訪問看護ステーションの経営の実態。収支差率10.3%・給与費70.1%の中身を分解する。

訪問看護ステーションの全国平均の収支差率は10.3%です(令和7年度介護事業経営概況調査・令和6年度決算・介護保険のみ・有効254事業所)。月収入3,476千円に対して給与費が70.1%(約2,437千円)を占め、残り約358千円が利益になる構造です。同じ福祉・介護サービスの中では訪問介護(9.6%)やGH(9.1%)より高く、放デイ(5.8%)や就労移行(5.2%)より明らかに高い水準です。

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収支差率10.3%は何を意味するか

収支差率とは、収入から費用(給与・家賃・水道光熱費など)を引いた差額が、収入全体に占める割合です。

  • 月収入3,476千円 × 10.3% = 収支差約358千円/月
  • 年間換算では約430万円の利益(全国平均)

「月収入1,000万円なら103万円が利益」という目安で考えると分かりやすいです。ただし、これは全国平均の数値です。実際の事業所によって収支差率は大きく異なります。この調査は介護保険のみを対象としており、医療保険の収入を含めた全国統計は現時点では存在しません。

他の介護・障害福祉サービスとの比較

他のサービスと並べると、訪問看護の収支差率の位置づけが分かります。

サービス種別 収支差率 調査名
訪問看護 10.3% 令和7年度介護事業経営概況調査
訪問介護 9.6% 令和7年度介護事業経営概況調査
グループホーム(認知症対応型共同生活介護) 9.1% 令和7年度介護事業経営概況調査
生活介護 9.0% 令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査
放課後等デイサービス 5.8% 令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査
就労移行支援 5.2% 令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査

比較すると訪問看護は最も高い収支差率です。医療的なケアに対応できる看護師を配置する分、報酬単価も高く設定されていることが背景にあります。

給与費70.1%の意味

全国平均の月収入3,476千円のうち、給与費が70.1%(約2,437千円)を占めます。残りの約29.9%(約1,039千円)で、家賃・水道光熱費・通信費・車両費・保険料・減価償却などの費用を賄い、収支差(利益)を生み出します。

人件費が収益の中核をほぼ決めてしまう構造のため、看護師の離職・採用コストの変動が収支に直接響きます。給与を上げて採用を安定させるのか、訪問回数を増やして1人あたりの生産性を上げるのか、どちらのバランスを取るかが経営判断の中心になります。

全国平均の訪問回数と1人あたりの数字

全国平均の規模感は次のとおりです(同調査・有効254事業所)。

  • 常勤換算: 8.6人(うち看護職員5.4人)
  • 延べ訪問回数: 421.5回/月
  • 看護職員1人あたりの訪問回数: 約78回/月(421.5 ÷ 5.4)
  • 訪問1回あたりの収入: 8,248円

看護職員1人あたり月78回というのが全国平均です。常勤1人が週20日稼働するとして、1日あたり約3.9回の訪問ペースです。

収益を改善する3つの方向

全国平均の10.3%から収支差率を上げるには、大きく3つのアプローチがあります。

1. 訪問回数を増やす(稼働率を上げる)

看護職員1人あたりの訪問回数を全国平均(月78回)より増やすことで、固定費を変えずに収入を増やせます。移動効率の改善(訪問先の地理的集中)が実質的な訪問回数の増加につながります。

2. 加算の算定率を上げる

24時間対応体制加算(介護保険600単位/月・医療保険6,800円/月)や特別管理加算(500または250単位・医療保険2,500〜5,000円/月)は、利用者ごとに毎月算定できます。医療依存度が高い利用者の比率が高いほど加算の収入が増えます。

3. 医療保険の比率を上げる

医療保険での訪問看護は、管理療養費(月初日7,710〜13,760円)が毎月算定でき、基本療養費も週4日以上で6,550円と高くなります。NDBのデータでは医療保険での訪問看護は月請求約408万円/事業所、1日あたり約11,602円(NDB 2025年3月時点)と、介護保険の1回あたり8,248円を上回る水準です。がん末期・難病などの対応力を持つことが、医療保険での収入増に直結します。

「全国平均」と自分のステーションの比較

全国平均は運営が安定しているステーションも苦しいステーションも含む数字です。開業直後は利用者が少なく、訪問回数が少ない時期が続くため、開業1〜2年目は全国平均より収支差率が低くなることが多いです。利用者が増えて固定費を上回る収入が安定してから、収支差率が改善していきます。

自分のステーションがどの時点で黒字になるか(損益分岐点)は、地域・人員・利用者数・加算の見込みによって変わります。開業前の計画段階でシミュレーターを使って確認することをお勧めします。

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参照した資料
令和7年度介護事業経営概況調査(厚生労働省・令和6年度決算・介護保険のみ・有効254事業所)。令和7年度障害福祉サービス等経営概況調査(厚生労働省)。NDB(2025年3月時点・医療保険での訪問看護)。数値は令和8年10月時点。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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