訪問看護の24時間対応(オンコール)体制。費用の構造と加算の仕組みをまとめる。

訪問看護ステーションが24時間対応体制(オンコール体制)を整えると、介護保険と医療保険の両方で加算収入が発生します。介護保険では利用者1人あたり月600単位(約6,000円)の緊急時訪問看護加算、医療保険では月6,800円の24時間対応体制加算が算定できます。一方、夜間の待機と緊急訪問に対応するための人件費・手当がコストとして乗ります。この記事では24時間対応体制の要件と、収入・費用の両面から考え方を整理します。

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24時間対応体制とは何か

24時間対応体制とは、利用者や家族から夜間・早朝を含む時間帯に連絡があったとき、電話で対応し、必要に応じて緊急訪問できる体制を指します。「オンコール体制」とも呼ばれます。

具体的には、看護師が自宅等で待機し、スマートフォンなどで連絡を受けられる状態を常時維持します。緊急の連絡があった場合は必要に応じて深夜でも訪問します。

24時間対応を行うかどうかはステーションの方針によりますが、多くの利用者が夜間に不安を感じやすく、体制があることで利用者の安心感につながる面もあります。

介護保険の緊急時訪問看護加算の要件と金額

介護保険の緊急時訪問看護加算(令和6年告示第86号)は、24時間対応体制を整えているステーションが、対象の利用者1人につき月に算定できる加算です。

区分 金額(単位) 主な要件
緊急時訪問看護加算 I 600単位/月 24時間連絡・緊急訪問できる体制+週1回以上20分以上の訪問
緊急時訪問看護加算 II 574単位/月 同上(IとIIの要件の差は告示・通知でご確認ください)

「その他の地域」(1単位10.00円)で計算すると、加算Iは1人あたり月6,000円です。利用者20人が算定対象なら月12万円の加算収入になります。

注意点として、この加算は「緊急時に訪問した場合の加算」ではなく、「24時間対応体制を整えていること」に対する月額の加算です。つまり、その月に緊急訪問を行わなくても、体制があれば算定できます。

また、介護保険の20分未満の訪問(314単位)は、24時間対応体制がある&20分以上の訪問が週1回以上ある場合にのみ算定できます。24時間体制の届け出は、20分未満の訪問の算定条件にも影響します。

医療保険の24時間対応体制加算の要件と金額

医療保険の24時間対応体制加算(令和8年告示第74号)は、介護保険の緊急時訪問看護加算に相当する加算です。ただし、介護保険とは別の保険体系なので別々に算定します。

区分 金額(円) 備考
24時間対応体制加算(通常) 6,800円/月 24時間対応体制の届け出あり
24時間対応体制加算(負担軽減) 6,520円/月 夜間の負担軽減の取り組みがある場合

医療保険の利用者(要介護認定のない方や、医療保険が優先される疾患の方)が対象です。1人あたり月6,800円を算定できます。

夜間・深夜の割増と緊急訪問看護加算

24時間体制のもとで夜間・深夜に訪問した場合は、通常の訪問報酬に加えて割増が算定できます。

時間帯 介護保険 医療保険
夜間・早朝 +25%(割増) 2,100円/回
深夜 +50%(割増) 4,200円/回

さらに医療保険では、緊急訪問看護加算(2,650円/回・月14日目まで)が算定できます。これは体制加算とは別に、実際に緊急訪問を行った1回ごとに算定します。

つまり深夜に緊急訪問した場合、医療保険では「基本療養費+深夜加算4,200円+緊急訪問看護加算2,650円」が1回の訪問に対して算定できることになります。

コストの構造

24時間対応体制のコストは主に、待機にあたる看護師への手当と、緊急訪問が発生した場合の交通費・時間外の人件費から構成されます。

オンコール手当(待機手当)は事業所によって設定が異なります。一般的には1回の待機につき1,000〜3,000円程度を設定しているケースが多いとされていますが、これは業界の慣行であり公的な一次統計は存在しません。事業所の雇用条件の設計によって大きく変わります。

緊急訪問が発生した場合は、時間外勤務手当や深夜勤務手当が加わります。訪問1件あたりのコストと、実際に算定できる加算収入(上述)のバランスを確認しておくことが大切です。

収支シミュレーターでは、24時間対応体制の費用(オンコール手当・出動手当)を個別に入力して、加算収入との差し引きを試算できます。

24時間対応を入れると月次収入はどう変わるか

試算の例として、介護保険利用者30人・医療保険利用者10人のステーションで全員を対象に24時間対応体制加算を算定した場合を考えます(介護はI・医療は通常の6,800円、地域区分「その他」)。

  • 介護保険:30人 × 600単位 × 10.00円 = 18万円/月
  • 医療保険:10人 × 6,800円 = 6.8万円/月
  • 合計(体制加算分のみ):24.8万円/月

これはあくまで体制加算だけの試算です。実際には待機手当や緊急訪問のコストが差し引かれます。ただし、対象の利用者数が増えれば増えるほど体制加算の収入も比例して増える一方、待機コストは担当の看護師人数によって決まるため、利用者数が多いほど収益性は上がる構造になっています。

新規開業で24時間対応を入れるかどうかの判断

24時間対応体制の届け出は、開設直後から行えます。ただし、利用者が少ない段階では待機コストに対して加算収入が少なく、負担感が大きい場合もあります。

一方、24時間対応体制があることで、医療依存度の高い利用者(特別管理加算の対象者など)を積極的に受け入れやすくなり、1人あたりの月収入が高くなる面もあります。

開業当初の利用者数・体制の整え方の計画と合わせて、収支シミュレーターで確認することをお勧めします。

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参照した資料
厚生労働省告示第86号(介護給付費単位数表・令和6年度)、厚生労働省告示第74号(訪問看護療養費・令和8年6月1日〜)。数値は令和8年10月時点。オンコール手当の相場は業界の慣行であり公的な一次統計に基づくものではありません。実際の待機手当・出動手当は事業所の雇用条件によって異なります。

この記事を書いた人

業種別のツールを、一人で作っています。開業前の収支シミュレーター、法定研修キット、資格の問題集。どれも、厚生労働省の告示や調査の原文を自分で確かめてから数字を組み込んでいます。使う人が「この数字、合ってるか」と不安になるようなツールは作りたくないので。

上場企業で20年間、営業ひとすじ。電話営業・インサイドセールスから、約70名のチームのマネジメントへ。現場で「根拠のない数字」が判断を狂わせる場面を見続けてきたせいか、ツールを作るときも出典を確かめずにはいられません。

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