考える力です。電話番号のハイフン表記ゆれは根本原因ではなく、単なる形式の違いにすぎません。一方で、「両方のデータに存在し、一意性があり、NULLがない項目」という条件で暫定キーを選ぶ考え方は、実務のデータ統合でもそのまま使える視点です。
5問から見えてくること
科目A・科目Bを通して見ると、この試験が問おうとしているものがはっきりしてきます。用語の暗記量ではなく、次の3つです。
- 責任の所在を場面ごとに判断できるか:データを生成した部門・加工した部門・カタログを管理する部門、それぞれの役割の違いを理解しているか
- 根本原因と表面的な問題を区別できるか:目の前で起きている不具合(表記ゆれ・未入力など)と、その裏にある構造的な課題(識別子の設計など)を切り分けられるか
- 理想と現実のバランスを取れるか:時間をかけた恒久対策と、今すぐ必要な暫定対応の両方を、状況に応じて選べるか
過去問という蓄積がまだない試験だからこそ、この5問を「正解を覚える」のではなく「なぜこの選択肢が適切なのか」という考え方まで理解しておくことが、これから出る新しい問題に対応する近道になります。
この5問以外の問題を解きたい方へ
公式サンプル問題は、この5問がすべてです。当サイトでは、この5問をそのまま無料で解けるほか、IPA公表のシラバス(案)にもとづいてAIがその場で新しい問題を作る仕組みも用意しています。出題根拠(シラバスのどの項目にもとづく問題か)を毎回表示するので、この5問で見た「考え方」を、違う場面設定で繰り返し練習できます。
▶ データマネジメント試験(仮称)AI問題集を使ってみる(公式サンプル問題は無料)
参考資料(すべてIPA・独立行政法人情報処理推進機構)
- 「データマネジメント試験(仮称)科目A サンプル問題」(2026年6月公表・正解つき)
- 「データマネジメント試験(仮称)科目B サンプル問題」(2026年6月公表・正解・出題趣旨つき)
- 「新試験制度のサンプル問題について」


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