キッチンカーで営業を始めるには、出店エリアを管轄する保健所への食品営業許可の申請が必要です。申請から許可証の交付まで通常2〜3週間かかるため、開業日から逆算して早めに動くことが重要です。また、許可を取る前に「事前相談」として保健所に車両の設備基準を確認しておくと、申請後の手戻りを防げます。
この記事では、キッチンカーに必要な許可の種類・事前相談から許可証交付までの流れ・複数の都道府県にまたがって出店する場合の考え方を解説します。
キッチンカーに必要な許可は2つ
キッチンカーで飲食物を販売する場合、次の2つが必要です。
| 種類 | 根拠法令 | 取得先 |
|---|---|---|
| 食品営業許可(飲食店営業・移動飲食店営業) | 食品衛生法第55条 | 出店エリアを管轄する保健所 |
| 食品衛生責任者(資格) | 食品衛生法第50条に基づく都道府県条例 | 各都道府県の食品衛生協会(養成講習会) |
食品営業許可は「施設(車両)ごと」に取得します。車両を2台持って別々の場所で営業する場合は、それぞれに許可が必要です。食品衛生責任者は1か所ごとに1名が必要ですが、資格自体は全国共通です。
食品衛生責任者の資格について
食品衛生責任者の資格は、各都道府県の食品衛生協会が主催する養成講習会(1日・数時間程度)を受講することで取得できます。調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っている場合は講習が免除されます。
講習費用は都道府県によって異なります(目安として6,000〜12,000円程度)。正確な費用と日程は各都道府県の食品衛生協会のウェブサイト、または管轄の保健所で確認してください。
事前相談から許可証交付までの流れ
キッチンカーの食品営業許可の取得は次の流れで進めます。
ステップ1:食品衛生責任者の資格を取る
食品営業許可の申請には食品衛生責任者の氏名が必要です。資格を持っていない場合は先に養成講習会を受講しておきます。講習の予約が必要な場合があるため、早めに日程を確認してください。
ステップ2:保健所に事前相談をする
車両を改造・購入する前に、出店予定エリアを管轄する保健所に「この設備でキッチンカーの許可が取れるか」を相談することを強くお勧めします。保健所によって設備基準の細かい解釈が異なることがあり、改造後に「この設備では許可が下りない」となると費用と時間が無駄になります。
事前相談では次の点を確認します。
- シンクの槽数の要件(1槽・2槽・3槽の違い)
- 給水タンク・廃水タンクの容量の要件
- 調理作業スペースの広さの要件
- 取り扱う食品の範囲(申請する営業種別の確認)
- 申請書類の確認(必要書類の一覧を入手する)
事前相談は予約なしでできる保健所もありますが、担当者の在席時間が限られている場合もあるため、電話で確認してから来訪するのが確実です。
ステップ3:車両の改造・設備の準備をする
事前相談で確認した設備基準を満たすよう、車両の改造や設備の設置を進めます。シンクの槽数・給水タンク・廃水タンクの容量は保健所の要件に合わせて設置します。
キッチンカーの改造・製作を専門とする業者に依頼する場合は、「どの保健所で許可を取るか」を業者に伝えることで、その地域の基準に合わせた改造を行ってもらえます。
ステップ4:申請書類を準備する
申請に必要な書類は保健所によって異なりますが、一般的に次のものが必要です。
- 食品営業許可申請書(保健所の窓口またはウェブサイトで入手)
- 施設の図面(キッチン部分の平面図・立面図)
- 食品衛生責任者の資格を証明する書類(資格証明書の写し)
- 申請手数料(都道府県・区市町村によって異なる)
施設の図面は車両のキッチン部分(シンク・コンロ・給水タンク・廃水タンク・冷蔵設備などの配置)を手書きでも可とする保健所が多いですが、正確な要件は申請先の保健所で確認してください。
ステップ5:申請・施設検査を受ける
申請書類と手数料を提出すると、保健所の担当者が実際の車両の設備を確認する「施設検査」が行われます。検査の日程は保健所と調整します。検査は申請から数日〜1週間程度で設定されることが多いです。
施設検査では「申請書の図面と実際の設備が一致しているか」「設備基準を満たしているか」が確認されます。問題がなければ許可証が交付されます。
ステップ6:許可証の交付・営業開始
施設検査の合格後、許可証が交付されます。交付までの期間は保健所によって異なりますが、申請から許可証の交付まで2〜3週間程度が目安です。繁忙期(新年度前後)は時間がかかることがあります。
許可証には「有効期限」があります。2021年の食品衛生法改正により原則5年に統一されました。期限が来る前に更新申請が必要です。
複数の都道府県で出店する場合
2021年6月施行の食品衛生法改正により、原則として1つの都道府県で取得した食品営業許可で全国で営業できる仕組み(許可の相互乗り入れ)が整備されました(食品衛生法第55条第2項)。ただし、出店する都道府県ごとに届出や申請が必要なケースもあります。
実際に他の都道府県で出店する場合は、出店先の都道府県の保健所に事前に確認することをお勧めします。手続きの有無・内容は自治体によって異なります。
設備基準は保健所によって異なる
食品衛生法は全国共通ですが、設備の細かい基準(シンクの槽数・給水タンクの容量など)は都道府県・保健所によって解釈が異なる場合があります。
| 営業の内容 | 要件の例 |
|---|---|
| 加熱調理済みの食品のみ(提供時に再加熱しない・衛生的に危険度が低い場合) | 1槽で可とする保健所もある |
| 生野菜・生食材を扱う場合 | 2槽以上を求める保健所が多い |
| 生肉・生魚を扱う場合 | 3槽以上を求める場合がある |
取り扱うメニュー・食材によって要件が変わる場合があります。事前相談の時点で「どのメニューを出す予定か」を伝えておくと、必要な設備を正確に教えてもらえます。
許可取得のスケジュール目安
開業日から逆算したスケジュールの目安は次のとおりです。
| 時期(開業日を起点) | 作業 |
|---|---|
| 3〜4か月前 | 食品衛生責任者の養成講習会を受講(日程確認・予約) |
| 2〜3か月前 | 保健所に事前相談・設備基準の確認 |
| 1.5〜2か月前 | 車両の改造・設備の設置完了 |
| 1〜1.5か月前 | 申請書類の準備・申請・施設検査 |
| 2〜3週間前 | 許可証の交付 |
| 開業日 | 営業開始 |
繁忙期・保健所の混雑状況によって期間が延びることがあります。余裕を持ったスケジュールで進めることをお勧めします。
開業前の全体の費用と資金計画
許可取得の費用(申請手数料・食品衛生責任者の講習費)は、開業資金の一部として計画に含める必要があります。開業にかかる費用全体については「キッチンカーの開業資金はいくら必要か。」で解説しています。
開業資金・収支・資金繰りをまとめて計算したい場合は、キッチンカー開業 収支シミュレーターが使えます。無料で使えます。
食品営業許可の手続きは食品衛生法に基づきますが、詳細な要件・手数料・必要書類は都道府県・区市町村によって異なります。この記事の情報は参考情報であり、申請にあたっては必ず出店予定エリアを管轄する保健所に直接確認してください。食品衛生法第55条(営業許可)・食品衛生法第50条に基づく都道府県条例(食品衛生責任者)に基づく内容です。

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