水消火器はA火災(普通火災)のみに適応します。B火災(油火災)とC火災(電気火災)には使用できません。消火効果は主に冷却消火です。現在の業務用消火器市場では強化液や粉末が主流で水消火器はほとんど使われていませんが、試験では出題されます。浸潤剤入り水消火器は水に浸潤剤等(薬剤規格省令第8条)を添加したもので、A火災への消火性能が高まります。
問題をすぐに解いてみたい方はこちらをご利用ください。
▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集
水消火器と浸潤剤入り水消火器
水消火器には「水(純粋な水)」を薬剤とするものと、水に浸潤剤等を添加した「浸潤剤入り水消火器」があります。
| 種類 | 薬剤 | 特徴 |
|---|---|---|
| 水消火器 | 水 | 冷却消火が主。水の表面張力が高く固体の内部に浸透しにくい |
| 浸潤剤入り水消火器 | 水+浸潤剤等(薬剤規格省令第8条) | 浸潤剤が水の表面張力を下げ、燃焼固体の内部への浸透性が高まる |
どちらもA火災のみに対応し、B・C火災には使用できません(消防法施行令別表第二)。
浸潤剤等の定義
消火器用消火薬剤の技術上の規格を定める省令(昭和39年自治省令第28号・以下「薬剤規格省令」)第8条では、消火薬剤(水を含む)に浸潤剤等を添加できることが規定されています。
薬剤規格省令第8条第1項:「消火薬剤(水を含むものとし…)には、浸潤剤、不凍剤その他消火薬剤の性能を高め、又は性状を改良するための薬剤(以下「浸潤剤等」という。)を混和し、又は添加することができる」
浸潤剤等には界面活性剤(浸透性向上)や不凍剤(凍結防止)が含まれます。これらは消火薬剤の性状または性能に悪影響を与えないものでなければなりません(同条第2項)。
適応火災はA火災のみ
水消火器・浸潤剤入り水消火器はA火災のみに適応します(消防法施行令別表第二)。
| 火災区分 | 対象 | 適応 | 理由 |
|---|---|---|---|
| A火災(普通火災) | 木材・紙・布など固体の燃焼 | 対応 | 冷却効果で燃焼物の温度を燃焼点以下に下げる |
| B火災(油火災) | 油脂類・有機溶剤の燃焼 | 使用禁止 | 水が高温の油に触れてスロップオーバーを起こし燃焼が拡大する危険がある |
| C火災(電気火災) | 通電中の電気設備の燃焼 | 使用禁止 | 水は電気を通すため(導電性)、感電の危険がある |
B火災・C火災に使用できない理由の詳細
B火災:スロップオーバーの危険
高温の油脂類(揚げ物油・ガソリン等)に水をかけると、水が瞬時に沸騰・気化して体積が急激に膨張します。この爆発的な気化により油が飛び散る現象をスロップオーバーといいます。飛び散った油が炎に触れると燃焼面が急激に拡大し、火災が大きくなります。水消火器はB火災に使うと逆効果になるため厳禁です。
C火災:感電の危険(導電性)
水は電気を通します。通電中の電気設備(分電盤・コンピュータ機器・電動機等)に水を放射すると、水の流れを通じて電流が人体に流れ込み感電する危険があります。C火災には電気絶縁性を持つ薬剤(粉末消火器・二酸化炭素消火器・強化液消火器(霧状放射))を使用します。
消火の仕組み:冷却消火が主
水消火器の主な消火効果は冷却消火です。補助的に窒息効果もあります。
| 消火効果 | 仕組み |
|---|---|
| 冷却効果(主) | 水が燃焼物の熱を吸収して温度を燃焼点以下に下げる。水の比熱・気化熱が大きく熱を奪う能力が高い |
| 窒息効果(補助) | 蒸発した水蒸気が酸素供給を一時的に遮断する |
浸潤剤入り水消火器では、浸潤剤が水の表面張力を下げ、燃焼固体の内部(木材・布等の深部)まで薬剤が浸透します。炭化した層の内部まで冷却できるため、再燃防止の効果が水単体より高くなります。
水の消火特性
水が冷却消火に優れている理由は比熱と気化熱が大きいことです。比熱が大きい(1cal/g・℃)ため1グラムの水で1℃温度を下げるのに必要なエネルギーが大きく、大量の熱を吸収できます。また、気化する際に大量の気化熱(約539cal/g)を周囲から奪います。これにより水は燃焼物から大量の熱を奪うことができます。
加圧方式と構造
水消火器には蓄圧式が一般的です。
| 比較項目 | 蓄圧式水消火器 |
|---|---|
| 構造 | 容器内に窒素ガス等とともに水(または浸潤剤入り水)を充てん(常時加圧状態) |
| 指示圧力計 | あり(緑色範囲が正常。0.7〜0.98MPa程度) |
| 安全栓 | あり(規格省令第21条第2項・1動作で引き抜ける構造) |
| 放射時間 | 一般的に8〜15秒程度(薬剤量・放射圧力による) |
使用温度範囲の問題
消火器の規格省令第10条の2第2号により、水消火器(化学泡消火器以外の消火器)の使用温度範囲は0度以上40度以下です。
水は0度以下で凍結するため使用温度範囲の下限が0度とされています。不凍剤を添加した場合(薬剤規格省令第8条の浸潤剤等)は凍結点を下げることができますが、使用温度範囲の規格(0度以上40度以下)はそのまま適用されます。寒冷地・屋外での設置は保管温度管理が必要です。
点検での確認項目
水消火器の点検(乙6の業務として実施)で確認する主な項目を整理します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 指示圧力計 | 指針が緑色範囲内か確認(蓄圧式) |
| 本体の腐食・変形 | 容器外面のさび・腐食・変形がないか目視確認 |
| 安全栓 | 安全栓が正しく装着されているか |
| ホース・ノズル | 詰まり・損傷がないか確認 |
| 標識 | 所定の消火器標識が設置されているか(施行規則第9条第4号) |
水消火器は薬剤が水系であるため、内部腐食が発生しやすい点が注意事項です。機能点検では内部点検(内筒・本体の腐食確認)が重要です。
他の消火器との適応火災の比較
| 消火器の種類 | A火災(普通) | B火災(油) | C火災(電気) |
|---|---|---|---|
| 水消火器・浸潤剤入り水消火器 | 対応 | — | — |
| 強化液(棒状放射) | 対応 | — | — |
| 強化液(霧状放射) | 対応 | 対応 | 対応 |
| 泡消火器 | 対応 | 対応 | — |
| 粉末消火器(ABC・りん酸塩類) | 対応 | 対応 | 対応 |
| 二酸化炭素消火器 | — | 対応 | 対応 |
出典:消防法施行令別表第二(適応火災の区分)
水消火器と強化液(棒状放射)は同じA火災のみです。この2つは水系でC火災・B火災に使えないという点が共通しています。強化液(棒状放射)はアルカリ金属塩類の水溶液なので導電性があり、B火災への棒状放射は油の飛散危険があるため同様の制限を受けます。
試験での出題パターン
| 出題パターン | 正しい答え |
|---|---|
| 水消火器の適応火災 | A火災のみ(B・C火災は使用禁止) |
| B火災に使用できない理由 | スロップオーバーが起き燃焼が拡大する危険がある |
| C火災に使用できない理由 | 水は電気を通すため(導電性)感電の危険がある |
| 水消火器の主な消火効果 | 冷却消火(補助的に窒息効果もある) |
| 浸潤剤を添加する目的 | 水の表面張力を下げて燃焼固体の内部への浸透性を高めるため |
| 浸潤剤等の根拠条文 | 薬剤規格省令第8条 |
「浸潤剤を添加する目的」として「冷却効果を高めるため」という誤答選択肢が出やすいですが、正しくは「浸透性を高めるため」です。冷却効果は水そのものの効果であり、浸潤剤は浸透性向上が主目的です。
まとめ
水消火器・浸潤剤入り水消火器はA火災のみに適応します(消防法施行令別表第二)。B火災には使用できません(スロップオーバーの危険)。C火災にも使用できません(導電性による感電の危険)。消火効果は冷却消火が主です。浸潤剤等(薬剤規格省令第8条)を添加した浸潤剤入り水消火器は水の表面張力を下げ、A火災に対して燃焼固体の内部まで薬剤が浸透して再燃防止効果が高くなります。試験では適応火災・B火災不可の理由(スロップオーバー)・浸潤剤の目的(浸透性向上)が問われます。
問題をすぐに解いてみたい方はこちらをご利用ください。
▶ 消防設備士 乙種第6類 問題集


コメント