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有料老人ホームの月額料金は、「居住費」「食費」「介護サービス費(介護付きのみ)」「その他サービス費」の4つに区分されます。料金の設定は事業者が自由に決められますが、根拠のある積み上げが必要で、重要事項説明書への記載義務があります。住宅型と介護付きでは収入の仕組みが根本的に異なるため、料金設計の前に種別ごとの構造を理解することが重要です。
住宅型と介護付きの収入構造は根本的に異なる
有料老人ホームの収入構造は種別によって大きく違います。介護付き(特定施設)は介護報酬が収入の柱になりますが、住宅型は介護報酬が発生しません。この違いが料金設計と収益モデルの違いに直結します。
| 収入の区分 | 介護付き(特定施設) | 住宅型 |
|---|---|---|
| 居住費 | あり(入居者が全額負担) | あり(入居者が全額負担) |
| 食費 | あり(入居者が全額負担) | あり(入居者が全額負担) |
| 介護報酬 | あり(介護保険から9割等が給付・入居者は1〜3割負担) | なし(外部サービスを入居者が個別契約) |
| その他サービス費 | あり(選択的サービスの実費) | あり(選択的サービスの実費) |
住宅型は介護報酬がない分、居住費・食費・サービス費を高めに設定するか、コストを抑えた運営モデルにするかが収益の鍵になります。
居住費の決め方、建物コストを積み上げて設定する
居住費は、建物にかかるコストを入居者に分担してもらうための費用です。設定のベースとなる主な費用項目は以下のとおりです。
- 建物の賃料(賃借の場合)または減価償却費・元利返済額(自己所有・ローンの場合)
- 共益費(共用部分の維持・清掃・管理費用)
- 光熱費相当額(水道・電気・ガス代の入居者負担分)
- 修繕積立費(将来の建物修繕の備え)
これらを入居定員で割った金額が、1室あたりの居住費の原価になります。実際の設定はこれに事業者の適正な利益を加えた金額になりますが、過度に高い場合は入居希望者が集まらないため、地域の競合施設の相場との比較も必要です。
厚生労働省が定める「基準費用額」は介護保険の補足給付制度(低所得者向け)の計算に使われる参考値です。居住費の基準費用額は令和6年度で月60,000円(日額2,006円)とされています〔⚠️厚生労働省の告示原文で確認してください〕。この金額はあくまで制度上の基準であり、実際の設定額を縛るものではありません。
食費の決め方、実費積み上げが基本
食費は入居者に提供する食事(1日3食が基本)のコストを基準に設定します。主なコスト項目は食材費と調理・配膳にかかる人件費です。
食材費は1食あたりの原価(目安として300〜600円程度の施設が多いとされますが、食材の調達方法・地域・メニューによって大きく異なります)に、1日の食数を乗じて計算します。調理を外部委託する場合は委託費、自前の厨房で行う場合は調理員の人件費が加わります。
厚生労働省が定める食費の基準費用額は令和6年度で月55,350円(日額1,846円)とされています〔⚠️厚生労働省の告示原文で確認してください〕。この金額も補足給付制度の参考値であり、実際の設定額の上限ではありません。施設の食事の内容・品質に応じて設定することになります。
介護サービス費(介護付きのみ)の入居者負担分
介護付きの入居者は、特定施設入居者生活介護の利用で生じる介護保険の自己負担分(所得に応じて1割・2割・3割)を月額で支払います。この自己負担分は入居者から事業者に支払われますが、事業者にとっては介護保険給付(9割等)と合わせた介護報酬全体が収入になります。
介護保険の自己負担の月額の目安は、要介護度と地域区分によって変わります。たとえば要介護3(基本報酬679単位/日)を「その他」地域(単価10.00円)で計算すると、30日分の自己負担(1割の場合)は「679単位 × 10.00円 × 30日 × 0.1 ≒ 2,037円」です。実際には利用者負担割合(1〜3割)と加算の有無によって変わります〔⚠️告示原文で確認してください〕。
その他サービス費は任意サービスの実費を明示する
居住費・食費・介護サービス費以外に、入居者が希望する選択的なサービスについて別途費用を設定できます。主な例は以下のとおりです。
- 理美容サービス(カット・パーマ等)
- レクリエーション・外出支援の実費
- 日用品の購入代行
- おむつ代(別途実費請求するか料金に含めるかは施設の方針による)
- 医療費(通院時の交通費・付き添い費用等)
これらは任意サービスであり、選択しない入居者には請求できません。また、基本の生活サービスに含まれるべきものを「任意サービス」として上乗せ請求することは重要事項説明書の記載義務に反するリスクがあります。どこまでを月額料金に含め、どこからを別途請求とするかは、入居者・家族への説明と書面での合意が必要です。
入居一時金は実質的な賃料の前払い
有料老人ホームには、入居時に一時金(入居一時金・前払い金)を受け取る「前払い型」と、毎月の料金だけを受け取る「月払い型」があります。入居一時金は施設の利用権の対価として受け取るもので、会計上は入居期間にわたって月次に均等に収益化します(初期償却の扱いがある場合は重要事項説明書に明示する義務があります)。
老人福祉法では、90日以内に退去した場合の入居一時金の返還義務(いわゆる「クーリングオフ」)が定められています〔⚠️老人福祉法第29条の原文で確認してください〕。また、入居一時金は保全措置(信託保全・損害保険・保証機関への委託)が義務付けられています(老人福祉法)。詳しくは「有料老人ホームの入居一時金、保全措置とはなにか。」をご覧ください。
重要事項説明書への記載が義務
有料老人ホームは入居希望者・家族に対して、契約前に重要事項説明書を交付・説明する義務があります(老人福祉法)。料金の区分・金額・サービスの内容・変更時の取扱い・退去時の返還ルールなどを書面に明示する必要があります。料金を後から変更する場合は、入居者・家族への事前説明と同意が必要です。
収支シミュレーターでは、居住費・食費・介護報酬の各収入を入力して月次の収支を試算できます。料金設定のシミュレーションにご活用ください。
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出典:老人福祉法・「有料老人ホームの設置運営標準指導指針について」(厚生労働省老健局長通知)。居住費・食費の基準費用額は厚生労働省告示による(令和6年度)。詳細は必ず原文および都道府県の担当窓口でご確認ください。当サイトは資格者ではなく、料金設定の適否を保証しません。


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