保育所のハラスメント防止研修、何をどこまでやればいいか。

保育所のハラスメント防止研修 義務と内容 アイキャッチ 福祉事業の開業と運営



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保育所のハラスメント防止は、2本の法律に基づく措置義務があります。セクシャルハラスメントは男女雇用機会均等法、パワーハラスメントは労働施策総合推進法によって、事業主に防止措置が義務づけられています。

この記事では、義務の根拠・ハラスメントの種類と定義・研修で取り上げるべき内容・相談窓口の設置方法を整理します。「指針を作っていない」「相談窓口をどこに設ければいいかわからない」という施設の参考にしてください。

義務の根拠は2本の法律

保育所に関係するハラスメント防止の義務を定めている法律は、次の2本です。

種類 根拠法令 義務化の時期
セクシャルハラスメント(セクハラ) 男女雇用機会均等法 第11条 1999年(平成11年)施行
パワーハラスメント(パワハラ) 労働施策総合推進法 第30条の2 中小企業は2022年4月から義務
マタニティハラスメント(マタハラ) 男女雇用機会均等法 第11条の3 2017年(平成29年)施行

保育所の多くは中小規模の事業者です。パワハラ防止措置は2022年4月から中小企業にも義務化されており、現時点では全事業主が対象です。「小さな施設だから対象外」ということはありません。

なお、厚生省令第63号(児童福祉施設の設備及び運営に関する基準)にも、職員の「資質の向上」に関する規定があります。ハラスメント防止研修は、職員の資質向上の一環として位置づけることもできます。

3種類のハラスメントの定義

研修では、まず「どこからがハラスメントか」の定義を全職員で共有することが大切です。

セクシャルハラスメント(セクハラ)

職場における性的な言動によって、他の労働者の就業環境が害されることをいいます。加害者・被害者は男女を問わず、同性間でも成立します。

具体例:外見へのコメント・性的な冗談・不必要な身体的接触・交際や食事を強要するなど。

パワーハラスメント(パワハラ)

労働施策総合推進法第30条の2第1項の定義では、次の3つの要素をすべて満たすものをいいます。

  1. 優越的な関係を背景にした言動であること
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
  3. 労働者の就業環境が害されること

6類型(身体的な攻撃・精神的な攻撃・人間関係からの切り離し・過大な要求・過小な要求・個の侵害)が厚生労働省の指針で示されています。

マタニティハラスメント(マタハラ)

妊娠・出産・育児休業などを理由とした不利益な取り扱いや言動をいいます。「妊娠を報告したら業務を外された」「育休後に不当な配置転換をされた」などが該当します。保育所は女性職員の割合が高く、マタハラのリスクが特に意識されやすい職種です。

事業主に求められる措置の内容

各法律が定める事業主の措置義務は、大きく4つに分けられます。

  1. 方針の明確化と周知:「ハラスメントは許さない」という方針を施設のルールとして文書化し、全職員に周知する
  2. 相談窓口の設置:相談を受け付ける担当者または窓口を設置し、職員に知らせる
  3. 相談への迅速な対応:相談が来たら事実確認を行い、適切に対応する体制を整える
  4. 再発防止措置:ハラスメントが起きた場合、再発を防ぐための対応を取る(必要に応じて懲戒・配置転換等)

「方針の文書化と周知」が最初の一歩です。就業規則にハラスメント防止の規定を設けるか、別途「ハラスメント防止規程」を作成して職員に周知してください。

研修で取り上げる3つのテーマ

ハラスメント防止研修では、次の3つのテーマを軸に構成すると内容が整理しやすいです。

テーマ1:ハラスメントの定義と具体例

3種類のハラスメント(セクハラ・パワハラ・マタハラ)の定義と、保育現場で起きやすい具体例を確認します。「これはハラスメントなのか」という曖昧なグレーゾーンについても話し合う時間を設けると、職員が自分の行動を見直しやすくなります。

テーマ2:相談窓口の使い方と報告の流れ

施設の相談窓口の担当者名・連絡先・相談できる内容・秘密保持の方針を説明します。「相談したことが周囲に知れ渡るのでは」という不安が相談の障壁になることが多いため、秘密保持の取り組みを明確に伝えることが大切です。

テーマ3:被害を受けたとき・見かけたときの対応

ハラスメントを受けた場合または目撃した場合に、どのように行動するかを確認します。加害者への直接の抗議は難しいことが多いため、「記録を残す」「信頼できる上司や窓口に相談する」など、実際に取れる行動を具体的に伝えてください。

相談窓口の設置と周知の方法

相談窓口の設置に、特別な設備や費用は必要ありません。次の2点を決めて文書にすれば機能します。

  • 担当者の指定:施設長・主任・外部の社会保険労務士など。担当者が加害者側になるケースを想定して、複数の窓口を設けることが望ましいです
  • 周知方法:職員に配布する資料・休憩室の掲示・入職時のオリエンテーションなど

窓口の担当者は、相談を受けた内容の秘密を守ること、相談者が不利益を受けないように配慮することが求められます。担当者向けの対応マニュアルを準備しておくと、いざというときに迷わず対応できます。

指針と研修記録の整備

ハラスメント防止に関して整備しておくべき文書は次のとおりです。

  • ハラスメント防止規程(または就業規則の該当部分):ハラスメントの定義・禁止行為・相談窓口・違反した場合の措置を記載
  • 研修の実施記録:実施日・参加者名・研修のテーマ・内容の概要
  • 相談受付記録:相談日・概要・対応した内容(秘密保持に注意して保管)

研修は年1回以上を目安に実施してください。新規採用の職員には、採用後できるだけ早い時期に基本的な内容を伝える機会を設けることが望ましいです。

運営指導でよく指摘される不備

  • ハラスメント防止に関する指針・規程が存在しない:就業規則にも別規程にも記載がなく、「口頭で伝えています」という状態では措置義務を果たしているとは言えません
  • 相談窓口の周知ができていない:窓口は設けているが、職員が「どこに相談すればいいか」を知らないケース。掲示や文書配布で全職員に周知してください
  • 研修の記録がない:「毎年朝礼でハラスメントについて話している」だけでは研修の記録として不十分です。実施日・参加者・内容が記録された書類が必要です
  • パート・非常勤職員が未受講:正規職員だけが研修を受け、パート・非常勤が参加していないケース。雇用形態を問わず全職員が受講できる体制を整えてください

まとめ

保育所のハラスメント防止措置は、セクハラ(均等法第11条)・パワハラ(労働施策総合推進法第30条の2)・マタハラ(均等法第11条の3)の3種類が対象です。

措置義務の内容は「方針の明確化・相談窓口の設置・迅速な対応・再発防止」の4つです。研修では定義と具体例・相談窓口の使い方・被害を受けたときの対応の3テーマを中心に構成し、研修記録を残してください。

研修の資料・確認テスト・相談窓口の設置様式をまとめたツールを用意しています。ぜひ活用してください。

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この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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