就労継続支援B型の工賃向上計画、目標設定と利用者への通知・都道府県への報告義務。

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就労継続支援B型の工賃向上計画、目標設定と利用者への通知・都道府県への報告義務。

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就労継続支援B型の事業所は、毎年度、工賃の目標水準を設定し、利用者に通知するとともに都道府県知事に報告する義務があります(指定基準第201条第4項)。この義務は計画書の作成にとどまらず、「利用者への通知」「都道府県への報告」の2つの行為をセットで完了することが求められています。

この記事では、工賃向上計画の法的根拠、前年度平均工賃の集計方法(令和6年度改定の新計算式)、目標設定の考え方、利用者通知・都道府県報告の手順、目標工賃達成加算の条件を整理します。

工賃向上計画の義務は、指定基準第201条第4項に根拠がある

指定基準第201条第4項は、次のように定めています。

「就労継続支援B型事業者は、年度ごとに前年度の工賃の水準を勘案して、工賃の目標水準を設定し、その目標水準及び前年度における工賃の水準を利用者に通知するとともに、都道府県知事に報告しなければならない。」

「計画書を作る」「報告書を書く」という手続きの問題ではなく、「利用者に通知する」「都道府県知事に報告する」という2つの行為が義務の核心です。運営指導では、通知と報告の両方が実施された記録が確認されます。

前年度平均工賃の集計は、令和6年度改定の新しい計算式を使う

令和6年度(2024年度)の報酬改定で、平均工賃月額の計算式が変わりました。改定後の計算式は次のとおりです。

区分 計算式
平均工賃月額(改定後) 工賃支払総額 ÷ 開所日1日あたりの平均利用者数 ÷ 12ヶ月

改定前は「工賃支払総額 ÷ 実利用人数 ÷ 12ヶ月」でしたが、改定後は「実利用人数」から「開所日1日あたりの平均利用者数」に変わりました。年度途中に入退所が多い事業所では、この変更が平均額の計算結果に影響します。集計の際は、どちらの計算式を使うかを確認します。

前年度の計算結果は、都道府県への報告書式に合わせて記録します。報告書式は都道府県(指定権者)によって異なる場合があるため、指定権者の案内を確認します。

目標工賃月額は、前年度実績を基準に現実的な水準で設定する

目標工賃月額の設定に法令上の最低額はありません(指定基準第201条第2項に定める月平均3,000円以上は達成義務であり、目標設定の下限ではありません)。第4項の「前年度の工賃の水準を勘案して」という表現が示すとおり、前年度の実績を基礎として設定します。

目標の設定にあたって確認することは次のとおりです。

  • 前年度の実績額を確認する:令和6年度改定後の計算式で再集計し、報告の基礎にする
  • 事業所の受注状況・生産活動の見通しを考慮する:受注が安定している作業と不安定な作業を分けて考える
  • 目標工賃達成加算の条件を意識する:後述の加算条件(月平均3,000円以上かつ前年度より高い額)を目標設定の参考にする

目標を高く設定しすぎると達成できず、次年度の通知・報告で前年度実績との乖離を説明しにくくなります。現実的な作業見通しに基づいた設定が、利用者への説明責任を果たすことにもつながります。

利用者への通知は、年度初めに書面または口頭で行う

目標工賃月額と前年度実績の工賃月額は、年度初め(4月ごろ)に全利用者へ通知します。通知の方法は法令上「書面」と限定されていませんが、後から記録として確認できる形で行うことが求められます。

通知の方法として一般的なものは次のとおりです。

通知の方法 記録の残し方
書面(お知らせ文)を配布する 配布した書面の控えを保管。受け取りのサインを取ると確実
朝の会・全体ミーティングで口頭で説明する 業務日誌や会議録に「工賃目標を説明した」と記録する
掲示板に掲示する 掲示した日付・場所・内容を記録する

「通知した」という記録が残っていない場合、運営指導で指摘の対象になります。利用者が理解できる言葉で伝え、「前年度は月平均○円でした、今年度の目標は○円です」という形で説明します。

都道府県への報告は、指定権者の書式と期日に従って行う

目標工賃月額と前年度実績の工賃月額は、都道府県知事(指定権者)に報告します。報告の書式・提出方法・提出期限は都道府県によって異なります。多くの都道府県では、障害福祉サービス等情報公表システムへの入力と合わせて報告する仕組みになっています。

報告の際に用意するものは次のとおりです。

  • 前年度の工賃支払総額の集計資料
  • 令和6年度改定後の計算式で算出した平均工賃月額
  • 今年度の目標工賃月額
  • 指定権者が求める報告書式(都道府県のサイトまたは案内で確認)

報告が遅れた場合や未報告の場合は、情報公表制度の未報告と合わせて報酬減算の対象となるリスクがあります。毎年度の報告期限をカレンダーに登録しておくことを研修で確認します。

目標工賃達成加算は、3,000円以上かつ前年度より高い額が条件

目標工賃達成加算は、月平均工賃が次の2つの条件をともに満たした場合に算定できます。

条件 内容
条件1:月平均工賃3,000円以上 1ヶ月の平均工賃月額が3,000円以上(指定基準第201条第2項の最低水準をクリアしていること)
条件2:前年度の実績より高い額 当該年度の月平均工賃月額が、前年度の実績を上回っていること

加算の算定単位は1日10単位です。加算を算定するには、都道府県への実績報告が適切に行われていることが前提です。年度末に実績を集計し、条件を満たしていれば翌年度から算定できます。

目標工賃達成加算の算定状況は運営指導でも確認されます。加算を算定している事業所は、都道府県への報告記録と工賃の集計資料を保管しておきます。

研修では、目標額と加算の条件を職員全員で確認する

工賃向上計画の研修では次の3点を確認します。

  1. 今年度の目標工賃月額と前年度実績を全職員で共有する:数字を知っている職員と知らない職員がいると、日常の作業改善の意識が分かれる。研修の冒頭で必ず共有する
  2. 利用者への通知が済んでいるか確認する:管理者が通知の記録(書面・業務日誌等)を確認し、「済」か「未」かを研修の場で報告する
  3. 目標達成に向けて作業面でできることを確認する:受注量・作業効率・利用者の出席状況のうち、職員の工夫で変えられる部分を確認する

まとめ

就労継続支援B型の工賃向上計画は、指定基準第201条第4項に基づき、毎年度、目標工賃月額の設定・利用者への通知・都道府県への報告の3つをセットで行うことが義務です。前年度の平均工賃月額は令和6年度改定後の計算式(工賃支払総額÷開所日1日あたりの平均利用者数÷12ヶ月)で集計します。目標工賃達成加算(1日10単位)は月平均3,000円以上かつ前年度より高い額が条件で、都道府県への報告が前提です。研修では目標額と加算の条件を全職員で共有し、通知の記録が残っているかを確認します。

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出典:指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第171号)第201条。令和6年度障害福祉サービス等報酬改定(平均工賃月額の計算式変更)。報告の詳細・期限は指定権者の案内で確認してください。作成日:2026年10月。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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